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君嶋彼方さん第12回「小説 野性時代 新人賞」受賞作『君の顔では泣けない』が文庫化

君嶋彼方さん著『君の顔では泣けない』(角川文庫)

君嶋彼方さん著『君の顔では泣けない』(角川文庫)

2021年に圧倒的リアリティを激賞された君嶋彼方さんの第12回「小説 野性時代 新人賞」受賞作『君の顔では泣けない』(「水平線は回転する」を改題)が文庫化され、角川文庫より刊行されました。

 

同級生と身体が入れ替わって、元に戻れないまま15年が過ぎた。家族も友達もだまし続けて、たったふたり、支え合って生きてきた。

 
【あらすじ】

高校1年生の坂平陸は、ある日突然クラスメイトの水村まなみと体が入れ替わってしまう。どうやら一緒にプールに落ちたことがきっかけのようだ。突然のことに驚き、戸惑いながらも入れ替わったことはお互いだけの秘密にしようと決めた2人。

しかし意外やそつなく坂平陸として立ち振る舞うまなみに対し、陸はうまく水村まなみとして振る舞えず、落ち込む日々が続く。まなみの家族との距離感、今まで話したこともなかったまなみの友達との会話、部活の顧問からのセクハラ……15年間、男子として生きてきた自分が、他人の人生を背負い女性として生きること。いつか元に戻れる日を諦めきれないまま、それでも陸は高校を卒業し上京、そして結婚、出産と、水村まなみとしての人生を歩んでいくことになる――

入れ替わった後の15年を圧倒的なリアリティで描く、第12回〈小説 野性時代 新人賞〉受賞作!

 
<「第12回 小説 野性時代 新人賞」選評より(抜粋)>

「読み終わった瞬間、今回はこの作品を受賞作として推すために選考会に臨もう、と強く心に決めました。(中略)リアリティのある「他者との入れ替わり」の物語でありながら、細部に宿る描写のひとつひとつの奥に、たとえ体が入れ替わらなくても、私たちが普段少しずつ感じている「自分という存在」への違和感や生きにくさに通じる感覚があり、「入れ替わり」はそれを可視化する装置に過ぎないのだと感じました。その点がとても現代的かつ普遍的。作品全体に通底しているのは、たとえ、元は自分の人生であったとしても、それさえ、「他者の人生を尊重する」という主人公たちの、ひいては著者の誠実な願いではないかと思います。作中のような運命でなくとも、選べない運命や人生と格闘する、そんな私たち読者に対するエールのようにも読め、この作品を世に送り出せることが心から嬉しいです」
── 辻村深月さん

「現代のジェンダー議論を余すところなく受け取り、あるいは抵触するところを上手に切り分け、かつ全てを登場人物の個性や、個人的な人生の選択としてとらえなおしたところに、高い筆力だけでなく書き手の精神的成熟、また現代に適した眼差しを感じさせられる」
── 冲方丁さん

「自分の身体を受け容れていくむずかしさや、家族同士のコミュニケーションのむずかしさ、実存的な不安など、我々が生きていくにあたってぶつかるさまざまな問題を、新鮮なかたちで浮き彫りにしている」
── 森見登美彦さん

 

著者プロフィール

君嶋彼方(きみじま・かなた)さんは、1989年生まれ。東京都出身。2021年「水平線は回転する」で第12回 小説 野性時代 新人賞を受賞、同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。

他の著作に『夜がうたた寝してる間に』『一番の恋人』がある。

 

君の顔では泣けない (角川文庫)
君嶋 彼方 (著)

これぞ入れ替わりの真骨頂!圧倒的リアリティを激賞された受賞作、文庫化!

 
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