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【第45回サントリー学芸賞】菱岡憲司さん『大才子 小津久足』、鷲谷花さん『姫とホモソーシャル』、阿部卓也さん『杉浦康平と写植の時代』、新城道彦さん『朝鮮半島の歴史』など8作品が受賞

公益財団法人サントリー文化財団は、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をした人物に贈る「第45回サントリー学芸賞」の受賞者・対象作品を発表しました。

 

第45回サントリー学芸賞が決定! 4部門計8名が受賞

第45回サントリー学芸賞では、2022年1月以降に出版された日本語の著作を対象に「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門において各選考委員より優れた作品が推薦され、2回にわたる選考委員会での審議を経て、受賞者および作品が次の通り決定しました。

なお、贈呈式は12月11日(月)に東京で開催される予定です。

 
<第44回サントリー学芸賞 受賞者・対象作品>

〔政治・経済部門〕
◎宇南山卓(うなやま・たかし)さん(京都大学経済研究所教授)
『現代日本の消費分析 ―― ライフサイクル理論の現在地』(慶應義塾大学出版会)

◎東島雅昌(ひがしじま・まさあき)さん(東京大学社会科学研究所准教授)
『民主主義を装う権威主義 ―― 世界化する選挙独裁とその論理』(千倉書房)

〔芸術・文学部門〕
◎菱岡憲司(ひしおか・けんじ)さん(山口県立大学国際文化学部准教授)
『大才子 小津久足 ―― 伊勢商人の蔵書・国学・紀行文』(中央公論新社)

◎鷲谷花(わしたに・はな)さん(映画研究者、大阪国際児童文学振興財団特別専門員)
『姫とホモソーシャル ―― 半信半疑のフェミニズム映画批評』(青土社)

〔社会・風俗部門〕
◎阿部卓也(あべ・たくや)さん(愛知淑徳大学創造表現学部准教授)
『杉浦康平と写植の時代 ―― 光学技術と日本語のデザイン』(慶應義塾大学出版会)

◎小俣ラポー日登美(おまたらぽー・ひとみ)さん(京都大学白眉センター/人文科学研究所特定准教授)
『殉教の日本 ―― 近世ヨーロッパにおける宣教のレトリック』(名古屋大学出版会)

〔思想・歴史部門〕
◎池田真歩(いけだ・まほ)さん(北海学園大学法学部准教授)
『首都の議会 ―― 近代移行期東京の政治秩序と都市改造』(東京大学出版会)

◎新城道彦(しんじょう・みちひこ)さん(フェリス女学院大学国際交流学部教授)
『朝鮮半島の歴史 ―― 政争と外患の六百年』(新潮社)

 
【選考委員】

◎政治・経済部門:大竹文雄さん(大阪大学特任教授)、田所昌幸さん(国際大学特任教授)、土居丈朗さん(慶應義塾大学教授)、細谷雄一さん(慶應義塾大学教授)、牧原出さん(東京大学教授)、待鳥聡史さん(京都大学教授)

◎芸術・文学部門:池上裕子さん(神戸大学教授)、岡田暁生さん(京都大学教授)、ロバート キャンベルさん(早稲田大学特命教授)、沼野充義さん(名古屋外国語大学教授)、野崎歓さん(放送大学教授)、三浦篤さん(大原美術館館長)

◎社会・風俗部門:伊藤亜紗さん(東京工業大学教授)、井上章一さん(国際日本文化研究センター所長)、片山杜秀さん(慶應義塾大学教授)、玄田有史さん(東京大学教授)、佐藤卓己さん(京都大学教授)、武田徹さん(ジャーナリスト、評論家)

◎思想・歴史部門:宇野重規さん(東京大学教授)、岡本隆司さん(京都府立大学教授)、苅部直さん(東京大学教授)、熊野純彦さん(放送大学特任教授)、堂目卓生さん(大阪大学教授)、藤原辰史さん(京都大学准教授)

 
受賞者略歴は、https://www.suntory.co.jp/news/article/14496-2.html を、
選評は、https://www.suntory.co.jp/news/article/14496-3.html をご覧ください。

 

サントリー学芸賞について

サントリー学芸賞は、1979年に創設。サントリーの創業80周年を記念して同年に設立されたサントリー文化財団(https://www.suntory.co.jp/sfnd/)が主催する学術賞です。

「政治・経済」「芸術・文学」「社会・風俗」「思想・歴史」の4部門に分かれ、毎年、前年1月以降に出版された著作物を対象に選考し、広く社会と文化を考える、独創的で優れた研究、評論活動をされた方を顕彰します。

選考に際しては、個性豊かで将来が期待される新進の評論家、研究者であること、本人の思想、主張が明確な作品であることに主眼が置かれています。また、代表候補作品だけでなく、これまでの一連の著作活動の業績を総合して選考の対象としています。

なお、2018年2月のサントリー文化財団設立40周年を機に、人文学・社会科学分野における既存の枠組にとらわれない自由な評論・研究活動のさらなる発展を願い、副賞を従来の200万円から300万円に増額しています。

 
<公益財団法人サントリー文化財団について>

サントリーの創業80周年を記念して1979年2月に大阪で設立。以来、わが国の国際化、情報化の時代に応えて、社会と文化に関する学術研究の助成、これらの分野における優秀な人材の育成をめざし、わが国および世界の学術文化の発展に寄与することを目的に事業を進めています。

★ホームページ:https://www.suntory.co.jp/sfnd/

 

現代日本の消費分析:ライフサイクル理論の現在地
宇南山 卓 (著)

