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【第73回読売文学賞】川本直さん、小澤實さん、平松洋子さん、山本一生さん、須永紀子さん、くぼたのぞみさんが受賞

第73回読売文学賞、6部門が決定!

第73回読売文学賞、6部門が決定!

読売新聞社は2月1日、同社が主催する第73回(2021年度)読売文学賞の受賞作を発表しました。

 

第73回読売文学賞、6部門が決定!

第73回読売文学賞は、次の通り受賞作が決定しました。

 
■小説賞
川本直(かわもと・なお)さん
『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』(河出書房新社)

■戯曲・シナリオ賞
該当作なし

■随筆・紀行賞
◎小澤實(おざわ・みのる)さん
『芭蕉の風景 上下』(ウェッジ)

◎平松洋子(ひらまつ・ようこ)さん
『父のビスコ』(小学館)

■評論・伝記賞
山本一生(やまもと・いっしょう)さん
『百間、まだ死なざるや 内田百間伝』(中央公論新社)

■詩歌俳句賞
須永紀子(すなが・のりこ)さん
詩集『時の錘り。』(思潮社)

■研究・翻訳賞
くぼたのぞみさん
『J・M・クッツェーと真実』(白水社)

 
選考委員は、池澤夏樹さん(作家)、岩松了さん(劇作家)、荻野アンナさん(作家、仏文学者)、川上弘美さん(作家)、川村湊さん(文芸評論家)、高橋睦郎さん(詩人)、辻原登さん(作家)、松浦寿輝さん(詩人、作家、批評家)、若島正さん(英米文学者)、渡辺保さん(演劇評論家)。
※川上弘美さんは随筆・紀行賞の選考は欠席。

 
受賞者には正賞の硯(すずり)と副賞の200万円が贈られます。贈賞式は2月15日午後6時より、東京・内幸町の帝国ホテルで開催。

 

読売文学賞について

読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年(昭和24年)に創設されました。「小説」、「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の全6部門があり、前年の作品から最も優れた作品を選んで表彰します。
なお、「随筆・紀行」は第19回から加わり、第46回からは「戯曲」を「戯曲・シナリオ」部門に改めています。

毎年11月に既受賞者をはじめ、文芸界の関係者に文書で推薦を依頼し、12月に第1次選考会、1月に最終選考会を行い、2月に受賞作品を発表しています。

 

ジュリアン・バトラーの真実の生涯
川本 直 (著)

佐藤亜紀氏、高遠弘美氏、伏見憲明氏、富士川義之氏、柳下毅一郎氏 推薦!
書き下ろし、700枚。壮大なデビュー長編小説。

ジュリアン・バトラー。
トルーマン・カポーティ、ゴア・ヴィダル、ノーマン・メイラーと並び称されたアメリカを代表する小説家。バトラーの生涯は長きにわたって夥しい伝説的なゴシップの靄に包まれていた。しかし、2017 年、覆面作家アンソニー・アンダーソンによる回想録『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』が刊行され、遂にその実像が明らかになる――。
今、もうひとつの20世紀アメリカ文学史が幕を開ける。

芭蕉の風景 上
小澤 實 (著)

「NHK俳句」でもおなじみの俳人、小澤實が20年をかけて生み出した畢生の「芭蕉論」ついに刊行。清新なる芭蕉像がここに。
21世紀の日本に芭蕉を訪ね歩いた、200余編のルポルタージュ。

芭蕉の風景 上巻

寛文6(1666)年4月、芭蕉23歳。人生をかけた旅が始まる

故郷・伊賀上野から出た芭蕉は江戸で自らの俳諧を確立。そして「野ざらし紀行」「笈の小文」「更科紀行」の旅へ。23歳から45歳までの芭蕉の吟行をなぞり、芭蕉と同じ土地で句を詠み続けた俳人・小澤實のライフワーク『芭蕉の風景』。句集未収録の約200句を収録。

