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【第76回毎日出版文化賞】岡崎乾二郎さん、瀧井一博さん、古川安さん、岸政彦さんが受賞

第76回毎日出版文化賞が決定!

第76回毎日出版文化賞が決定!

毎日新聞社は11月3日、優れた出版物の著編者、出版社を顕彰する「第76回毎日出版文化賞」の受賞作品を発表しました。

 

第76回毎日出版文化賞が決定!

第76回毎日出版文化賞の受賞作品が、次の通り決定しました。
なお、贈呈式は12月12日午後2時、東京都文京区のホテル椿山荘東京で開催されます。

 
<第76回毎日出版文化賞 受賞作品>

■文学・芸術部門
岡崎乾二郎(おかざき・けんじろう)さん
『感覚のエデン』(亜紀書房)

■人文・社会部門
瀧井一博(たきい・かずひろ)さん
『大久保利通 「知」を結ぶ指導者』(新潮社)

■自然科学部門
古川安(ふるかわ・やす)さん
『津田梅子 科学への道、大学の夢』(東京大学出版会)

■企画部門
岸政彦(きし・まさひこ)さん[編]
『東京の生活史』(筑摩書房)

 

毎日出版文化賞について

毎日出版文化賞は1947年に創設。毎日新聞社が主催し、優れた出版物の著編者、出版社などを顕彰する文学・文化賞です。大日本印刷が特別協力。

「文学・芸術」、「人文・社会」(ノンフィクション、歴史、民俗、思想、哲学、宗教、政治、経済など)、「自然科学」、「企画」(全集、講座、辞典、事典、書評など)および、広く読者に支持され、出版文化の向上に貢献した出版物に贈られる「特別賞」の5部門で選考が行われます。対象となるのは、前年9月1日から当年8月31日までの間に初版が刊行された出版物、同時期に完結した全集などです。

「文学・芸術」「人文・社会」「自然科学」「企画」の各部門の受賞者には、賞状と記念品、賞金100万円が贈られます。
また、広く読者に支持され、出版文化に貢献した出版物に特別賞を贈呈する場合があります。「特別賞」の受賞者には、賞状と記念品が贈られます。

 

感覚のエデン (岡崎乾二郎批評選集 vol.1)
岡崎 乾二郎 (著)

世界に可能性はまだあるのか、「芸術」はその問いに答える方法である。
時を超えて交錯する思考の運動が、星座のように明晰なる一つの図形となって、新たな知覚と認識を導く。

稀代の批評家・造形作家による美術史の解体=再構築。デビュー以来紡いできた膨大な批評文を精選した、その思想の精髄。

「感覚と存在、感覚と真理(イデア)を分けるという誤った図式があります。存在や真理は認識であり物質ではない。感覚は(物質によって起こされる事実であり、つまり)物質です。存在や真理を食べることはできません。食べることができるのはむしろ感覚です。林檎を食べているのではない。セザンヌがそう考えたように、赤という感覚こそを私たちは食べているのです。だから決して林檎は知恵の実ではない。林檎とは無数の感覚が作り出す、いわば星座なのです。音楽は星座です。絵画とは星座です。それは無数の感覚のさまざまな方向への運動、物質的な運動の交錯が作り出す編成体です」(本書より)

大久保利通: 「知」を結ぶ指導者 (新潮選書)
瀧井 一博 (著)

独裁と排除の仮面を?ぎ取り、その指導力の源を明らかにする! 旧君を裏切り、親友を見捨てた「冷酷なリアリスト」という評価は正当なのか? 富国強兵と殖産興業に突き進んだ強権的指導者像の裏には、人の才を見出して?ぎ、地方からの国づくりを目指した、もう一つの素顔が隠されていた。膨大な史料を読み解き、「知の政治家」としての新たなイメージを浮かび上がらせる、大久保論の決定版。

津田梅子: 科学への道、大学の夢
古川 安 (著)

科学とジェンダーという切り口で描く新たな梅子像

津田塾大学の礎を築き、日本における女子英語教育の先駆者である津田梅子は、アメリカ留学中に生物学を専攻し、将来を嘱望された優秀な研究者であったことはあまり知られていない。帰国後なぜ生物学者への道を歩まなかったのか、歩めなかったのか。科学とジェンダーの視点から梅子とその時代を描き出す。

★長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学学長)推薦
わずか6歳で官費留学生として渡米し、当時のアメリカの家庭で11年を過ごした津田梅子。帰国後、日本女子の教育向上に尽力したことは有名だ。しかし、梅子が24歳になってから再びアメリカの大学に入学し、かの有名なトマス・ハント・モーガンについて生物学を専攻したという事実はほとんど知られていないのではないか? 研究者としての道を行く可能性もあったのに、日本の女子教育に貢献するという義務感からそれを断念した。当時の最先端を行く女性の心意気と努力の足跡を知ることは感無量である。

東京の生活史
岸 政彦 (編集)

「紀伊國屋じんぶん大賞2022」受賞!

150人が語り、150人が聞いた、東京の人生
いまを生きる人びとの膨大な語りを一冊に収録した、かつてないスケールで編まれたインタビュー集。

……人生とは、あるいは生活史とは、要するにそれはそのつどの行為選択の連鎖である。そのつどその場所で私たちは、なんとかしてより良く生きようと、懸命になって選択を続ける。ひとつの行為は次の行為を生み、ひとつの選択は次の選択に結びついていく。こうしてひとつの、必然としか言いようのない、「人生」というものが連なっていくのだ。
(……)
そしてまた、都市というもの自体も、偶然と必然のあいだで存在している。たったいまちょうどここで出会い、すれ違い、行き交う人びとは、おたがい何の関係もない。その出会いには必然性もなく、意味もない。私たちはこの街に、ただの偶然で、一時的に集まっているにすぎない。しかしその一人ひとりが居ることには意味があり、必然性がある。ひとつの電車の車両の、ひとつのシートに隣り合うということには何の意味もないが、しかしその一人ひとりは、どこから来てどこへ行くのか、すべてに理由があり、動機があり、そして目的がある。いまこの瞬間のこの場所に居合わせるということの、無意味な偶然と、固有の必然。確率と秩序。
本書もまた、このようにして完成した。たまたま集まった聞き手の方が、たまたまひとりの知り合いに声をかけ、その生活史を聞く。それを持ち寄って、一冊の本にする。ここに並んでいるのは、ただの偶然で集められた、それぞれに必然的な語りだ。
だからこの本は、都市を、あるいは東京を、遂行的に再現する作品である。本書の成り立ち自体が、東京の成り立ちを再現しているのである。それは東京の「代表」でもなければ「縮図」でもない。それは、東京のあらゆる人びとの交わりと集まりを縮小コピーした模型ではないのだ。ただ本書は、偶然と必然によって集められた語りが並んでいる。そして、その、偶然と必然によって人びとが隣り合っている、ということそのものが、「東京」を再現しているのである。
(岸政彦「偶然と必然のあいだで」より抜粋)

 
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