宇佐美まことさん〈慟哭と郷愁〉のミステリ『その時鐘は鳴り響く』が刊行
『愚者の毒』『展望塔のラプンツェル』などの話題作で注目を集める、日本推理作家協会賞受賞作家・宇佐美まことさんの長編ミステリ『その時鐘は鳴り響く』が東京創元社より刊行されました。
過去と現在が交錯する時明かされる、驚愕の真相とは?
物語は赤羽での殺害現場から始まります。六十代と思われる身なりの良い男性が刺殺体で見つかりました。事件の捜査を担当するのは、赤羽署の刑事である黒光亜樹(くろみつ・あき)と、本庁から来た癖の強い先輩刑事の榎並(えなみ)。しかし捜査は難航し……。
このまま、刑事たちが殺人事件の犯人を追っていく警察ものになるかと思いきや、第三章で舞台が変わり、岡山の人材派遣会社で働く国見冴子(くにみ・さえこ)が視点人物となります。彼女は松山大学時代のサークル仲間から誘われ、愛媛県松山市にある母校に向かいます。所属していたマンドリンクラブが廃部となって十年以上が経ち、部室棟を立て直すことになったため、OB会のメンバーに部室の荷物を処分してほしいと大学側から依頼があったのです。
ところが部室に足を踏み入れると、五線譜の引かれた黒板には、誰かが最近書き残したと思しき「その時鐘は鳴り響く」の文字が。それを書いたのは、四年生の夏合宿で部員の篠塚瞳(しのづか・ひとみ)が事故死したことをきっかけに、失踪した仲間の高木圭一郎(たかぎ・けいいちろう)に違いないと冴子たちは考えました。しかし、今になっていったい何のために? 瞳の事故死との関係はあるのか……。
1994年に愛媛で起きた事故と、2024年に東京で起きた殺人事件。過去と現在が交錯する時、明らかになる悲しい真相とは?
日本推理作家協会賞受賞作家が新境地を切り開く、慟哭と郷愁のミステリです。
【あらすじ】
東京・赤羽の路上で資産家が殺害された。赤羽署初の女性刑事・黒光亜樹は、本庁から来た癖の強い先輩刑事とコンビを組まされ、彼と対立しながらも懸命に捜査を続けるが、なかなか容疑者は浮かんでこない。同じ頃、松山大学マンドリンクラブのOG・国見冴子は、仲間二人と母校の取り壊し予定の部室棟を訪れていた。すると部室の黒板に、三十年前に失踪したクラブのメンバー・高木圭一郎が最近書き残したと思しき「その時鐘は鳴り響く」を見つけて驚く。それは四年生の夏合宿で事故死した篠塚瞳を含め、五人の間で頻繁に言い交わしていた言葉だった。瞳の死後に失踪した高木は、なぜ今になって部室を訪れ、この言葉を残したのか? 冴子たちは当時の事故について調べ始めるが……。
著者プロフィール
宇佐美まこと(うさみ・まこと)さんは、1957年生まれ、愛媛県出身。2006年「るんびにの子供」で第1回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞し、2007年に同作を表題作とした短編集でデビュー。
2017年『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2019年刊行の『展望塔のラプンツェル』が「本の雑誌が選ぶ2019年度ベスト10」第1位になり、第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2020年『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。
その他の著書に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『ドラゴンズ・タン』『月の光の届く距離』『逆転のバラッド』『鳥啼き魚の目は泪』、地味で平凡な主婦×キャバクラ嬢〈異色バディ〉のノンストップ逃走劇『誰かがジョーカーをひく』などがある。
その時鐘は鳴り響く 宇佐美 まこと (著) 愛媛で起きた学生の事故死と、 強い絆で結ばれていたふたりの音楽仲間。 日本推理作家協会賞受賞作家の新境地、慟哭と郷愁のミステリ 装画:わじまやさほ |
【関連】
▼試し読み|その時鐘は鳴り響く
◆直木賞作家・千早茜さんが紡ぐ、10の夜の物語『眠れない夜のために』が刊行 挿絵は西淑さん | 本のページ
◆五木寛之さん初のテーマ別作品集〈五木寛之セレクション〉第5弾『恋愛小説集』が刊行 | 本のページ
◆「現代の日本は、日蓮が生きた時代と酷似している!」童門冬二さん「国僧日蓮」が『小説 日蓮』全1巻として復刊 | 本のページ
◆【第31回電撃大賞】電磁幽体さん「妖精の物理学―PHysics PHenomenon PHantom―」が大賞を受賞 | 本のページ