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新芥川賞作家・朝比奈秋さんデビュー作『私の盲端』が文庫化

『サンショウウオの四十九日』で第171回芥川賞を受賞した朝比奈秋さんの『私の盲端』が文庫化され、朝日文庫より刊行されました。朝比奈さんにとっては初の文庫化となります。

 

『私の盲端』について

朝比奈秋さんは、3年前の2021年に第7回林芙美子文学賞を受賞しデビューして以来、作品を発表するごとに2023年第36回三島由紀夫賞、第51回泉鏡花文学賞、第45回野間文芸新人賞、そして第171回芥川龍之介賞と、新人がとり得る賞だけでなく、数々の賞を受賞し、その度に注目が集まっています。

 
本書は、現役の医師として、病を抱えた身体とその意識の変容を圧倒的なリアリティで描き続ける、新人とは思えない実力とエッセンスが詰まった朝比奈秋さんの原点となる作品です。
解説には、林芙美子文学賞の選考委員でもある井上荒野さんが寄稿しています。

 
【あらすじ】

女子大生・涼子は飲食店のアルバイトや学校生活を謳歌していたが、病気のため人工肛門になる。慣れないバリアフリートイレ、接客しながらも流れ出る便。新たな身体の変化に慣れないながらも同じく人工肛門を持つ男性と知り合い――読者の内臓をも刺激する、現役医師による衝撃作。

へき地医療で出会った村民の生と死を冷徹な筆致で描いた第7回林芙美子文学賞受賞作「塩の道」も併録。

 

著者・朝比奈秋さんのコメント

生きている間、あらゆる人間が逃れられない「排泄(はいせつ)」。多くの人はトイレに行って大便を出すという行為について、深く考えることはないかもしれない。
どうして、肛門は直接見ることができない場所にあるのか。どうして、口と肛門はひとつなぎなのか。便とはいったい何なのか。便は汚いものなのか。
食べ物を消化・吸収して出す臓器・胃腸。その専門医である私でさえ、大いに無知だ。排泄とは何か。それをもっともよく知る者たちへ耳を傾けるしかない。
人工肛門になった女子大生の涼子。へその横に空いた穴。もう一人のオストメイトの京平。バイト先で泥と汗にまみれて料理を作るコックとフロアスタッフたち。オストメイトのために作られたバリアフリートイレの洗浄台……。
最大限の敬意を持って、私は涼子らの声に耳を澄ませたい。

 

著者プロフィール

朝比奈秋(あさひな・あき)さんは、1981年生まれ、京都府出身。医師として勤務しながら小説を執筆し、2021年に「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞。2022年、同作を収録した『私の盲端』でデビュー。

2023年『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。同年『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞と第45回野間文芸新人賞、2024年7月「サンショウウオの四十九日」で第171回芥川賞を受賞。同月「サンショウウオの四十九日」は書籍化され、新潮社より刊行。

 

私の盲端 (朝日文庫)
朝比奈 秋 (著)

女子大生・涼子は飲食店のアルバイトや学校生活を謳歌していたが、病気のため人工肛門になり生活が一変する。その意識と身体の変容を執拗に描き、読者の内臓をも刺激する、衝撃のデビュー作。第7回林芙美子文学賞受賞作「塩の道」も併録。

 
【関連】
試し読み|私の盲端

 


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