《私はかかってしまったのだ、「百文字病」なるものに》泉鏡花文学賞受賞作家・大濱普美子さん初のショートショート集『三行怪々』が刊行
泉鏡花文学賞受賞作家・大濱普美子さんによる初のショートショート集『三行怪々』が河出書房新社より刊行されました。
「三行」譚から覗く不穏な気配──不気味でユーモラス、泉鏡花文学賞受賞作家による初のショートショート集
大濱普美子さんは、第三短篇集『陽だまりの果て』で、2022年第50回泉鏡花文学賞を受賞し一躍話題となりました。本作は著者初のショートショート集です。
昨年文庫化したデビュー作品集『猫の木のある庭』(河出文庫、『たけこのぞう』から改題)も、多くの読者の心を掴んで離しません。
本作『三行怪々』は百文字病」にかかった作家が延々と書き連ねた、一篇が50~60文字程度のごく短いお話を200篇収録。三行の向こうから覗く不穏な予感の虜となることでしょう。
《人並みの用心は怠らなかったつもりだけれど、それでも私はかかってしまったのだ、「百文字病」なるものに。》
(「あとがき」より)。
作品より一部紹介
いい子だね。隣に丸くなったタマを撫ぜる。ミャアと言う声に顔を上げると、猫は棚の上にいる。今抱いている毛の塊は、一体何だろう。
建物の中で迷ってしまい、すれ違う人に出口を尋ねた。あの階段を上がって扉を開ければ、出られます。その通りにして、出たところは昨日だった。
消そうとしても消えない蠟燭でつけた線香は、いつまでたっても燃え尽きない。そういえば、今日は私の命日だった。
著者プロフィール
大濱普美子(おおはま・ふみこ)さんは、1958年生まれ、東京都出身。慶応義塾大学文学部文学科フランス文学専攻卒業。1987年、パリ第七大学《外国語としてのフランス語》修士課程修了。1995年よりドイツ在住。2009年『三田文學』で「猫の木のある庭」を発表。
著書に『たけこのぞう』(改題のうえ『猫の木のある庭』として文庫化)、『十四番線上のハレルヤ』がある。2022年刊行の第三短篇集『陽だまりの果て』で第50回泉鏡花文学賞を受賞。
三行怪々 大濱 普美子 (著) 「百文字病」にかかった著者が延々と錬成したのは200篇の「三行」幻想譚。短くも不穏で深遠、魅惑のショートショート集が誕生。 装丁: 鈴木千佳子 |
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