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『ケーキの切れない非行少年たち』の実践版!宮口幸治さん『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』が刊行

宮口幸治さん著『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』

宮口幸治さん著『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』

『ケーキの切れない非行少年たち』で知られる宮口幸治さん著『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』がPHP研究所より刊行されました。

『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)の部数は80万部を超えており、子どもの認知機能問題に対する社会の関心の高さが見てとれます。刊行から3年が経過し、その問題にも新たな変化がありました。本書は、認知機能の弱さに困っている子どもたちを支援する活動に取り組む宮口さんの最新刊です。オリジナル教材「コグトレ」を始めた非行少年たちの経緯や「その後」、学校教育機関での事例を紹介します。

 

「立方体が描けない」とはどういうことか

本文より

本文より

「立方体が描けない子」とは、認知機能の弱さに気づいてもらえなかったために非行化した子どもや少年を指しています。立方体の模写は7歳から9歳までの間にクリアする課題ですが、著者が少年院で出会った非行少年の多くは、10代後半でありながら正しく模写ができませんでした。

 
宮口さんは、非行少年の「見たり、聞いたり、見えないものを想像したりする力」の弱さを目の当たりにし、非行問題の一因が認知機能にあるのではと考え、「まちがい探し」「点つなぎ」などの認知機能強化トレーニングを矯正教育に導入し始めました。

 

「学習の土台」を強化するトレーニング

少年院での取り組みをもとに開発された、子どもたちへの支援プログラムが「コグトレ」です。社会面・学習面・身体面という3方向のアプローチがありますが、認知機能の弱さには、学習面のコグトレが効果的です。

(1)覚える
(2)数える
(3)写す
(4)見つける
(5)想像する

…という5つのトレーニングで構成され、頭の基礎体力の向上を目的としています。

国語や算数を学ぶ以前の「学習の土台」となるため、周囲についていけなくなることによるモチベーションの低下を防ぎ、ゲーム感覚で知らず知らずの間に力を付けることができます。本書は、コグトレの具体的内容をワークシートとともに多数掲載しています。

 

学習面コグトレの例

 
◆「何が一番?」

(方法)大小、軽重、遠近など比較の入った文章を聞いて、何が一番目だったかを答える

(効果)文章読解力と聴覚(言語性)ワーキングメモリのトレーニング

例)「キリンさんの家は、ゾウさんの家よりも大きいです。ライオンさんの家は、キリンさんの家よりも大きいです。一番小さい家に住んでいるのは誰ですか」
答え(ゾウ)

 
◆「記号さがし」

(方法)記号がランダムに敷き詰められた表から、法則に従って特定のマークを数える

(効果)集中して数えるという持続的な注意力と、ルールに従って注意を切り替える力を同時にトレーニング

 
◆「くるくる星座」

(方法)上の見本と同じ星座になるように、下の点を線で繋いでいく

(効果)視覚認知の基礎力と、論理的判断力を身につけるトレーニング

 

一般の学校にも広がる

コグトレは、少年院だけでなく、一般の学校でも取り入れられています。本書では、学校や教育機関での導入事例と、その成果も紹介しています。

 
◆小学校6年生を担当する教員

「運動会が終わってから、コグトレに取り組み始めた。1学期は話が聞けず、いつ学級崩壊が起こるかと、学校に来るのが嫌になっていたが、今、クラスが静かになって話を聞ける場面も増えた。…2学期を終えて、落ち着いて授業が受けられる時間が増えてきた」

 
◆大阪府のある小学校の教員

「(コグトレ導入の理由は、)学習の基礎になる力をしっかり整えることで、学習の力を向上させてあげたいと思ったからです。以前は、離席とか教室飛び出しが頻出するような学校だったのですが、今は落ちついてじっくりと学習できる子ばかりになりました」
『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』について

 

著者プロフィール

著者の宮口幸治(みやぐち・こうじ)さんは、立命館大学産業社会学部・大学院人間科学研究科教授。医学博士、児童精神科医、臨床心理士。

京都大学工学部卒業、建設コンサルタント会社勤務ののち、神戸大学医学部医学科卒業。大阪府立精神医療センター、法務省宮川医療少年院、交野女子学院医務課長などを経て2016年より立命館大学教授。困っている子どもたちを教育・医療・心理・福祉の観点で支援する「日本COG-TR学会」を主宰。

著書に、80万部を超えた『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』(以上、新潮新書)のほか、『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』(三輪書店)など。

 

「立方体が描けない子」の学力を伸ばす (PHP新書)
宮口 幸治 (著)

立方体の模写は、標準的な子どもであれば大体7歳から9歳までの間にクリアする課題である。しかし著者は少年院に、立方体が描けない中学生や高校生が数多く収容されていることに気づく。「見たり聞いたりする力の弱さが非行の原因なのでは?」と考え、認知機能を強化するトレーニング法を探すも、適当なものが見当たらない。「これは自分で作るしかない」と腹をくくり、周囲の協力も得て、社会性や身体性をも伸ばす教材「コグトレ」を考案。本書ではその内容と、少年たちがトレーニングで変化したプロセス、さらに子どものモチベーションについて親に知っておいてほしいことを綴る。

【目次より】
●教科学習以前のレベル
●人の気持ちがわからない
●少年たちで教え合うほうが理解が進んだ
●社会面、学習面、身体面の3方向からの包括的支援
●一般の学校にも広がる
●「なぜ、勉強するの?」と聞かれたら
●友だちとのコミュニケーションがうまくいかないときはetc.

 


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