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ロス・トーマス『愚者の街』が「ミステリが読みたい! 2024年版」年間ランキング・海外篇で第1位を獲得!

新潮文庫より刊行中のロス・トーマス著『愚者の街(上・下)』(訳:松本剛史さん)が、『ミステリマガジン』2024年1月号特集「ミステリが読みたい! 2024年版」年間ランキング・海外篇にて、第1位に選ばれました。
なお、同作品には、原尞さんによる作家論「ロス・トーマスの魅力」を収載しています。

 
「街を丸ごとひとつ腐らせてほしい」――諜報員としての任務の過程で何者かの策略により投獄され失職したダイに持ち込まれたのは、不正と暴力で腐敗したスワンカートンの街を再生させるための突拍子もない計画でした。1937年の上海爆撃で父親を失いながらも、娼館のロシア人女性に拾われ生きのび、度重なる不運から心に虚無を抱えるダイは、この無謀な計略に身を投じることになります。元悪徳警官、元娼婦という仲間を用意された元秘密諜報員は、あの手この手を使って、街の再生計画を進めていきますが……。

 
複雑なプロット、一癖も二癖もある魅力的な登場人物たちが持ち味とされる作家ロス・トーマス。クライム・ノヴェルの傑作『女刑事の死』で知られ、二度のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞に輝く犯罪小説の巨匠が1970年に発表した本作は、一人の男の数奇な運命を綴った壮大なるサーガにしてコンゲーム要素に溢れた、暴力と騙りの重厚なる狂騒曲。間違いなく初期の最高傑作と言っていいでしょう。

 
今年5月に逝去したハードボイルド作家・原尞さんが愛してやまなかった曲者作家の埋もれていた名作が、このたび、『ミステリマガジン』2024年1月号特集「ミステリが読みたい! 2024年版」年間ランキング・海外篇にて、堂々の第1位に選ばれました。この機会に、濃密なる”悪の神話”をお楽しみください。

 
<ロス・トーマスに寄せられた賛辞>

ロス・トーマスは、何度読んでも楽しめるサスペンス小説の作家という、稀有な存在である。
――〈エリック・アンブラー〉

ロス・トーマスの書く小説はどれも面白く、明晰で巧みだ。グロテスクなもの、ムードづくり、アクション・シーンのどれをとっても、現存するどの作家よりうまく描くことができる。
――〈ジョン・D・マクドナルド〉

 

愚者の街(上) (新潮文庫)
ロス・トーマス (著), 松本 剛史 (翻訳)

壮絶な過去をもつ元スパイに託された仕事は、腐敗した街をさらに腐敗させること――。

生まれ落ちたときに母を亡くし、その後は父と二人で上海に渡ったダイ。南京路で爆撃に遭い、気づくと手をつないでいた父親は腕だけになっていた……。娼館のロシア人女性に拾われ、娼婦たちから様々な言葉や文化を学びながら生きのびて成人したダイは、やがて「セクション2」と呼ばれる米国秘密情報部でエージェントとしての活動に従事する。だが、何者かに陥れられて投獄され、情報部からも解雇。彼の出獄を待っていたのは、腐敗した南部の小さな街をさらに腐敗させ再興させるという突拍子もない仕事だった――。一人の男の数奇な運命を綴った壮大なるサーガにして、壮絶なる暴力と騙し合いの狂騒曲。二度のMWA賞に輝くクライム・ノヴェルの巨匠畢生の大作、ついに本邦初登場。

愚者の街(下) (新潮文庫)
ロス・トーマス (著), 松本 剛史 (翻訳)

予測不可能な悪党どもの騙し合い。
巨匠による最高傑作、ついにクライマックスへ!

暴行され惨殺された妻、そして義父の死の苦い記憶を拭えないまま、天才的な頭脳の持ち主オーカットによる南部の小都市スワンカートン再生計画に加わったダイ。元市警察署長ホーマー、元娼婦のキャロルという奇妙な仲間との計画は、味方側の不正事実を洩らすことで敵側の信用を勝ち取って懐に入り込むというアクロバティカルなものだった。やがて不正や過去の罪をネタに警察署長、風紀犯罪取締班班長を次々と失脚させ、弱体化したスワンカートンの街には各地のマフィアの親玉たちが群がることに。かくして悪党どもの共食いがはじまり、その先にダイたちが描いていたものとは――? 複雑に展開するプロット、一癖も二癖もある魅力的な登場人物たちが読者をとらえて離さない、クライム・ノヴェルの巨匠の最高傑作が、ついにクライマックスを迎える。
原尞による作家論「ロス・トーマスの魅力」を採録。

 
【関連】
試し読み | ロス・トーマス、松本剛史/訳 『愚者の街〔上〕』 | 新潮社

 


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