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【第18回小説現代長編新人賞】桜井真城さん「転びて神は、眼の中に」が受賞

「第18回小説現代長編新人賞の決定発表が掲載されている「小説現代」3月号

「第18回小説現代長編新人賞の決定発表が掲載されている「小説現代」3月号

講談社が主催し、塩田武士さん、中島京子さん、凪良ゆうさん、宮内悠介さん、薬丸岳さんが選考委員を務めた、公募の新人文学賞「第18回小説現代長編新人賞」の受賞作が決定しました。

 

第18回小説現代長編新人賞受賞作決定! 選考委員大絶賛の本格忍者スパイ小説!

第18回小説現代長編新人賞は、2023年7月31日の〆切までに、郵送とWebであわせて1163編の応募がありました。

138編が1次選考を通過し、さらに2次選考の結果14編が3次選考へ進み、最終候補に5作品が選ばれ、塩田武士さん、中島京子さん、凪良ゆうさん、宮内悠介さん、薬丸岳さんの5名の選考委員による選考の結果、桜井真城さんの「転びて神は、眼の中に」が大賞に選出されました。受賞作は6月、タイトルを変更の上、講談社より単行本として発売され、贈賞式も同時期に開催予定です。

 
選評では
「イチオシの「○」」(塩田武士さん)、
「一読して、ほかの候補作からは抜きんでている印象を持ちました」(中島京子さん)、
「総合点の高い作品」(凪良ゆうさん)、
「最大の特徴は作中人物たちの喋る方言」(宮内悠介さん)、
「エンターテインメントのツボをきちんとおさえた力作」(薬丸岳さん)
…と、選考委員5氏が異口同音に絶賛。選評および受賞の言葉は、発売中の小説現代3月号に収録されています。

 
<受賞者プロフィール>

桜井真城(さくらい・まき)さんは、1979年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学法学部卒業後、会社員生活の傍ら小説を書き始める。受賞作は出産・育児のため一時中断していた執筆を久しぶりに再開して書き上げた。

受賞者の桜井真城さん

受賞者の桜井真城さん

 

桜井真城さん 受賞の言葉

この度は、第18回小説現代長編新人賞をいただきまして、誠にありがとうございます。

新人賞の中でも権威と実績のある素晴らしい賞を頂戴した喜びと、果たして私の作品でいいのだろうかという畏敬の念との間で、感情の振子が日々、行ったり来たりしております。

受賞の連絡をいただいたのは、仕事帰りの最寄り駅ででした。改札を抜けながら応対したスマホから、「受賞されました」と聞き取れた時には、叫び声を上げそうになりました。駅の階段をどうやって降りたのか、まったく記憶にありません。

今回、受賞した作品は、江戸時代初期の奥州を舞台にした時代小説です。主人公は、間盗役と呼ばれる南部領の間者ですが、ステレオタイプの「忍者」ではありません。彼は、自分の弱さを知っていて、それを曝け出すことを恐れないし、弱者の立場を理解しようとする。当時の時代感覚で、こんなに人間的な忍者は、まずいないと思います。それでも、あえて主人公に設定したのは、冷酷無比で完全無欠な者が手にする強さではなく、弱きを知る者の内面に起因する強さを描きたいと考えたからです。

私は普段、仕事や育児の合間を縫って執筆を行うので、せめて小説を書いている時間は、楽しい気持ちでありたいと考えてきました。読者の皆様も、同じように日常生活の合間を縫って本を読む方が多いでしょう。様々な娯楽コンテンツが溢れる昨今、自身の大切な時間とエネルギーを読書に費やしてくださるなら、せめて本を読んでいる時間は至福であって欲しいと願います。これまでは、面白いものを書きたい一心で乱筆を走らせてきましたが、これからは、面白さの上に、深みや重みといった要素を一段でも二段でも積み重ねていけるよう、精進し続けてまいります。

最後になりますが、下読みしてくださった編集部の皆様、最終選考で読んでくださった選考委員の皆様、心より感謝御礼申し上げます。入学したての小説家1年生ですが、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 

受賞作「転びて神は、眼の中に」あらすじ

幕府による伴天連弾圧が進む1625年、奥州。七色の声をあやつる十七歳の望月景信は、南部藩の忍衆・間盗役の一員として伊達藩の忍・黒脛巾組の動向を探っていた。禁教とされる伴天連宗だけでなく、新興宗教「大眼宗」も台頭する東北は、国同士の領地争いも加わり各勢力が複雑に絡み合う危険地帯となっていた。

