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芥川賞&直木賞(平成31年上半期)候補作が決定 芥川賞は社会学者・古市憲寿さんが再び候補に 直木賞は全員女性

日本文学振興会は6月17日、第161回芥川龍之介賞(2019年上半期)および第161回直木三十五賞(2019年上半期)の候補作品を発表しました。

芥川龍之介賞、直木三十五賞ともに、7月17日午後4時より築地・新喜楽で選考委員会が開催され、それぞれ受賞作品が決定します。

 

第161回芥川賞 候補作について

第161回芥川賞の候補作は以下の5作品です。

 
【第161回芥川賞 候補作】

◎今村夏子(いまむら・なつこ)さん「むらさきのスカートの女」(『小説トリッパー』春号)

◎高山羽根子(たかやま・はねこ)さん「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」(『すばる』5月号)

◎古市憲寿(ふるいち・のりとし)さん「百の夜は跳ねて」(『新潮』6月号)

◎古川真人(ふるかわ・まこと)さん「ラッコの家」(『文學界』1月号)

◎李琴峰(り・ことみ)さん「五つ数えれば三日月が」(『文學界』6月号)

 
今村夏子さんは、1980年生まれ。広島県出身。2010年「あたらしい娘」(「こちらあみ子」に改題)で太宰治賞を受賞し、デビュー。2011年、同作を含む単行本『こちらあみ子』で三島由紀夫賞、2017年『あひる』で河合隼雄物語賞『星の子』で野間文芸新人賞を受賞。芥川賞は3度目のノミネート。

高山羽根子さんは、1975年生まれ。富山県出身。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。2009年「うどん キツネつきの」で創元SF短編賞佳作を受賞し、デビュー。2016年「太陽の側の島」で林芙美子文学賞を受賞。前回に続いて2度目のノミネート。

古市憲寿さんは、1985年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。前回、初小説の『平成くん、さようなら』で初ノミネートし、今回が2度目のノミネート。

古川真人さんは、1989年生まれ。福岡県福岡市出身。2016年に『縫わんばならん』で新潮新人賞を受賞しデビュー。同作で第156回芥川賞の候補になって以来、今回で3度目のノミネート。

李琴峰さんは、1989年生まれ。台湾大学卒業。2013年に来日。2015年に早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程を修了。2017年「独舞」で群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。今回が初ノミネート。

 

第161回直木賞 候補作について

第161回直木賞の候補作は以下の6作品です。

 
【第161回直木賞 候補作】

◎朝倉かすみ(あさくら・かすみ)さん『平場の月』(光文社)

◎大島真寿美(おおしま・ますみ)さん『渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂結び(たまむすび)』(文藝春秋)

◎窪美澄(くぼ・みすみ)さん『トリニティ』(新潮社)

◎澤田瞳子(さわだ・とうこ)さん『落花』(中央公論新社)

◎原田マハ(はらだ・まは)さん『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)

◎柚木麻子(ゆずき・あさこ)さん『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)

 
朝倉かすみさんは、1960年生まれ。北海道出身。北海道武蔵女子短期大学卒業。「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞を受賞しデビュー。2009年に『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞、2019年『平場の月』で山本周五郎賞を受賞。
なお、光文社は6月17日、『平場の月』の山本周五郎賞受賞および直木賞ノミネートを記念し、特設サイト(https://www.kobunsha.com/special/asakura/)をオープンしました。

大島真寿美さんは、1962年生まれ。1992年「春の手品師」で文學界新人賞を受賞しデビュー。直木賞は今回で2度目のノミネート。

窪美澄さんは、1965年生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞しデビュー。2011年、同作を収録した『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞、2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞。今回で2度目のノミネート。

澤田瞳子さんは、1977年生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了。2010年『孤鷹の天』でデビュー。2011年、同作で中山義秀文学賞、2012年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、2013年、同作で新田次郎文学賞、2016年『若冲』で親鸞賞および歴史時代作家クラブ賞を受賞。今回で3度目のノミネート。

原田マハさんは、1962年生まれ。東京都出身。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史学科卒業。2005年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞しデビュー。2012年『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞、R・40本屋さん大賞、2017年『リーチ先生』で新田次郎賞、2018年『異邦人いりびと』で京都本大賞を受賞。今回で4度目のノミネート。

柚木麻子さんは、1981年生まれ。東京都出身。立教大学文学部フランス文学科卒業。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞。同作を含めた単行本『終点のあの子』でデビュー。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞、2016年、同作で高校生直木賞を受賞。今回で5度目のノミネート。

 

芥川賞と直木賞について

芥川賞と直木賞は、1935(昭和10)年に制定され、芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られます。

芥川賞は主に無名・新進作家が、直木賞は無名・新進・中堅作家が対象となります。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が授与されます。

 

<芥川賞候補作>

むらさきのスカートの女
今村夏子 (著)

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために〈わたし〉の職場で彼女が働きだすよう誘導する。
『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。

 
カム・ギャザー・ラウンド・ピープル
高山 羽根子 (著)

おばあちゃんは背中が一番美しかったこと、下校中知らないおじさんにお腹をなめられたこと、自分の言いたいことを看板に書いたりする「やりかた」があると知ったこと、高校時代、話のつまらない「ニシダ」という友だちがいたこと……。大人になった「私」は雨宿りのために立ち寄ったお店で「イズミ」と出会う。イズミは東京の記録を撮りため、SNSにアップしている。映像の中、デモの先頭に立っているのは、ワンピース姿の美しい男性、成長したニシダだった。
イズミにつれられてやってきたデモの群衆の中、ニシダはステージの上から私を見つけ、私は逃げ出した。敷き詰められた過去の記憶とともに、私は渋谷の街を思い切り走る、ニシダにつかまらないように。

