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すべては推しのため――蝉谷めぐ実さん『万両役者の扇』が刊行

蝉谷めぐ実さんが底なしの役者沼に沈んでいく崇拝者と役者本人の狂気を描ききる時代小説『万両役者の扇』が新潮社より刊行されました。

 

すべては奴の筋書きどおりなのか――狂気と喝采に満ちた舞台の幕が今上がる

「芸のため」ならどんなことにも手を染める江戸森田座気鋭の役者・今村扇五郎。舞台を重ねるにつれて評判がうなぎ上りとなる中、恐ろしい噂も立ちはじめます。
果たして我々の目に映る彼は天才か、化物か――。

 
扇五郎に心酔する少女と彼の妻が静かな争いを繰り広げる「役者女房の紅」。
饅頭屋の人生を徐々に狂わせゆく「犬饅頭」。
憧れの存在を追いかける若者たちの青春劇「凡凡衣裳」。
信じる気持ちが強すぎた挙句足元を掬われそうになる「狛犬役者」。
天才を鼻にかけ、いつかは彼の頭を触りたいと願う鬘師の「鬘比べ」。
贔屓役者のためなら手段を選ばない人々の視点で、扇五郎最後の大芝居「女房役者の板」
…までを活写する、全6篇からなる連作短編集です。

狂乱の果てのあっと驚く結末をぜひお楽しみください。

 
【あらすじ】

江戸森田座気鋭の役者・今村扇五郎にお熱のお春が、女房の座を狙って近づいたのは……。芸を追求してやまない扇五郎に魅せられた面々の、狂ってゆく人生の歯車。ある日、若手役者の他殺体があがり、ついには扇五郎本人も――「芸のため」ならどこまでの所業が許されるのか。芝居の虚実を濃密に描き切ったエンタメ時代小説。

 

著者コメント

役者の業が大好きで、しかし同時に「役者の業」で始末をつけがちな自分に、今回は刃を向けてみました。ねろねろと濃い江戸歌舞伎を味わっていただけましたら幸いです!

 

著者プロフィール

蝉谷めぐ実(せみたに・めぐみ)さんは、1992年生まれ、大阪府出身。早稲田大学文学部で演劇映像コースを専攻、文化文政期の歌舞伎をテーマに卒論を書く。

22020年『化け者心中』で第11回小説 野性時代 新人賞を受賞し、デビュー。2021年に同作で第10回日本歴史時代作家協会賞新人賞、第27回中山義秀文学賞を受賞。2022年に刊行した『おんなの女房』で第10回野村胡堂文学賞第44回吉川英治文学新人賞を受賞。

ほかの作品に『化け者手本』などがある。

 

万両役者の扇
蝉谷 めぐ実 (著)

 


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