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【第43回サントリー学芸賞】中井遼さん、中西嘉宏さん、川瀬慈さん、堀井一摩さん、小島庸平さん、竹倉史人さん、上村剛さん、北村陽子さんが受賞

第43回サントリー学芸賞が決定!

第43回サントリー学芸賞が決定!

公益財団法人サントリー文化財団は、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をした人物に贈る「第43回サントリー学芸賞」の受賞者・対象作品を発表しました。

 

第43回サントリー学芸賞が決定! 4部門計8名が受賞

第43回サントリー学芸賞では、2020年1月以降に出版された日本語の著作を対象に「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門において各選考委員より優れた作品が推薦され、2回にわたる選考委員会での審議を経て、受賞者および作品が次の通り決定しました。

なお、贈呈式は12月21日(火)に東京で開催される予定です。

 
<第43回サントリー学芸賞 受賞者・対象作品>

〔政治・経済部門〕
◎中井遼(なかい・りょう)さん(北九州市立大学法学部准教授)
『欧州の排外主義とナショナリズム ―― 調査から見る世論の本質』(新泉社)

◎中西嘉宏(なかにし・よしひろ)さん(京都大学東南アジア地域研究研究所准教授)
『ロヒンギャ危機 ―― 「民族浄化」の真相』(中央公論新社)

〔芸術・文学部門〕
◎川瀬慈(かわせ・いつし)さん(国立民族学博物館人類基礎理論研究部准教授)
『エチオピア高原の吟遊詩人 ―― うたに生きる者たち』(音楽之友社)

◎堀井一摩(ほりい・かずま)さん(早稲田大学、津田塾大学等非常勤講師)
『国民国家と不気味なもの ―― 日露戦後文学の〈うち〉なる他者像』(新曜社)

〔社会・風俗部門〕
◎小島庸平(こじま・ようへい)さん(東京大学大学院経済学研究科准教授)
『サラ金の歴史 ―― 消費者金融と日本社会』(中央公論新社)

◎竹倉史人(たけくら・ふみと)さん(人類学者/独立研究者)
『土偶を読む ―― 130年間解かれなかった縄文神話の謎』(晶文社)

〔思想・歴史部門〕
◎上村剛(かみむら・つよし)さん(日本学術振興会特別研究員)
『権力分立論の誕生 ―― ブリテン帝国の『法の精神』受容』(岩波書店)

◎北村陽子(きたむら・ようこ)さん(名古屋大学大学院人文学研究科准教授)
『戦争障害者の社会史 ―― 20世紀ドイツの経験と福祉国家』(名古屋大学出版会)

 
【選考委員】

◎政治・経済部門:大竹文雄さん(大阪大学教授)、北岡伸一さん(国際協力機構理事長)、田所昌幸さん(慶應義塾大学教授)、土居丈朗さん(慶應義塾大学教授)、牧原出さん(東京大学教授)、待鳥聡史さん(京都大学教授)

◎芸術・文学部門:池上裕子さん(神戸大学教授)、片山杜秀さん(慶應義塾大学教授)、沼野充義さん(名古屋外国語大学副学長)、三浦篤さん(東京大学教授)、三浦雅士さん(文芸評論家)、渡辺裕さん(東京音楽大学教授)

◎社会・風俗部門:井上章一さん(国際日本文化研究センター所長)、鹿島茂さん(作家、フランス文学者)、玄田有史さん(東京大学教授)、佐伯順子さん(同志社大学教授)、佐藤卓己さん(京都大学教授)、武田徹さん(ジャーナリスト、評論家)

◎思想・歴史部門:宇野重規さん(東京大学教授)、苅部直さん(東京大学教授)、熊野純彦さん(東京大学教授)、田中明彦さん(政策研究大学院大学学長)、堂目卓生さん(大阪大学教授)、細谷雄一さん(慶應義塾大学教授)

 
受賞者略歴は、https://www.suntory.co.jp/news/article/14024-2.html を、
選評は、https://www.suntory.co.jp/news/article/14024-3.html をご覧ください。

 

サントリー学芸賞について

サントリー学芸賞は、1979年に創設。サントリーの創業80周年を記念して同年に設立されたサントリー文化財団(https://www.suntory.co.jp/sfnd/)が主催する学術賞です。

「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門に分かれ、毎年、前年1月以降に出版された著作物を対象に選考し、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をされた方を顕彰します。

選考に際しては、個性豊かで将来が期待される新進の評論家、研究者であること、本人の思想、主張が明確な作品であることに主眼が置かれています。また、代表候補作品だけでなく、これまでの一連の著作活動の業績を総合して選考の対象としています。

なお、2018年2月のサントリー文化財団設立40周年を機に、人文学・社会科学分野における既存の枠組にとらわれない自由な評論・研究活動のさらなる発展を願い、副賞を従来の200万円から300万円に増額しています。

 
<公益財団法人サントリー文化財団について>

サントリーの創業80周年を記念して1979年2月に大阪で設立。以来、わが国の国際化、情報化の時代に応えて、社会と文化に関する学術研究の助成、これらの分野における優秀な人材の育成をめざし、わが国および世界の学術文化の発展に寄与することを目的に事業を進めています。

★ホームページ:https://www.suntory.co.jp/sfnd/

 

欧州の排外主義とナショナリズム―調査から見る世論の本質
中井 遼 (著)