家計行動を体系的に理解する

日本の家計はどのように消費を決定しているのか。
本書では、消費税率引上げ、特別定額給付金の消費刺激効果、児童手当給付問題、老後の生活資金の不足問題など、わが国の消費にまつわる多様な現象を「ライフサイクル理論」を用いて一貫した視点から分析している。経済環境の変化がどのように家計行動を変えるのか、そのメカニズムの解明を試みる意欲作。

①「消費のライフサイクル理論」の今日的な意義と目的を、総合的に理解すること。
②ミクロデータを用いて、ライフサイクル理論の家計消費行動における実証分析をまとめること。
③日本の家計消費に関する課題や政策的介入の可能性、将来像についての知見をまとめること。
この3つが本書の大きな目的であり、著者は過去10 年以上に亘って、日本のデータを用いたライフサイクル理論の実証研究を重ねてきた。ライフサイクル理論の実証は、今日の応用計量経済学の中心テーマの一つであり、ミクロ計量分析の理解を深めるうえでも大いに役立つであろう注目の一書。

民主主義を装う権威主義 – 世界化する選挙独裁とその論理
東島 雅昌 (著)

近年、権威主義体制の政治指導者の中に選挙を巧妙にコントロールし、あたかも民主主義の手続きに則っているように自分の統治を正当化する者が現れている。独裁体制研究のフロントランナーがそのからくりを解き明かす。

大才子 小津久足-伊勢商人の蔵書・国学・紀行文 (中公選書)
菱岡 憲司 (著)

映画監督・小津安二郎は異母弟の孫、伊勢松阪の富商、当世随一の人気作家・曲亭馬琴の友人、本居宣長の孫弟子にして、大蔵書家、そして江戸時代最大の紀行文作家・小津久足。湯浅屋与右衛門、小津桂窓、久足、雑学庵という四つの名前を使い分けて生きた男のそれぞれの営みを通して、近代とは似て非なる、あるがままの江戸社会を探る。文学、歴史、文化、経済を横断すると、あり得たかもしれない、もう一つの日本というパラレルワールドが見えてくる。

姫とホモソーシャル: 半信半疑のフェミニズム映画批評
鷲谷花 (著)

型にはめれば分かりやすい。でも、型にはめなければもっと深く分かる!
変えられない筋書きも、捉え直してみせる。アクション、ホラー、時代劇、アニメ……。フェミニズムが鋭く批判する家父長制の文脈だけでは語りきれない、女性キャラクターの自発性をどのように取り出せるのか。白雪姫もシンデレラも好きだったあなたへ送る、異色のフェミニズム批評。

杉浦康平と写植の時代: 光学技術と日本語のデザイン
阿部 卓也 (著)

宇宙としてのブックデザイン
戦後日本のグラフィックデザインを牽引したデザイナー、杉浦康平。
彼は写植という新たな技術といかに向きあい、 日本語のデザインといかに格闘したのか。
杉浦康平が日本語のレイアウトやブックデザインに与えた決定的な影響を明らかにする。

殉教の日本―近世ヨーロッパにおける宣教のレトリック―
小俣ラポー日登美 (著)

キリスト教文化にとって、日本は〈暴虐と聖性の国〉だった。グローバルな宣教のなかで、驚くべきイメージはどのように成立・普及したのか。長崎二十六殉教者の列福やその聖遺物の行方、さらには多様な殉教伝・磔図像・残酷劇などを跡づけ、東西をつなぐ新たな「双方向の歴史」を実践する。

首都の議会: 近代移行期東京の政治秩序と都市改造
池田 真歩 (著)

第49回藤田賞〈奨励賞〉(公益財団法人後藤・安田記念都市研究所)受賞!

首都東京にとって議会とは何か。江戸から東京へ移行するにあたって、身分制も解体し議会指導層の構成やその政治指導の特質が再編されていくなかで、議会での争点も多岐に変遷していった。そうした諸集団のあいだの相互交渉を通時的に分析し、近世・近代移行期の首都における議会の相貌を描きだす。

【序文より抜粋】
府会の開設当初こそ知名の士が闊達な議論を行ったが、しだいに議員の質が劣化し、星の進出を機にボス政治家が軽量級議員を束ねて密室政治を行う「伏魔殿」と化してしまうという、初期府会に対する懐古をはらんだナラティブも、この後ほどなく生まれ、現在に至るまで戦前東京市政のイメージを少なからず規定している。

だが、東京の議会が経験した変化の歴史性は、おそらく上記のナラティブに尽きるものではない。なかば議論を先取りするなら、本書が目指すのは、いわゆる「上から」の押し付けとして始まった近代的社会資本の整備に、地方制度の確立や産業化によって「下から」の需要が追いつき追い越したこの時代に固有の政治力学を、首都の議会が始動する局面を通じて描き出すことである。

朝鮮半島の歴史: 政争と外患の六百年 (新潮選書)
新城 道彦 (著)

韓流ドラマでは分からない「歴史の深層」を解き明かす!

ソウルの独立門は、日本ではなく清からの独立を意味して建てられた――そんな基本的な事実すら日本や韓国で知られていないのはなぜか。気鋭の研究者が、朝鮮王朝の建国から南北分断に至る長い道のりを、国内の政治闘争と周辺国のパワーバランスに着目して描き、朝鮮特有の政治力学の因果を浮き彫りにする決定的な通史。

 
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第45回 サントリー学芸賞決定|サントリー
第45回 サントリー学芸賞 受賞者略歴|サントリー
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