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【令和5年度吉川英治賞】文学賞は桐野夏生さん『燕は戻ってこない』が受賞 新人賞に蝉谷めぐ実さん『おんなの女房』、文庫賞は上橋菜穂子さん「守り人」シリーズ

講談社は3月2日、第57回吉川英治文学賞および第44回吉川英治文学新人賞、第8回吉川英治文庫賞の受賞作を発表しました。

 

令和5年度吉川英治賞各賞が決定!

令和5年度の吉川英治賞の各賞は次の通りです。

 
■第57回吉川英治文学賞

桐野夏生(きりの・なつお)さん
『燕は戻ってこない』(集英社)

選考委員:浅田次郎さん、五木寛之さん、北方謙三さん、林真理子さん、宮城谷昌光さん、宮部みゆきさん

 
受賞者の桐野夏生さんは、1951年生まれ。1993年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞を受賞。1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、『ナニカアル』で2010年、2011年に島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。2015年には紫綬褒章を受章。2021年には早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。2023年には『燕は戻ってこない』で毎日芸術賞を受賞。『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』など著書多数。日本ペンクラブ会長。2月に「バブル」の実体なき熱狂の裏側をえぐる『真珠とダイヤモンド』を刊行

 
■第44回吉川英治文学新人賞

蝉谷めぐ実(せみたに・めぐみ)さん
『おんなの女房』(KADOKAWA)

選考委員:朝井まてかさん、大沢在昌さん、京極夏彦さん、辻村深月さん、村山由佳さん

 
受賞者の蝉谷めぐ実さんは、1992年生まれ、大阪府出身。早稲田大学文学部で演劇映像コースを専攻、卒論のテーマは「化政期の歌舞伎」。広告代理店勤務を経て、現在は大学職員。2020年『化け者心中』で第11回小説 野性時代 新人賞を受賞し、デビュー。2021年に同作で第10回日本歴史時代作家協会賞新人賞および第27回中山義秀文学賞を受賞。今回の受賞作『おんなの女房』は2022年1月に刊行されたデビュー2作目で、同年10月に第10回野村胡堂文学賞も受賞

 
■第8回吉川英治文庫賞

上橋菜穂子(うえはし・なほこ)さん
「守り人」シリーズ(新潮文庫)

選考委員:各出版社の代表者(各社1名)、書評家、書店員等合計約50名
立会人:逢坂剛さん

 
受賞者の上橋菜穂子さんは、1962年生まれ、東京都出身。立教大学文学部卒業。立教大学大学院博士課程単位取得。文学博士。専門は文化人類学。川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』で作家デビュー。野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、小学館児童出版文化賞、児童福祉文化賞、米国バチェルダー賞、野間児童文芸賞、国際アンデルセン賞作家賞、本屋大賞、日本医療小説大賞、日本文化人類学会賞など国内外での受賞多数。著書に『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、『獣の奏者』『鹿の王』『香君』など。

 

吉川英治文学賞について

吉川英治文学賞は、公益財団法人「吉川英治国民文化振興会」が主催し、講談社が後援する文学賞です。大衆小説を対象に、1967年に創設。毎年1月1日から12月31日までに、新聞、雑誌、単行本等に最も優秀な小説、評論、その他を発表した作家に贈られます。正賞として賞牌、副賞として300万円が授与されます。

なお、吉川英治文庫賞は、毎年12月1日から翌年11月30日までに文庫最新刊が刊行された作品のなかから、5巻以上の複数巻で文庫を刊行している、もっとも優秀な大衆シリーズに贈られます。

また、吉川英治文学新人賞は、毎年1月1日から12月31日までに、新聞、雑誌、単行本等に優秀な小説を発表した作家の中から、最も将来性のある新人作家に贈られます。

文庫賞および新人賞には賞牌と副賞100万円がそれぞれ授与されます。

ちなみに、賞の前身は、吉川英治さんの寄付金をもとに1962年2月に創設された「吉川英治賞」で、主催は毎日新聞社でした。1966年に吉川英治国民文化振興会が設立され、賞の運営が毎日新聞社から吉川英治国民文化振興会と講談社に移管されています。

 

燕は戻ってこない
桐野 夏生 (著)

この身体こそ、文明の最後の利器。

29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。
子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかった――。

北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。

『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。

おんなの女房
蝉谷 めぐ実 (著)

『化け者心中』で文学賞三冠。新鋭が綴る、エモーショナルな時代小説。

ときは文政、ところは江戸。武家の娘・志乃は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁ぐ。夫となった喜多村燕弥は、江戸三座のひとつ、森田座で評判の女形。家でも女としてふるまう、女よりも美しい燕弥を前に、志乃は尻を落ち着ける場所がわからない。
私はなぜこの人に求められたのか――。
芝居にすべてを注ぐ燕弥の隣で、志乃はわが身の、そして燕弥との生き方に思いをめぐらす。
女房とは、女とは、己とはいったい何なのか。
いびつな夫婦の、唯一無二の恋物語が幕を開ける。

精霊の守り人 (新潮文庫)
上橋 菜穂子 (著)

わたしはね、骨の髄から、戦うことが好きなんだよ。

精霊の卵を宿す皇子チャグムを託され、命をかけて皇子を守る女用心棒バルサの活躍を描く物語。著者は2014年国際アンデルセン賞作家賞受賞。

老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。

 
【関連】
吉川英治文学賞 : 講談社
吉川英治文学新人賞 : 講談社
吉川英治文庫賞 : 講談社

 


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