21世紀に入り、ヨーロッパでは右翼政党の台頭や反移民感情の高揚が問題になっている。こうした右傾化や排外的な動きに対して、これまで新聞やテレビなどでは、社会から置き去りにされた、貧困に喘ぐ人たちの怒りの表れであるという説明が多くなされてきた。
しかしそれは本当なのだろうか?
本書では、欧州難民・移民危機やユーロ危機以降のヨーロッパで行われた世論調査のデータを実証的に分析し、そうした言説(貧困に喘ぐ人々の怒りの表れ)に根拠がないことを明らかにした。さらに、こうした右傾化や排外主義の台頭は、実は経済的要因ではなく非経済的要因(文化や慣習、規則など)によって強く規定されていることも明らかにした。
そして、実際に右翼政党を支持している人たちはどんな人々なのか、どんな状況が人々の右傾化を生むのか、また中道政党が右傾化するのはなぜか、といったことをヨーロッパの個別の国を対象に分析していった。
加えて、著者が独自に行った世論調査では、右翼政党を支持する人たちのバックボーンを明らかにしたり、選挙キャンペーンに影響されるのはどんな人たちなのかを分析したりもしている。
人口減少社会を迎えた日本でも、コロナ禍で、いままで隠れていた移民の問題が浮き彫りになってきた。いつのまにか移民の受け入れ国になっていた日本は、今後、どのような社会を作っていけばよいのだろうか。
21世紀のヨーロッパを題材に、民主主義下における少数派の排斥という、古くて新しい人間の根源的な問題を取り上げた一冊である。

ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相 (中公新書 2629)
中西 嘉宏 (著)

2017年8月25日、武装グループがミャンマー、ラカイン州の警察・軍関連施設を襲撃した。これに対し国軍は、ロヒンギャ集落で大規模な掃討作戦を実施。人々は暴力を逃れるため、隣国バングラデシュへと避難し、半年という短期間に難民は70万人にのぼった。事件から3年が経過したが、帰還は進んでいない。本書は、アジア最大の人道問題の全貌を、歴史的背景やミャンマーをめぐる国内・国際政治から読み解く。

エチオピア高原の吟遊詩人
川瀬 慈 (著)

東アフリカのエチオピアで、音楽を職能として生きる吟遊詩人。そのコミュニティに入り込み、目にした光景とは――。 弦楽器マシンコを弾き語るアズマリ、一種の門付を行う芸能者ラリベラ。どちらも聴き手との豊かなやりとりのなかで、芸能活動をしたたかに展開させる。著者はその様子に強く惹かれ、エチオピアで長年のフィールドワークを行ってきた。 研究者と被調査者という図式を超え、著者は吟遊詩人たちの活動、生きざまを追う。映像人類学者・映像作家である著者は、主観的・客観的記述を自在に使いこなし、たくさんの写真とともに、エチオピア音楽文化の動態を立体的に伝えていく。歌い手たちが、欧米をはじめアフリカ外の世界での活動する様子、新型コロナウイルスによる感染症の影響下で活動する様子も紹介する。うたに生きる彼ら、彼女たちの素顔は、音楽、芸能について、アフリカの地平から相対化してとらえ、考えることをうながす。

国民国家と不気味なもの 日露戦後文学の〈うち〉なる他者像
堀井一摩 (著)

日露戦争前後から、殉死、暴動などの血なまぐさい事件だけでなく、社会軌範をおびやかす〈不気味なもの〉が頻出するようになる。桜井忠温『肉弾』、漱石『心』、大逆事件などをめぐる文学を題材に、国民化の圧力と民衆の反応・反発の力学を活写する。
従来の国民国家論では見落とされがちだった、民衆・大衆の主体性をさぐる。
文学が探知した〈不気味なもの〉のなかに、現代にも通じる「徴候」を指摘する。

サラ金の歴史-消費者金融と日本社会 (中公新書)
小島 庸平 (著)

利用したことはなくても、誰もが見聞きはしたサラ金や消費者金融。しかし、私たちが知る業態は、日本経済のうねりの中で大きく変化して現在の姿となったものだ。素人高利貸から団地金融、そしてサラ金、消費者金融へ……。好景気や金融技術の発展で躍進するも、バブル崩壊や社会問題化に翻弄されていった業態について、家計やジェンダーなど多様な視点から読み解き、日本経済の知られざる一面を照らす。

土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎
竹倉 史人 (著)

日本考古学史上最大の謎の一つがいま、解き明かされる。
土偶とは――「日本最古の神話」が刻み込まれた植物像であった!

「考古学×イコノロジー研究」から気鋭の研究者が秘められた謎を読み解く、スリリングな最新研究書。

・縄文時代に大量に作られた素焼きのフィギュア=「土偶」。
日本列島においては1万年以上前に出現し、2千年前に忽然とその姿を消した。
現代までに全国各地で2万点近くの土偶が発見されている。

・一般的な土偶の正体として
「妊娠女性をかたどったもの」
「病気の身代わり」
「狩猟の成功を祈願する対象」
「宇宙人」……
などの説がこれまでに展開された。が、実はいずれも確証が得られていない。

・本書では〈考古学の実証研究〉(データ)と〈美術史学のイコノロジー研究〉(図像解釈学)によってハート形土偶から縄文のビーナス、そして遮光器土偶まで名だたる国内の「土偶の真実」を明らかにする。

そこには現代につながる縄文人たちの精神史が描かれていた。
日本、5000年の歴史。
現代人の心的ルーツを明らかにする人文書の新しい展開へ。

権力分立論の誕生: ブリテン帝国の『法の精神』受容
上村 剛 (著)

権力分立論はどのようにして姿を現したのか。一八世紀後半のブリテン帝国における『法の精神』の受容に焦点をあてることで、モンテスキューからアメリカ合衆国憲法制定時のマディソン、ハミルトンに至る政治思想史を精緻に叙述する。権力分立論の通説的理解を大きく修正し、その成立過程に新鮮な読み直しを迫る画期的研究。

戦争障害者の社会史―20世紀ドイツの経験と福祉国家―
北村 陽子 (著)

二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示す。

 
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