 
ラッコの家
古川 真人 (著)

見えないからこそ、見えてくるものがある。夢とリアルが絶え間なく交錯する認知症の老女。自らの空想に怯えていたことを笑い飛ばす。

 
五つ数えれば三日月が
李 琴峰 (著)

日本で働く台湾人の私。
台湾人と結婚し、台湾に移り住んだ友人の実桜。
平成最後の夏、二人は5年ぶりに東京で再会する。

話す言葉、住む国――選び取ってきたその先に、今だから伝えたい思いがある。

 
<直木賞候補作>

平場の月
朝倉かすみ (著)

朝霞、新座、志木―。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとりである。須藤とは、病院の売店で再会した。中学時代にコクって振られた、芯の太い元女子だ。50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れる―。心のすき間を埋めるような感情のうねりを、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く、大人の恋愛小説。

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び
大島 真寿美 (著)

虚実の渦を作り出した、もう一人の近松がいた──

「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作!

江戸時代、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀。
大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章。
末楽しみな賢い子供だったが、浄瑠璃好きの父に手をひかれて、芝居小屋に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれる。
近松門左衛門の硯を父からもらって、物書きの道へ進むことに。
弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった半二。
著者の長年のテーマ「物語はどこから生まれてくるのか」が、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した長編小説。

トリニティ
窪 美澄 (著)

「男、仕事、結婚、子ども」のうち、たった三つしか選べないとしたら――。どんなに強欲と謗られようと、三つとも手に入れたかった――。50年前、出版社で出会った三人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした〈トリニティ=かけがえのない三つのもの〉とは? かつてなく深くまで抉り出す、現代日本の半世紀を生き抜いた女たちの欲望と祈りの行方。平成掉尾を飾る傑作!

落花
澤田 瞳子 (著)

将門という男は、なぜかくも激しく不器用なのだ!
音楽に取り憑かれ、「至誠の声」を求め旅に出た仁和寺の僧・寛朝。
荒ぶる坂東の地で出会ったのは、古き法に背き、ならず者と謗られる人物だった――。

土豪、傀儡女、群盗……やがて来たる武士の世を前に、混迷を生きる東国の人々。
その野卑にして不羈な生き様に接し、都人はどんな音を見出すのか。

父に疎まれ、梵唄の才で見返そうとする寛朝
逆賊と呼ばれても、配下を守ろうとする将門
下人の身にして、幻の琵琶を手にせんと策略を巡らす千歳
「至誠の楽人」の名声を捨て、都から突然姿を消した是緒

己の道を貫かんともがく男たちの衝突、東西の邂逅を、 『若冲』『火定』の俊英が壮大なスケールで描き出す!

美しき愚かものたちのタブロー
原田 マハ (著)

日本に美術館を創りたい。
ただ、その夢ひとつのために生涯を懸けた不世出の実業家・松方幸次郎。
戦時下のフランスで絵画コレクションを守り抜いた孤独な飛行機乗り・日置釭三郎。
そして、敗戦国・日本にアートとプライドを取り戻した男たち――。
奇跡が積み重なった、国立西洋美術館の誕生秘話。
原田マハにしか書けない日本と西洋アートの巡りあいの物語!

日本人のほとんどが本物の西洋絵画を見たことのない時代に、ロンドンとパリで絵画を買い集めた松方は、実はそもそもは「審美眼」を持ち合わせない男だった。
絵画収集の道先案内人となった美術史家の卵・田代との出会い、クロード・モネとの親交、何よりゴッホやルノアールといった近代美術の傑作の数々によって美に目覚めていく松方だが、戦争へと突き進む日本国内では経済が悪化、破産の憂き目に晒される。道半ばで帰国した松方に代わって、戦火が迫るフランスに単身残り、絵画の疎開を果たしたのは謎多き元軍人の日置だったが、日本の敗戦とともにコレクションはフランス政府に接収されてしまう。だが、講和に向けて多忙を極める首相・吉田茂の元に、コレクション返還の可能性につながる一報が入り――。

世界でも有数の「美術館好き」と言われる日本人の、アートへの探究心の礎を築いた男たち。美しい理想と不屈の信念で、無謀とも思える絵画の帰還を実現させた「愚かものたち」の冒険が胸に迫る。

マジカルグランマ
柚木 麻子 (著)

いつも優しくて、穏やかな「理想のおばあちゃん」(マジカルグランマ)は、もう、うんざり。夫の死をきっかけに、心も体も身軽になっていく、75歳・正子の波乱万丈。

若い頃に女優になったが結婚してすぐに引退し、主婦となった正子。
映画監督である夫とは同じ敷地内の別々の場所で暮らし、もう五年ほど口を利いていない。
ところが、75歳を目前に先輩女優の勧めでシニア俳優として再デビューを果たすことに!
大手携帯電話会社のCM出演も決まり、「日本のおばあちゃんの顔」となるのだった。
しかし、夫の突然の死によって仮面夫婦であることが世間にバレ、一気に国民は正子に背を向ける。
さらに夫には二千万の借金があり、家を売ろうにも解体には一千万の費用がかかと判明する。

亡き夫に憧れ、家に転がり込んできた映画監督志望の杏奈、
パートをしながら二歳の真実ちゃんを育てる明美さん、
亡くなった妻を想いながらゴミ屋敷に暮らす近所の野口さん、
彼氏と住んでいることが分かった一人息子の孝宏。
様々な事情を抱えた仲間と共に、メルカリで家の不用品を売り、自宅をお化け屋敷のテーマパークにすることを考えつくが――

「理想のおばあちゃん」から脱皮した、したたかに生きる正子の姿を痛快に描き切る極上エンターテインメント!

 
【関連】
芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会
直木三十五賞|公益財団法人日本文学振興会

 


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