『小公女』×『細雪』×『華麗なる一族』×殺人事件! 永嶋恵美さん『檜垣澤家の炎上』が刊行
日本推理作家協会賞を受賞し、長篇や数々のアンソロジーでもその実力をいかんなく発揮してきた名手・永嶋恵美さんによる書き下ろし長編ミステリ『檜垣澤家の炎上』が新潮文庫より刊行されました。
富と権力の一族に拾われた娘が抱いた野望とは──。
作品の舞台は明治維新後に急速に発展した港町・横浜。出身地の上州からここに移り住み、近代日本のエンジンとなった養蚕業で成り上がった檜垣澤一族。頼る者がひとりもいない、否、敵だらけの屋敷の中で己の頭脳を武器にサヴァイブしてゆくかな子の姿は話題のドラマ「虎に翼」の女性たちとも重なるところがあります。
著者は女性同士に生じる葛藤を描くことでも高い評価を得てきましたが、この小説に登場するのはいずれも個性溢れる女たちです。美しさ、高慢、嫉妬、策略。彼女たちそれぞれの生き方は大きな読みどころです。勢力では劣りますが、男性たちも大きな鍵を握っています。一族ものの王道を歩みつつ、近代日本を揺るがせた事件や災害、日本軍の動向などとも密接にかかわる物語となっています。
【あらすじ】
横濱で知らぬ者なき一族、檜垣澤家。養蚕業を軸に一代で富を築いた貿易商である。当主要吉の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られた。商売の舵取りをする大奥様スヱ。互いに美を競い合う、郁乃、珠代、雪江の三姉妹。檜垣澤は女系が統治しているのだった。そしてある夜、婿養子・辰市が不審な死を遂げる。多くの使用人に支えられた豪奢な暮らし、巧みに進められる政略結婚、新たな利益を得るための軍との交渉、封印された昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた恐るべき真実とは──。
著者プロフィール
永嶋恵美(ながしま・えみ)さんは、1964 (昭和39)年生まれ、福岡県出身。広島大学卒業。1994(平成6)年「ZERO」でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞し、映島巡のペンネームでデビュー。ゲームや漫画のノベライズなどを手掛ける。その一方で、永嶋恵美として、エンターテインメント小説を執筆。2004(平成16)年に発表した『転落』が大きな注目を集める。
2016年「ババ抜き」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。ほかに、「泥棒猫ヒナコの事件簿」シリーズ、『せん-さく』『一週間のしごと』『明日の話はしない』『視線』『なぜ猫は旅をするのか?』『ベストフレンズ』などの作品がある。
檜垣澤家の炎上 (新潮文庫) 永嶋 恵美 (著) 『細雪』×『華麗なる一族』×ミステリ! 横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは──。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。【解説=千街晶之】 |
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