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【第58回蛇笏賞・迢空賞】蛇笏賞は小澤實さん句集『澤』、迢空賞は吉川宏志さん歌集『雪の偶然』が受賞

公益財団法人 角川文化振興財団は、4月12日に第58回蛇笏賞、4月15日に第58回迢空賞の選考会を東京・飯田橋の志満金において開催し、受賞作が決定しました。

贈呈式は2024年7月2日(火)に角川武蔵野ミュージアム(東所沢)で関係者のみでの開催を予定。選考委員選評は2024年5月25日発売、の『俳句』『短歌』各6月号に掲載されます。

 

「第58回蛇笏賞」受賞者・受賞作品

<第58回蛇笏賞 受賞作品>

小澤實(おざわ・みのる)さん
句集『澤(さわ)』(角川文化振興財団)

 
受賞作品の『澤(さわ)』は、『瞬間』以後『瓦礫抄』以前(40代半ばから50代半ばに至る)の作品を収めた第4句集です。

受賞者の小澤實さんは、1956年生まれ、長野県長野市出身。信州大学在学中に信大連句会参加、東明雅さんの指導を受けます。1977年、宮坂静生さんのてほどきで俳句を始めます。同年「鷹」入会、藤田湘子さんに師事。1979年、成城大学大学院で尾形仂さんに師事。1985年「鷹」編集長就任(1999年、退会)。2000年「澤」創刊主宰。現在、俳人協会常務理事。「讀賣新聞」「東京新聞」俳壇選者。角川俳句賞選考委員。

1998年『立像』で第21回俳人協会新人賞、2006年『瞬間』で第57回読売文学賞[詩歌俳句賞]、2008年『俳句のはじまる場所―実力俳人への道』で第22回俳人協会評論賞、2022年『芭蕉の風景 上・下』で第73回読売文学賞[随筆・紀行賞]を受賞。

句集に『砧』『瓦礫抄 俳句日記 2012』、著書に『万太郎の一句』『俳句のはじまる場所―実力俳人への道』『名句の所以』『芭蕉の風景』など。

 
選考委員は、高野ムツオさん、髙橋睦郎さん、中村和弘さん、正木ゆう子さん。

 

「第58回迢空賞」受賞者・受賞作品

<第58回迢空賞 受賞作品>

吉川宏志(よしかわ。ひろし)さん
歌集『雪の偶然』(現代短歌社)

 
受賞作品の『雪の偶然』は吉川宏志さんの第9歌集。2015年から2022年夏までの555首を収録。

受賞者の吉川宏志さんは、1969年生まれ、宮崎県東郷町出身。京都大学文学部国文科卒業。高校教諭の志垣澄幸さんの紹介で「塔」入会。2015年1月「塔」主宰就任。現在、塔短歌会主宰。「京都新聞」歌壇選者。

1994年「妊娠・出産をめぐる人間関係の変容―男性歌人を中心に」で第12回現代短歌評論賞、1996年『青蟬』で第40回現代歌人協会賞、2001年『夜光』で第9回ながらみ現代短歌賞、2005年「死と塩」で第41回短歌研究賞、2006年『海雨』で第11回寺山修司短歌賞・第7回山本健吉文学賞、2013年『燕麦』で第11回前川佐美雄賞、2016年『鳥の見しもの』で第21回若山牧水賞、2017年に同作品で第9回小野市詩歌文学賞、2020年『石蓮花』で第70回芸術選奨文部科学大臣賞第31回齋藤茂吉短歌文学賞を受賞。

歌集に『曳舟』『西行の肺』、著書に『いま、社会詠は』『風景と実感』『読みと他者』ほか。

 
選考委員は、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん。

 

蛇笏賞および迢空賞について

蛇笏賞は、俳人・飯田蛇笏の遺徳を敬慕し、「世世に語り継ぎ、日本詩歌の振興に一層の努力を期す」ことを目的に設立された俳句の賞です。角川文化振興財団(第9回までは角川書店)が主催。
前年の1月から12月の間に刊行された句集の中で最も優れたものに贈られます。

 
迢空賞は、歌人で詩人の釈迢空(しゃく・ちょうくう)さんの遺徳を敬慕し、「世世に語り継ぎ、日本詩歌の振興に一層の努力を期す」ことを目的に設立された短歌の賞です。角川文化振興財団(第9回までは角川書店)が主催。
前年の1月から12月の間に刊行された歌集の中で最も優れたものに贈られます。
ちなみに、「釈迢空」は、民俗学者で国文学者の折口信夫(おりくち・しのぶ)さんの歌人としての号です。

 

句集 澤 (澤俳句叢書)
小澤 實 (著)

著者・小澤實の四十代半ばから五十代半ばに至る作品をまとめた第四句集

前句集『瞬間』に続く第四句集。平成12年(2000年)~平成24年(2012年)に詠んだ作品をまとめる。この時期、芭蕉にゆかりの地を中心に日本のざまざまな場所を訪れ、各地の豊な自然と奥深い歴史に分け入った。その体験が本句集に反映されている、

雪の偶然
吉川宏志 (著)

著者第九歌集。
修辞は、想像力は、ここまで磨きぬかれた。世界の惨を、歌い尽くすために。言葉は、ついに、無力だった、と証すために。
言葉より狂いはじめし世にありて紅葉は何の内臓ならむ
慰安所の扉に続く列がある 水溜まりを避けて途切れたる列
幼な子が見しものは絵に残されて踊るごとし銃に撃たれたる人
銃床に使われるというクルミの木 枝をくぐりて雪は降り来る
匙もつ手 鱈をさばく手 ウラジーミル・プーチンと書き紙を折りし手

 


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