南部藩に潜入していた女忍者・紫野を寝返らせることに成功し、彼女の悲しい生い立ちに思わず心を寄せる景信だったが、伊達藩の狙いを聞き出す前に紫野が何者かに殺されてしまう。下手人の疑いがかかり追われる身となった景信は、助っ人の豆助とともに伴天連宗徒たちが隠れ住む白根金山へ身を寄せることに。殺された紫野は黒脛巾組の命を受け、この地で伴天連宗の洗礼を受ける手筈になっていたという。

白根金山では世の理不尽に声を上げることも叶わない者たちが祈りを捧げながらひっそりと暮らしていた。敬虔な伴天連宗徒でもある金山の親方にかくまわれた二人は、横手城襲撃に隠された秘密に近づいていく。一方、調査の過程で麓の花街に出向いた景信は、父親が大眼宗の教祖・厳中とともに失踪し、天涯孤独になった遊女・鈴音に出会う。自分のせいで死なせてしまった紫野の面影を見た彼は、鈴音を遊郭から連れ出し、ともに厳中の行方を追うことを決意する。

雪で覆われた山を越え、真相に近づく一行。しかし宿敵は音もなく彼らの背後へと忍び寄っていた。目の前の人物は果たして敵か、味方か? 謎に包まれた厳中の正体とは? そこには国を揺るがす大きな陰謀が隠されていた──。

 

小説現代 2024年 03 月号
講談社 (編集)

<特集「再発見! 日本 こんなに面白い伝統芸能」>

豪華対談
松本幸四郎×永井紗耶子
「きらんと光る!? 江戸時代が生んだクリエイターの魅力に迫る」
永井紗耶子さんの直木賞受賞第一作『きらん風月』の主人公・栗杖亭鬼卵とはどんな人?
いま、歌舞伎の世界でもっとも鬼卵を知る松本幸四郎さんと、その魅力を語りつくします。

尾上松也×今村翔吾
「同世代対談 令和を背負う二人の竜馬がゆく」
歌舞伎と小説の世界で活躍する二人は、現在39歳の同級生。本業の傍らプロデュース業など人と人を結び付けて様々なことに挑戦を続ける二人に、40目前の「今」を熱く語っていただきました!

鶴澤寛太郎×三浦しをん
「知れば知るほど面白い! 日本が誇る人形浄瑠璃の世界」
太夫・三味線弾き・人形遣いの「三業」から構成される日本固有の伝統芸能・人形浄瑠璃。その味わい深き魅力について、親交の深いお二人に縦横無尽に語っていただきました。

伝統芸能の世界を描く短篇小説
坂井希久子 浅草名物 浅草観音裏小路(2)

砂原浩太朗 華の面

永井紗耶子 きらん一幕

永井紗耶子 インタビュー

特別寄稿
夢枕獏 「夢枕獏版 怪談・牡丹灯籠」を振り返って
    古典はいつの時代でも最新の高出力エンジンである

柳亭小痴楽 初小説 粗忽一家

<全編公開>
『流氷の果て』一雫ライオン
本誌初登場!『二人の嘘』で日本中の心を震わせた著者待望の新作は、平成期の東京で起こった難事件を追跡するエモーショナル・ミステリー!

『流氷の果て』一挙掲載記念特別掲載記念寄稿 「端っこの意地」一雫ライオン
書評 内田剛

<読み切り>
三浦しをん はらから

上村裕香 生きていけんの

<特別企画>
柴田勝家 銃口は烟り
テレビアニメ「メタリックルージュ」絶賛放送中! SF作家・柴田勝家が描くスピンオフ連載第2弾。凸凹刑事コンビ・アッシュとノイドの波瀾に満ちた初捜査の行く末は。

<コラム>
宮田愛萌 ねてもさめても本のなか 
〆切めし 外山 薫
武田砂鉄 もう忘れてませんか? 

<漫画>
意志強ナツ子 るなしい

<本>
書評現代
ミステリー 青戸しの
青春・恋愛小説 三宅香帆
時代小説 田口幹人
エッセイ・ノンフィクション 高橋ユキ
 読書中毒日記 アユニ・D
 今月の平台

第18回小説現代長編新人賞発表
第19回小説現代長編新人賞募集
第71回江戸川乱歩賞募集
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