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芥川賞&直木賞(2019年下半期)候補作が決定 古川真人さんと湊かなえさんが4度目のノミネート 初ノミネートは7名

芥川賞&直木賞(2019年下半期)候補作が決定

芥川賞&直木賞(2019年下半期)候補作が決定

日本文学振興会は12月16日、第162回芥川龍之介賞(2019年下半期)および第162回直木三十五賞(2019年下半期)の候補作品を発表しました。

芥川龍之介賞、直木三十五賞ともに、2020年1月15日午後4時より築地・新喜楽で選考委員会が開催され、それぞれ受賞作品が決定します。

 

第162回芥川賞 候補作について

第162回芥川賞の候補作は以下の5作品です。

 
【第162回芥川賞 候補作】

◎木村友祐(きむら・ゆうすけ)さん「幼な子の聖戦」(『すばる』11月号)

◎髙尾長良(たかお・ながら)さん「音に聞く」(『文學界』9月号)

◎千葉雅也(ちば・まさや)さん「デッドライン」(『新潮』9月号)

◎乗代雄介(のりしろ・ゆうすけ)さん「最高の任務」(『群像』12月号)

◎古川真人(ふるかわ・まこと)さん「背高泡立草(せいたかあわだちそう)」(『すばる』10月号)

 
木村友祐さんは、1970年生まれ。青森県八戸市出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業。2009年「海猫ツリーハウス」ですばる文学賞を受賞しデビュー。

髙尾長良さんは、1992年生まれ。医師で小説家。2017年京都大学医学部卒業。2012年「肉骨茶」で新潮新人賞を受賞。芥川賞は今回で3度目のノミネート。

千葉雅也さんは、1978年生まれ。栃木県出身。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。2013年『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』で紀伊國屋じんぶん大賞、2019年「デッドライン」で野間文芸新人賞を受賞

乗代雄介さんは、1986年生まれ。北海道出身。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年「十七八より」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。2018年『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞を受賞

古川真人さんは、1988年生まれ。第一薬科大学付属高等学校卒業。2016年「縫わんばならん」で新潮新人賞を受賞しデビュー。芥川賞は今回で4度目のノミネート。

 

第162回直木賞 候補作について

第162回直木賞の候補作は以下の6作品です。

 
【第162回直木賞 候補作】

◎小川哲(おがわ・さとし)さん『嘘と正典』(早川書房)

◎川越宗一(かわごえ・そういち)さん『熱源』(文藝春秋)

◎呉勝浩(ご・かつひろ)さん『スワン』(KADOKAWA)

◎誉田哲也(ほんだ・てつや)さん『背中の蜘蛛』(双葉社)

◎湊かなえ(みなと・かなえ)さん『落日』(角川春樹事務所)

 
小川哲さんは、1986年生まれ。千葉県出身。東京大学教養学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。2015年『ユートロニカのこちら側』でハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。2018年『ゲームの王国』で山本周五郎賞日本SF大賞を受賞。

川越宗一さんは、1978年生まれ。大阪府出身。2018年「天地に燦(さん)たり」で松本清張賞を受賞しデビュー。2019年『熱源』で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。

呉勝浩さんは、1981年生まれ。大阪芸術大学卒業。2015年『道徳の時間』で江戸川乱歩賞、2018年『白い衝動』で大藪春彦賞を受賞。

誉田哲也さんは、1969年生まれ。東京都出身。学習院大学経済学部卒業。2002年『妖の華』でムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞、翌年同作でデビュー。2003年『アクセス』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。

湊かなえさんは、1973年生まれ。広島県出身。武庫川女子大学家政学部卒業。2007年「聖職者」で小説推理新人賞を受賞、翌年同作を収録した『告白』でデビュー。2009年に同作で本屋大賞を受賞。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。直木賞は今回で4度目のノミネート。

 

芥川賞と直木賞について

芥川賞と直木賞は、1935(昭和10)年に制定され、芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られます。

芥川賞は主に無名・新進作家が、直木賞は無名・新進・中堅作家が対象となります。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が授与されます。

 

<芥川賞候補作>

幼な子の聖戦
木村 友祐 (著)

「幼な子の聖戦」–人妻との逢瀬を楽しみながら、親元で暮している「おれ」は青森県の小さな村で村議をしている。「おれ」は県議に人妻の件で決定的な弱みを握られ、立候補した同級生への選挙妨害を強いられる。疲弊した村の現実と、地元を愛する同級生の熱い演説。小さな村の選挙戦は、思いもかけぬ方向へと–。
「天空の絵描きたち」–安里小春(あさと・こはる)は、ビルの窓拭きを専門にする会社に転職したばかりだった。仕事を理由に彼氏と微妙な関係にあるが、小春は仲間同士で文字通り命を預けて仕事をする緊張感にのめり込んでいる。ある日、ビル内の盗難事件が原因でリーダーのクマさんこと権田が責任者を下ろされてしまう。クマさんにひそかに憧れていた小春は、思い切ってクマさんを焼き鳥に誘うが……。