2000年から2018年にかけて、旅雑誌「ひととき」などで連載された「芭蕉の風景」。毎月、芭蕉が句を詠んだ地を実際に訪れ、あるときは当時と変わらぬ大自然の中、またあるときは面影もまったくない雑踏の中、俳人と旅と俳句の関係を深くつきつめて考え続けた連載は人気を博し、200回を超えて続きました。
俳人・小澤實の約20年間、そして芭蕉にとっては、20代前半から晩年までの約30年間。2人の俳人は300年の時を隔てて、日本中を旅し、句を詠み続けました。この本はその記憶の「交歓」であり、現地を見た、感じたからこそわかる、まったくあたらしい芭蕉像を造り上げた意欲作です。

父のビスコ
平松 洋子 (著)

三世代の記憶を紡ぐ初の自伝的エッセイ集

『本の窓』人気連載を元に、昭和、平成、令和 にまたがる三世代の記憶を紡いだ、著者初めての自伝的エッセイ集。

-目次より-
「父のどんぐり 」「母の金平糖 」「風呂とみかん」「ばらばらのすし」「やっぱり牡蠣めし」「悲しくてやりきれない」「饅頭の夢」
「おじいさんのコッペパン」「眠狂四郎とコロッケ」「インスタント時代」「ショーケン一九七一」「『旅館くらしき』のこと」「流れない川」 「民芸ととんかつ」「祖父の水筒」「場所」「父のビスコ」ほか。

「金平糖が海を渡り、四人きょうだいが赤い金平糖の取り合いっこをする日が来ていなければ、いまの自分は存在していない。もし、祖父が帰還できなかったら。もし、岡山大空襲の朝、祖母ときょうだいたちがはぐれたままだったら。もし、父の目前に落ちた射撃弾の位置がずれていたら。『もし』の連打が、私という一個の人間の存在を激しく揺さぶってくる」(「母の金平糖」より)。

『旅館くらしき』創業者による名随筆を同時収録。

百間、まだ死なざるや-内田百間伝
山本 一生 (著)

「風といふより、音ぢやないですか」――没後50年を迎えた内田百間の残した作品と戦前・戦後の膨大な日記を、稀代の日記読みが丹念に読み込む初の評伝。「恋文」「恋日記」の時代から結婚、そして別居、学生たちとの深い交流、高利貸しとの付き合い、飛行機と船と汽車、名作誕生の経緯など、周辺の事実と照合しながら、その「わがまま」な人生を再構築する。なお、「百間」の号は出身地・岡山の百間川に由来し、当人も戦中のある時期までは「百間」を使っていたので、本書では「百間」で統一する。

時の錘り。
須永 紀子 (著)

けれど明日 レビヤタンに追われたきみは 鳥を友に、ボートに揺られて 向こう岸へ行くこともできる (「きみの島に川が流れ」) 鳥に導かれて、もうひとつの世界を生きる。記憶は時の錘りとなり、私たちを光のあるほうへ誘う。『森の明るみ』から7年ぶりの新詩集。装幀・組版=二月空

J・M・クッツェーと真実
くぼた のぞみ (著)

日本初のクッツェー論

「クッツェーを翻訳することは、彼の視点から世界全体を見直すレッスンだった」
――ノーベル文学賞作家J・M・クッツェーの翻訳を80年代から手がけてきた著者が、クッツェーの全作品を俯瞰し、作家の実像に迫る待望のクッツェー論。
1940年、南アフリカのケープタウンでオランダ系植民者の末裔として生を受けたクッツェーは、故郷を出て、生まれ育った土地の歴史について外部から批判する視点を養い、自らを徹底検証し、植民地主義を発展させた西欧の近代思想を根底から問い直す試みを、創作を通して行ってきた。著者は、作品を取り巻く社会的・歴史的背景、作家の動機と心情、その変遷に深い針を入れるように調べていく。自伝的三部作を翻訳するためにケープタウンを訪れ、少年時代を過ごした家や風景を見て歩き、フィクションと自伝の境界を無化しようとする作品の、奥深くに埋めこまれた「真実」を解き明かしていく過程はスリリングだ。
作家が来日した時の様子や、アデレード大学で開かれたシンポジウムに招待され、作家の自宅でゲストたちと食事を共にした時のエピソード、言語と出版についての作家のラディカルな活動、翻訳作業の過程のやりとりから伝わってくる作家の素顔も貴重な証言となっている。巻末に詳細な年譜と全作品リストを付す。

 
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