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最愛の夫ピート・ハミルをなくして――青木冨貴子さん『アローン・アゲイン』が刊行

一足先に旅立ったパートナーへの想いを綴った感動の手記、青木冨貴子さん著『アローン・アゲイン 最愛の夫ピート・ハミルをなくして』が新潮社より刊行されました。

 

“結婚しない女”と呼ばれたわたしが一緒になったのは、ニューヨークでも有名な作家で、陽気なプレイボーイでした――。

高倉健さんが主演を務めた映画「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」(1977年)の原作者としてひろく知られ、アメリカではリベラル派の先陣を切るジャーナリストとして、またコラムニスト、小説家として一世を風靡したピート・ハミル。多くの浮名を流したことでも有名で、陽気でハンサムなプレイボーイでした。

 
そんなピートが結婚相手として選んだのは日本人の女性。13歳年下、「ニューズウィーク日本版」創刊時にニューヨーク支局長を務めた青木冨貴子さんは、大恋愛の末、33年間の結婚生活を通して夫の創作活動を献身的に支え続けます。

 
一足先に旅立った夫の記憶を抱きしめながらも、いつものように暮らし仕事をして、「ふたたび一人」になったことをしっかり受け止めようとしている現在。その心の内に生まれた「穏やかな覚悟」とは――。かけがえのない夫婦の絆について、妻の視点から情緒たっぷりに書き下ろした感動の手記です。

 
<推薦コメント>

孤独とは、一人で生きていく覚悟である。
途方もない喪失感を抱えながらも、日常へ戻ろうと藻掻く姿に心を打たれる。
――下重暁子さん

寂しくなったとき、泣きたくなったとき、心が殺伐としてきたとき、この本を読むと、まるで暖炉に手を当てたときのようにほっこりと、温まる。必ず温まる。
――阿川佐和子さん

 
【書籍内容紹介】

何をみてもあなたを思い出す。眼差しや仕草、出会った日から最期の表情まで――その記憶を抱きしめながら、わたしは「ふたたび一人」で生きていく。パートナーを看取った後の穏やかな覚悟を心の筆で書き留めた手記。

 

本文「アイ・ラブ・ユー」より一部抜粋

その頃のわたしは日に日に衰えていくピートを見ながら、いつ、いったいどうやって最後の時を迎えることになるのだろうかと思案していた。いくら考えてもわかるはずがないのだが、いつもそのことが気になって頭から離れなかった。

病院へ送っていった帰り、ひとりでバスに乗っていると無性に哀しくなって涙が止まらなくなった。

「ふたりでいろいろやり遂げたね」

ピートはふとこんなことを口にすることもあった。

氷をたっぷり入れたグラスを倒してしまい、わたしが床を拭いていると、「アイム・ソーリー、アイム・ソーリー」と何回も、何回も繰り返した。そんなに謝らなくても良いのに……とかえって哀しくなった。

わたしたちは長いあいだ「見つめ合う」ことが増えてきた。カウチに座るピートに目を向けると、彼がわたしのことを見ている。わたしも彼から目が離せなくなって、じっと彼の目を見つめる。それも数分間ほど黙って目を合わせている。後から思えば、あの時、ピートは別れを惜しんでいたのだった。

そして、その日は思わぬ形で訪れた。

 

本書の目次

何を見てもあなたを思い出す

ピート・ハミル通り

大地が動いた

君がニューヨークに来るなんて

ぼくの家へ行こう

靴底に開いた大きな穴

伝説のチェルシー・ホテル

ニューヨーク・スケッチブック

ハミル家のクリスマス

別れの予感

思いがけない手紙

一生、君に誠実であることを誓う

運命の地メキシコ

「もう、寂しくないね」

闘う編集長

ドリンキング・ライフに別れを告げて

灰になったコレクション

ダイエット大作戦

コロナ狂騒曲

最後の誕生日パーティー

「アイ・ラヴ・ユー」

アローン・アゲイン

 

著者プロフィール

青木冨貴子(あおき・ふきこ)さんは、1948(昭和23)年生まれ、東京都出身。作家。1984年渡米し、「ニューズウィーク日本版」ニューヨーク支局長を3年間務める。1987年作家のピート・ハミルと結婚。

著書に『ライカでグッドバイ──カメラマン沢田教一が撃たれた日』『たまらなく日本人』『ニューヨーカーズ』『目撃アメリカ崩壊』『731─石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く─』『昭和天皇とワシントンを結んだ男──「パケナム日記」が語る日本占領』『GHQと戦った女沢田美喜』など。ニューヨーク在住。

 

アローン・アゲイン:最愛の夫ピート・ハミルをなくして
青木 冨貴子 (著)

もう、あなたはいない――パートナー喪失後の穏やかな覚悟を綴る感動の手記
“結婚しない女”と呼ばれたわたしが一緒になったのは、ニューヨークでも有名な作家で、プレイボーイ――。山あり谷ありの幸せな33年間を経て、「ふたたび一人」で生きていく。その声や仕草、におい、運命的な出会いから最期の表情まで、一足先に旅立ってしまった彼の記憶を抱きしめながら。心の筆で書き留めたエッセイ。

 


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