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ひそやかに奏でる想い、抱きしめた記憶――上野千鶴子さんエッセイ集『マイナーノートで』が刊行

装丁・デザイン:名久井直子/装画:狩野岳朗

装丁・デザイン:名久井直子/装画:狩野岳朗

社会学者・上野千鶴子さんのエッセイ集『マイナーノートで』がNHK出版より刊行されました。目標を持たない学生が研究者となるまでの過程から、趣味・嗜好、次世代への思い、惜別までを低く静かな「声調」で奏でた随想作品集です。

 

自らのうちに響く音色を自らの言葉で織り上げたエッセイ集

社会学者・フェミニストとして知られる上野千鶴子さんは、切れ味鋭く社会を分析、「老後」への提言や人生相談、東大新入生への祝辞が話題となるなど、多くの読者の共感と信頼を得てきました。

 
その明晰な「頭脳」は、どんな「感性」を併せ持っているのでしょうか。その答えが本書には詰まっています。子ども時代の「宗教遍歴」や学生時代の鬱々とした日々、研究者への道のりといった「来し方」から、食の嗜好や山登り、観劇などの趣味、老いへの不安、次世代への思い、他界した先達への哀悼、喪失の哀しみまでを、低く静かな「大人の音色」で奏でた随想作品集です。

 
【「あとがき」より】
音楽に長調と短調があるのはご存じだろう。英語で言うとメジャーとマイナー。ノートには調べ、という意味がある。
人格にもメジャーノートとマイナーノートがある。
「上野さん、どうしていつもそんなに元気で活きいきしてるんですか」と訊かれる。
「秘訣を教えてください」とも言われる。
「なに、簡単です。そうじゃない部分を他人さまには見せないだけです」と答える。
そうじゃない部分。自分のなかにゆっくりとマイナーノートで流れる時間。
それを汲み上げてそっと差し出すようなエッセイを、書いてみたいと思った。

 
フェミニズムや介護といった研究領域、コロナや戦争といった社会の出来事にも触れつつ、自身の裡を流れる様々な音色を言葉に託していく――「考えたことは売るが、感じたことは売らない」とかつて豪語した上野さんも昨年、後期高齢者となりました。気概はあるが、不安もある…。そんな上野さんが「奏でる」文章が、読み手の感情を揺さぶり、のちに深い共感をもたらします。

人生の後半を視野に入れたすべての大人たち必読の一冊です。

 
<NHK出版デジタルマガジンで一編公開中>

本書より「産まないエゴイズム?」を公開しています。

★URL:https://mag.nhk-book.co.jp/article/62252

 

本書の目次

Ⅰ 通奏低音
「父の娘」として/棄教徒/犬派/衛生観念/師匠のDNA/後悔だらけの人生/役に立つ、立たない?/捨てられない理由/不要不急

II インテルメッツォ
チョコレート中毒/寿司食いてえ……/フラワーボーイ/芝居極道/山ガール今昔/森林限界/トイレ事情/テキストのヴェネツィア/旅は人の記憶

III リタルダンド
被傷体験/娘が戦争に志願したら?/学校に地雷を置いてきた……/変わる月経事情/度はずれたナルシシズム/産まないエゴイズム?/認知症当事者から見える世界/医者の死に方/憤怒の記憶/とりかえしのつかないものたち/死ぬ前に赦し赦される関係を

IV 夜想曲
感情記憶はよみがえるか/手の年齢/転倒事故/おひとりさまのつきあい/上野千鶴子基金設立 「恩送り」へ才能を育てた才能 追悼 山口昌男/「男らしい」死 追悼 西部邁/中井さんは「神の国」へ行ったのか? 追悼 中井久夫/戦後最大の女性ニヒリスト 追悼 富岡多惠子/わたしたちはあなたを忘れない 追悼 森崎和江/ごまかしを許さないきびしさ 追悼 西川祐子/女の自由を求め、日常で戦った 追悼 田中美津/どこにも拠らず考えぬいた 追悼 鶴見俊輔/色川さん、ありがとう 追悼 色川大吉

あとがき

 

著者プロフィール

(c) 後藤さくら

(c) 後藤さくら

上野千鶴子(うえの・ちづこ)さんは、1948年生まれ、富山県出身。社会学者、東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学、ジェンダー、介護など、幅広い分野で活躍。

おもな著書に『近代家族の成立と終焉』『生き延びるための思想』(岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』『ひとりの午後に』((文春文庫)、『最期まで在宅おひとりさまで機嫌よく』(中央公論新社)、『こんな世の中に誰がした』(光文社)、『フェミニズムがひらいた道』(NHK出版)、山暮らしエッセイ集『八ヶ岳南麓から』(山と溪谷社)など多数。

 

マイナーノートで
上野 千鶴子 (著)

自らのうちに響く音色を自らの言葉で織り上げた、待望の最新エッセイ集

 
【関連】
子を産むエゴイズムと子を産まないエゴイズム、どちらが大きい? | NHK出版デジタルマガジン

 


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