奥泉光さん〈超絶技巧ミステリー〉『虚史のリズム』が刊行
太平洋戦争前後の混乱期に蠢く無数の「声」を紡ぎあげた超絶技巧ミステリー、奥泉光さんによる1000ページ超えの大作『虚史のリズム』が集英社より刊行されました。
新しい戦前? 否、死者の声は響き続けてきた――。
日本の近現代史を舞台に、『東京自叙伝』など数々の怪作を世に送り出し続けている小説家・奥泉光さん。『この国の戦争:太平洋戦争をどう読むか』(加藤陽子さんとの共著)などでも、その知識の深淵を知ることができます。
その奥泉さんが新たに世に問う、1000ページを超える超大作、それが『虚史のリズム』です。
【あらすじ】
1947年東京、石目鋭二はかねてより憧れていた探偵になることにした。雑多な商売をこなしつつ新宿にバー「Stone Eye」を開き、私立探偵として活動を始める。
ほどなくして彼のもとに、元陸軍少尉の神島健作からの依頼が舞い込んだ。山形に住む彼の実の兄・棟巍(とうぎ)正孝元中将夫妻が何者かに殺されたのだという。正孝の長男夫妻と三男の和春は行方知れず、他の容疑者も浮かぶ中、事件を追う石目の前に姿を現したのは、東京裁判の行方をも動かす国家機密が記された「K文書」なる存在だった。
GHQまでもが必死に追う怪文書の正体は。殺人事件の犯人は。dadadadadaという奇妙なリズムが意味するものは一体……?
奥泉さん本人の「奇書にしたい」という思いから、作品中の「dadada」というフレーズを生かしてデザインされた、川名潤さんによるインパクト十分な装丁にもご注目ください。
★『虚史のリズム』試し読みはこちら:https://note.com/shueisha_bungei/n/n873e7647fbe6
著者プロフィール
奥泉光(おくいずみ・ひかる)さんは、1956年生まれ、山形県出身。1986年「地の鳥天の魚群」でデビュー。
1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、瞠目反文学賞、1994年『石の来歴』で芥川賞、2009年『神器―軍艦「橿原」殺人事件』で野間文芸賞、2014年『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞、2018年『雪の階』で柴田錬三郎賞と毎日出版文化賞を受賞。
『バナールな現象』『「吾輩は猫である」殺人事件』『グランド・ミステリー』『シューマンの指』『死神の棋譜』など著書多数。
虚史のリズム 奥泉 光 (著) 新しい戦前? 否、死者の声は響き続けてきた―― 1947年東京、石目鋭二はかねてより憧れていた探偵になることにした。進駐軍の物資横流しなど雑多な商売をこなしつつ、新宿にバー「Stone Eye」を開き、店を拠点に私立探偵として活動を始める。石目が収容所で知り合った元陸軍少尉の神島健作は、山形の軍人一家・棟巍家の出身。戦地から戻り地元で療養中、神島の長兄・棟巍正孝夫妻が何者かによって殺害される。正孝の長男・孝秋とその妻・倫子は行方知れず、三男の和春も足取りが掴めない。他の容疑者も浮かぶ中、神島の依頼を受けた石目は、初めての「事件」を追い始める。ほどなく、石目のもとに渋谷の愚連隊の頭からの新たな依頼が舞い込む。東京裁判の行方をも動かしうる海軍の機密が記されている「K文書」の正体を探ってほしいと言われるが……。 作中に差し挟まれる、dadadadadadaという奇妙なリズムが意味するものとは? 装丁:川名潤 |
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