85歳・養老孟司さん〈「賢人と語る」シリーズ〉『老い方、死に方』が刊行
3年前に心筋梗塞で入院し、愛猫「まる」の死を経験した養老孟司さんが識者4人と対談し、「老いと死」について独自の視点を示す『老い方、死に方』がPHP研究所より刊行されました。
心筋梗塞・愛猫との別れを経て、養老孟司さんが見つめる「老いの壁」
高齢者を取り巻く環境は、この数十年で大きく変化しました。平均寿命の伸長、未婚率の上昇などが「孤独な老人」の増加や、日本社会の深刻な高齢化などを引き起こしています。このような背景から、老後の「先行きがみえない」という不安感は、以前よりも強まっています。
著者の養老孟司さんもまた、26年ぶりに訪れた病院で心筋梗塞がわかり入院、愛猫「まる」も天国へ旅立つなど、80代半ばを迎え、「老いと死」に直面しています。
そんな養老さんが、本書では4人の識者との対談を通じて老いや死の不安をほぐす知恵を説きます。
《80代も半ばを越えたので、私は老いの途上、真っただ中にあり、死も間もないに違いない。編集者はそういう相手に老い方、死に方を考えさせる。それはないだろうという気もしないでもない。ただいま実行中、ご覧あれ、というしかないではないか。》
(本書「はじめに」より)
阿川佐和子さんら4人の識者と対談
本書で養老孟司さんが対談したのは、南直哉さん、小林武彦さん、藻谷浩介さん、阿川佐和子さんの識者4人です。
対話を通して、養老さん自身の体験や考えに触れながら、人生の意味や死の受け入れ方について新たな洞察が得られる内容となっています。
◆「自己を開くことを繰り返していけば、自ずと死を迎えるための練習にもなるのではないかなという気がするんですね」
(南直哉さん)
◆「DNAの修復能力は『寿命の壁』を突破する一つのカギだと考えています」
(小林武彦さん)
◆「都会の高齢者ほど、老後の生活に必要なのは『お金』だけだと思い込んでいます。『自然資本』や『人的資本』に目が行かないのですね」
(藻谷浩介さん)
◆「(母の)認知症がだいぶ進んでからは、母が頭のなかで思い描く世界に一緒に乗ることにしました。そのほうが介護する側も、される側もおもしろいし、イライラしないし」
(阿川佐和子さん)
◆「自分のことなんか、人に理解されなくて当たり前と思ってりゃいい」
(養老孟司さん)
本書の構成
第1章 南直哉(禅僧・『超越と実存』著者)……自己を広げる練習
第2章 小林武彦(東京大学教授・『生物はなぜ死ぬのか』著者) ……ヒトはなぜ老いるのか
第3章 藻谷浩介(地域エコノミスト・『里山資本主義』著者) ……高齢化社会の生き方は地方に学べ
第4章 阿川佐和子(作家・エッセイスト・『聞く力』著者) ……介護社会を明るく生きる
著者プロフィール
養老孟司(ようろう・たけし)さんは、1937年生まれ、鎌倉市出身。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年、東京大学医学部教授を退官し、同大学名誉教授に。
1989年『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞を受賞。著書に『唯脳論』(青土社・ちくま学芸文庫)、『バカの壁』『超バカの壁』『「自分」の壁』『遺言。』『ヒトの壁』(以上、新潮新書)など多数。累計20万部突破した「養老孟司、賢人と語る」シリーズに『日本のリアル』『文系の壁』『AIの壁』『子どもが心配』(以上、PHP新書)がある。
老い方、死に方 (PHP新書) 養老 孟司 (著) 寿命を延ばすカギとなる遺伝子とは? 老後は都会よりも田舎のほうが豊かに過ごせるのはなぜ? 介護生活を明るく過ごすコツとは? 禅僧が語る「死を迎える練習」とは? 85歳の養老孟司が、生物学者小林武彦、地域エコノミスト藻谷浩介、小説家・エッセイスト阿川佐和子、禅僧南直哉と、老い方死に方をじっくり語り合う。 |
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