音に聞く
髙尾 長良 (著)

言葉か、音か―。作曲に天賦の才をみせる15歳の妹。母語から離れ、自らの言語表現を模索する姉。『肉骨茶』『影媛』で注目を集める若き才媛が音楽の都ウィーンを舞台に繰り広げる待望の本格芸術小説。

デッドライン
千葉 雅也 (著)

もったいない。バカじゃないのか。抱かれればいいのに。いい男に。珊瑚礁のまわりで群れをなす魚のように、導きあう男たちが夜の底をクルーズする――。ゲイであること、思考すること、生きること。修士論文のデッドラインが迫るなか、動物になることと女性になることの線上で悩み、哲学と格闘しつつ日々を送る「僕」。気鋭の哲学者による魂を揺さぶるデビュー小説。

最高の任務
乗代 雄介 (著)

「手紙」と「日記」を通して、書くという営為の意味を問う――。
野間文芸新人賞受賞の気鋭による青春小説集!

「最高の任務」
大学の卒業式を前にした私は、あるきっかけで、亡き叔母にもらって書き始めた、小学生の頃の日記帳をひもとく。日記を通して語られていく、叔母との記憶……。

「生き方の問題」
僕は、2歳年上の従姉に長い手紙を書き送る。幼い頃からの思慕と、一年前の久しぶりの再会について……。

背高泡立草
古川 真人 (著)

大村奈美は、母の実家・吉川家の納屋の草刈りをするために、母、伯母、従姉妹とともに長崎の島に向かった。吉川家には今、<古か家>と<新しい方の家>がある。<古か家>は祖母が亡くなって以降、すでに空き家になっており、同じ集落に住む祖母の姉が引受人になっている。奈美は二つの家に関して、伯父や祖母の姉に話を聞く。吉川家は<新しい方の家>が建っている場所で戦前は酒屋をしていたが、戦中に統制が厳しくなって廃業し、満州に行く同じ集落の者から家を買って移り住んだという。それが<古か家>だった。吉川家が<古か家>に住んでいた間、海の向こうに出ていく者、海の向こうからやってくる者があった。江戸時代には捕鯨が盛んで、<古か家>の人々は蝦夷で漁をした者から北の果ての海と島の様子を聞いたこともあったし、戦後に故郷の朝鮮に帰ろうとして船が難破し島の漁師に救助された人々を家に招き入れたこともあった。時代が下って、カヌーに乗って鹿児島からやってきたという少年が現れたこともあった。草に埋もれた納屋を見ながら奈美は、祖父母やその祖父母たちが生きてきた時間を思うのだった。

 
<直木賞候補作>

嘘と正典
小川 哲 (著)

零落した稀代のマジシャンがタイムトラベルに挑む「魔術師」、名馬・スペシャルウィークの血統に我が身を重ねる「ひとすじの光」、無限の勝利を望む東フランクの王を永遠に呪縛する「時の扉」、音楽を通貨とする小さな島の伝説を探る「ムジカ・ムンダーナ」、ファッションとカルチャーが絶え果てた未来に残された「最後の不良」、CIA工作員が共産主義の消滅を企む「嘘と正典」の全6篇を収録。

熱源
川越 宗一 (著)

故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、やりとげなければならないことがある。北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。明治維新後、樺太のアイヌに何が起こっていたのか。見たことのない感情に心を揺り動かされる、圧巻の歴史小説。

スワン
呉 勝浩 (著)

背中の蜘蛛
誉田 哲也 (著)

ついに、ここまできた――。前人未到、孤高の警察小説が誕生した。
東京・池袋の路上で男の死体が発見された。目撃者もなく捜査は難航、しかし「あること」がきっかけになり捜査が急転。
それから約半年後。東京・新木場で爆殺事件が発生。こちらもな捜査はなかなか進展しなかったが、「あること」が転換点となり容疑者が浮かぶ……。
捜査に携わる管理官を中心に、新時代の警察捜査を濃密に描く。著者史上、もっとも尖った警察小説。

落日
湊 かなえ (著)

新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。“真実”とは、“救い”とは、そして、“表現する”ということは。絶望の深淵を見た人々の祈りと再生の物語。

 
【関連】
芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会
直木三十五賞|公益財団法人日本文学振興会

 


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