米澤穂信さん初の警察ミステリー『可燃物』が2023年度ミステリーランキングで「三冠」を達成
米澤穂信さん初の警察ミステリー『可燃物』(文藝春秋)が、早川書房「ミステリが読みたい!」、文藝春秋「週刊文春ミステリーベスト10」、宝島社「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成しました。
米澤さんの三冠達成は2014年の『満願』、2015年の『王とサーカス』、2021年の『黒牢城』(本作は四冠)に続き4度目です。
なお、早くも来年には「オール讀物」誌上にて続編執筆の準備も進んでいます。
米澤穂信さんコメント 『可燃物』三冠に寄せて
短編「崖の下」を書いたのは、ほんのいたずら心からでした。――悪くないトリックを思いついたのでミステリに、謎ときのおはなしに書きました。どうぞ解いてみてください。十人中一人か二人ぐらいには解かれてしまうでしょうが、残りの八人か九人には、そうだったのか、これはしまった迂闊だったと悔しがっていただけるでしょう……そんな気持ちでした。それをシリーズにとお勧めいただいた時は、私自身はこういうものも好きですが、現在ではあまりにオールドスクールではと危惧したものです。
しかしいま、思いがけないご高評をいただいたことにかんがみると、シンプルでストレートな謎ときのおはなしを待っていたのはひとり私だけではなかったのかもと思っています。どうぞ、解いてみてください。こんなのわかるよ、大したことないなと余裕の笑みを浮かべるか、それとも臍を噛む結果になるかは、読者のみなさま次第です。
『可燃物』あらすじ
余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。
――群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズです。短編5編を収録しています。
【あらすじ】
太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」)
群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の回りの雪は踏み荒らされていず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って〝刺殺〟したのか?(「崖の下」)
榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか? (「命の恩」)
著者プロフィール
米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)さんは、1978年生まれ、岐阜県出身。2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞してデビュー。
2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞。2021年『黒牢城』で第12回山田風太郎賞を受賞、さらに2022年、同作で第166回直木賞と第22回本格ミステリ大賞を受賞。
『満願』と2015年刊行の『王とサーカス』はそれぞれ3つの年間ミステリランキングで1位に輝き、史上初の2年連続3冠を達成。さらに『黒牢城』は史上初めて4つの年間ミステリランキングを制覇した。
可燃物 米澤 穂信 (著) 史上初4大ミステリーランキング第1位(『黒牢城』)に輝く著者最新作。 余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。 連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。 |
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