世界はそこだけじゃないから――ブレイディみかこさんエッセイ『地べたから考える』が刊行
ブレイディみかこさんが日英の社会のひずみを現場で見て考えたエッセイ『地べたから考える』が筑摩書房より刊行されました。
今、あなたの足元にはどんな問いが立っている?
本書は、日常にひそむ社会の問題を、自らのことばで表現し続けるブレイディみかこさんのエッセイ・アンソロジーです。若い人たちに向けて、地べたからの視線の強さと深さを味わう15篇を精選。
〈「はじめに」より〉
最近よく「問いを立てる力をつけよう」という言葉を耳にする。が、そもそも問いって立てるものなのだろうか。(……)
問いを持つということは、それについて自分で調べたくなり、知りたくなることだ。本気で探求したくなる問いは、誰かに言われて無理やり立てたものじゃない。むしろ、あなたがいま本当に関心を持っているもの、つまり、もうあなたの足元に立っている問いだろう。それは、「どうしてルックスのいい子だけがちやほやされるのだろう」かもしれないし、「わたしの親はこんなに必死で働いているのに、なぜわが家にはお金がないのだろう」かもしれない。
本気で前者の問いを探求し始めたら、「ルッキズム」という言葉があることを知ったり、世界各地で美の基準は異なることがわかって、偏見や人種問題について考え始めるかもしれない。後者のほうの問いはあなたを経済格差という言葉に導き、資本主義の問題点について考え始めるかもしれない。
このような問いと探求は、国語の試験や大学入試の小論文でいい点数を取ったり、大人を喜ばせたり、誰かを感心させたりするために必要なのではない。そうではなく、あなた自身がこれから生きていくために必要なのだ。(……)
生きるための問いは立てるものではなく、立ってくるものであり、すでに立っているもののことだ。
この本に収められたエッセイで、わたしはその時々に自分の足元に立っていた問いについて書いてきたつもりだ。
さて、あなたの足元にはどんな問いが立ってくる(あるいは、立っている)だろう。
本書の目次
Scene1 子どもの情景
Scene2 地べたからみた社会
Scene3 英国という鏡
Scene4 地べたから見た世界
Scene5 他者の靴を履いてみること
著者プロフィール
ブレイディみかこさんは、1965年生まれ、福岡市出身。ライター・コラムニスト。高校卒業後、音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。
2017年『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で第16回新潮ドキュメント賞、2019年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で第73回毎日出版文化賞特別賞、第2回Yahoo! ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞、第7回ブクログ大賞(エッセイ・ノンフィクション部門)を受賞。
その他の著書に『ワイルドサイドをほっつき歩け――ハマータウンのおっさんたち』『THIS IS JAPAN――英国保育士が見た日本』『他者の靴を履く――アナーキック・エンパシーのすすめ』『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』や、小説作品に『両手にトカレフ』『リスペクト──R・E・S・P・E・C・T』『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』、『転がる珠玉のように』などがある。
地べたから考える ――世界はそこだけじゃないから (ちくまQブックス) ブレイディみかこ (著) 日英の社会のひずみを |
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