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ブレイディみかこさんが「底辺託児所」の保育士となるまでの軌跡を綴る自伝的小説『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』が刊行

ブレイディみかこさん初の自伝的小説『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』がKADOKAWAより刊行されました。

 

「底辺託児所」の保育士となるまでの軌跡を綴る、著者初の自伝的小説にして労働文学の新境地!

 
【あらすじ】

「あたしのシットはあたしが決める」
「自分を愛することは、絶えざる闘いだ」

ベビーシッター、工場の夜間作業員、ホステス、社食のまかない、HIV病棟のボラティア等。「底辺託児所」の保育士となるまで――。

ブルシット・ジョブ(くそどうでもいい仕事)よりも、問題はシット・ジョブだ。
シット・ジョブ(くそみたいに報われない仕事)。店員、作業員、配達員にケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だ。他者のケアを担う者ほど低く扱われる現代社会。自分自身が人間として低い者になっていく感覚があると、人は自分が愛せなくなってしまう。
人はパンだけで生きるものではない。だが、薔薇よりもパンなのだ。
数多のシット・ジョブを経験してきた著者が、ソウルを時に燃やし、時に傷つけ、時に再生させた「私労働」の日々を稀代の筆力で綴った連作短編集。

■声を出さずに泣く階級の子どもがいる。
■水商売では年齢と美醜で判断されて、失礼な言葉や態度を許容することでお金を貰う。失礼を売り、失礼を買う。失礼は金になるのだ。
■何かを感じたり、ムカついたりする主体性のある存在として認識しない者は、相手の賃金だけでなく、人間としての主体性さえ搾取している。
■革命とは転覆ではなく、これまでとは逆方向に回転させることなのかもしれない。
■「自分をなくすな」と言う人がよくいるが、それは道徳とか思想とかではなく、自分の肉体を生存させ続けるための方策なのかもしれない。

 
<激賞の声、続々!>

◆信田さよこさん(公認心理師・臨床心理士)
「働いて考える、考えながら働く。そうやって地べたから練り上げられた言葉が結晶して、この一冊になった。使い古され疲弊した「労働」という言葉は、「私」をかいくぐることで再び輝きを取り戻す。著者の原点はここにあったのだ。」

◆白井聡さん(政治学者)
「ブレイディみかこ氏が描き出すのは、労働の現在、階級の現在、そして人間の尊厳の現在だ。それは痛みに満ちている。しかし、痛みに立ち向かう勇気もまた、本書は与えてくれる。」

 

本書の目次と各話のあらすじ

 
第一話 一九八五年の夏、あたしたちはハタチだった

「あたしは日本にいるときはいつも死んでいた」。イギリスにいきたい、ロンドンにいきたい、何よりも「ここにはないどこか」へいきたい。再び生きるための資金を得るため、中洲のクラブと天神のガールズパブを掛け持ちして、水商売に浸ったひと夏。本名も知らない人たちと過ごした濃密な時間。

 
第二話 ぼったくられブルース

「どうして家賃払って人んちの家事やってんの?」
ロンドンのホームステイ先で奉公人の様に扱われていたあたしは、英語学校の同級生から上流階級の家庭のナニー(ベビーシッター兼家庭教師のような存在)の斡旋を受ける。現状からの脱出に期待を抱くも……

 
第三話 売って、洗って、回す

「お前、あのワンピース買うて、自分で着て売ってみ」
アパレルショップの店員、クリーニング工場の夜間作業員、長期無職者を支援するための慈善センター。場所も時間も違う。けれども、洋服にアイロンをかけると連なってくる思い出がある。それは数字とシステムの暴力。

 
第四話 スタッフ・ルーム

「大人って、いつも尊敬できる存在とは限らないよ」。その忠告はシャーリーには届かなかった。
ある日、私が勤めていた保育園に「アプレンティス」(見習い、実習生)として保育士を目指す子、シャーリーがやってきた。苦労の多い階級出身の彼女は無防備だった。そう、無防備だったのだ。

 
第五話 ソウルによくない仕事

「自分がどんどん低くなっていくような仕事って、したことあります?」
語学学校から足が遠のいた私はやりたいことも見つけられず、悶々とした日々を過ごしていた。そんな中、日本食スーパーの社食のまかないの仕事に携わる。イージーな仕事のはずだったのだが……

 
第六話 パンとケアと薔薇

「ケアする人」は、死んでまで誰かをケアする役目を背負わされるのだろうか。
フードバンクのボランティア仲間の母親がなくなった。彼女は介護士で、その母も看護師だった。そして介護士だった私の母と、私自身のHIV病棟のボランティア時代の記憶が「ある出来事」を機に押し寄せる。

 
あとがき

 

著者プロフィール

ブレイディみかこさんは、ライター・作家。1965年生まれ、福岡県福岡市出身。1996年から英国ブライトン在住。日系企業勤務後、保育士資格を取得し、「底辺保育所」で働きながらライターとなる。

2017年『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)で第16回新潮ドキュメント賞を受賞。2019年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社、のち新潮文庫)で第73回毎日出版文化賞特別賞、第2回Yahoo! ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、第7回ブクログ大賞(エッセイ・ノンフィクション部門)などを受賞する。

他書に『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ: 社会・政治時評クロニクル 2014-2021』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト: R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。本書は初の自伝的小説となる。

 

私労働小説 ザ・シット・ジョブ
ブレイディ みかこ (著)

「自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ」。魂の階級闘争の軌跡!

「あたしのシットはあたしが決める」
ベビーシッター、工場の夜間作業員にホステス、社食のまかない、HIV病棟のボランティア等。「底辺託児所」の保育士となるまでに経た数々の「他者のケアをする仕事」を軸に描く、著者初の自伝的小説にして労働文学の新境地。

「自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ」
シット・ジョブ(くそみたいに報われない仕事)。店員、作業員、配達員にケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だ。
他者のケアを担う者ほど低く扱われる現代社会。自分自身が人間として低い者になっていく感覚があると、人は自分を愛せなくなってしまう。人はパンだけで生きるものではない。だが、薔薇よりもパンなのだ。
数多のシット・ジョブを経験してきた著者が、ソウルを時に燃やし、時に傷つけ、時に再生させた「私労働」の日々、魂の階級闘争を稀代の筆力で綴った連作短編集。

 


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