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大学入学共通テストや麻布中学校の入試問題に採用された短編を収録!津村記久子さん『サキの忘れ物』が文庫化

『水車小屋のネネ』が「本の雑誌が選ぶ2023年上半期エンターテインメント・ベスト10」で第1位に選出されるとともに、第59回谷崎潤一郎賞を受賞した津村記久子さんの『サキの忘れ物』が文庫化され、新潮文庫より刊行されました。文庫解説はアメリカ文学研究者で翻訳家の都甲幸治さん。

 

大学入学共通テストや麻布中学校の入試問題に採用された作品を含む9編の短編集『サキの忘れ物』

2005年に太宰賞を受賞しデビューし、その後野間文芸新人賞、芥川賞、川端賞など数々の文学賞を受賞してきた津村記久子さん。3月に刊行した『水車小屋のネネ』が「本の雑誌が選ぶ2023年上半期ベスト10」の第1位に輝き、また第59回谷崎潤一郎を受賞しました。

 
そんな津村さんの文庫最新刊『サキの忘れ物』は全9篇からなる短篇集です。

表題作「サキの忘れ物」は、高校を中退し、病院に併設された喫茶店でアルバイトをしている18歳の千春が主人公。「自分には何にも夢中になれるものがない」と感じながら漫然と日々を過ごしている彼女はある日、常連の女性客が置き忘れた一冊の文庫本を手にします。それはサキという外国人の男性が書いた短篇集でした。これまでに最後まで読み通せた本が一冊もない千春でしたが、その日から彼女の人生はゆっくりと、確実に変わりはじめます。2021年の大学入学共通テストに採用され、およそ45万人が読んだ作品です。

 
「河川敷のガゼル」は、ガゼルという美しく珍しい動物が発見されたある町が舞台です。ガゼルが過ごす柵周辺の警備員の仕事に就くことになった「私」の視点を通して、ガゼルやガゼルを見物しにくる人々の様子が描かれます。SNSに日々ガゼルの写真や動画をアップする女性、ガゼルをひたすら熱心に見つめる少年……。本作は2021年の麻布中学校の入試問題に採用されました。

 
2作とも、ままならない環境に身を置く若者が、その場所から抜け出すための希望となる「何か」を掴みとる瞬間が描かれます。その他、津村さんの代名詞ともいえる会社員小説の「隣のビル」や、不穏な旅行案内「ペチュニアフォールを知る二十の名所」、読者が主役になる「真夜中をさまようゲームブック」など、多彩な9篇が楽しめる作品集です。

 
漫画家・イラストレーターの益田ミリさんからは「津村さんの新作は希望のひとつなのだった」、作家の森絵都さんからは「いつまでも残響が胸に残った」とコメントが寄せられています。

 
【本書のあらすじ】

自分には何にも夢中になれるものがない――。高校をやめて病院併設の喫茶店でアルバイト中の千春は、常連の女性が置き忘れた本を手にする。「サキ」という外国人の男性が書いた短篇集。これまでに一度も本を読み通したことがない千春だったが、その日からゆっくりと人生が動き始める。深く心に染み入る表題作から、謎めいた旅行案内、読者が主役のゲームブックまで、かがやきに満ちた全九編。

 

著者プロフィール

津村記久子(つむら・きくこ)さんは、1978年生まれ、大阪市出身。2005年『マンイーター』(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で太宰治賞を受賞してデビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年『給水塔と亀』で川端康成文学賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』 でサッカー本大賞、2020年『給水塔と亀(The Water Tower and the Turtle)』(ポリー・バートン訳)でPEN/ロバート・J・ダウ新人作家短編小説賞、2023年『水車小屋のネネ』で谷崎潤一郎賞を受賞。近著に『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『うどん陣営の受難』など。

 

サキの忘れ物 (新潮文庫)
津村 記久子 (著)

2021年の大学入学共通テストや麻布中学校の入試問題に採用されて話題を呼んだ短篇を含む、全九編の作品集!

 
【関連】
試し読み | 津村記久子 『サキの忘れ物』 | 新潮社

 


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