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桜井真城さん「第18回小説現代長編新人賞」受賞作『雪渡の黒つぐみ』が刊行

第18回小説現代長編新人賞を受賞した桜井真城さんの「転びて神は、眼の中に」が書籍化され、『雪渡の黒つぐみ』として講談社より刊行されました。

 

選考委員大絶賛の本格忍者スパイ小説!

本作は、選評では

「イチオシの「○」」(塩田武士さん)、
「一読して、ほかの候補作からは抜きんでている印象を持ちました」(中島京子さん)、
「総合点の高い作品」(凪良ゆうさん)、
「最大の特徴は作中人物たちの喋る方言」(宮内悠介さん)、
「エンターテインメントのツボをきちんとおさえた力作」(薬丸岳さん)

と、選考委員5氏が異口同音に絶賛した本格忍者スパイ小説です。

 
【あらすじ】

「この忍者、手裏剣も吹き矢も使わない!?」

伴天連教迫害が進む1625年。
東北では過激な新興宗教・大眼宗の台頭に、隣国との領地争いと、いくつもの火種が燻っていた。

南部藩の若き忍者・景信は、この世でただ一人の“声色使い”。
どんな声も完璧に真似できる唯一無二の喉を使えば、無数の敵も指一本触れず制圧することができる。

隣国・伊達藩の動向を探る命を受け、諜報活動に挑む景信が目にしたのは信仰にすがる声なき人々と、闇に身を潜める邪教の黒い陰謀。

背負わされた十字架、お上の掌返し、見ぬふりをされる人々の思い。
いま、この時代にこそ突き刺さる、驚愕の時代エンターテインメント!

 

桜井真城さん「受賞の言葉」より

この度は、第18回小説現代長編新人賞をいただきまして、誠にありがとうございます。

新人賞の中でも権威と実績のある素晴らしい賞を頂戴した喜びと、果たして私の作品でいいのだろうかという畏敬の念との間で、感情の振子が日々、行ったり来たりしております。

受賞の連絡をいただいたのは、仕事帰りの最寄り駅ででした。改札を抜けながら応対したスマホから、「受賞されました」と聞き取れた時には、叫び声を上げそうになりました。駅の階段をどうやって降りたのか、まったく記憶にありません。

今回、受賞した作品は、江戸時代初期の奥州を舞台にした時代小説です。主人公は、間盗役と呼ばれる南部領の間者ですが、ステレオタイプの「忍者」ではありません。彼は、自分の弱さを知っていて、それを曝け出すことを恐れないし、弱者の立場を理解しようとする。当時の時代感覚で、こんなに人間的な忍者は、まずいないと思います。それでも、あえて主人公に設定したのは、冷酷無比で完全無欠な者が手にする強さではなく、弱きを知る者の内面に起因する強さを描きたいと考えたからです。

私は普段、仕事や育児の合間を縫って執筆を行うので、せめて小説を書いている時間は、楽しい気持ちでありたいと考えてきました。読者の皆様も、同じように日常生活の合間を縫って本を読む方が多いでしょう。様々な娯楽コンテンツが溢れる昨今、自身の大切な時間とエネルギーを読書に費やしてくださるなら、せめて本を読んでいる時間は至福であって欲しいと願います。これまでは、面白いものを書きたい一心で乱筆を走らせてきましたが、これからは、面白さの上に、深みや重みといった要素を一段でも二段でも積み重ねていけるよう、精進し続けてまいります。

最後になりますが、下読みしてくださった編集部の皆様、最終選考で読んでくださった選考委員の皆様、心より感謝御礼申し上げます。入学したての小説家1年生ですが、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 

著者プロフィール

桜井真城さん

桜井真城さん

桜井真城(さくらい・まき)さんは、1979年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学法学部卒業後、会社員生活の傍ら小説を書き始める。

出産・育児のため一時中断していた執筆を久しぶりに再開して書き上げた「転びて神は、眼の中に」(刊行時『雪渡の黒つぐみ』に改題)が第18回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。

 

雪渡の黒つぐみ
桜井 真城 (著)

日本文学史上、最も「優しくて強い」武器を持つ忍びがおくる、驚愕必至の時代・エンターテインメント!

 


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