寺地はるなさん〈サスペンス長篇〉『わたしたちに翼はいらない』が刊行
『川のほとりに立つ者は』で2023年本屋大賞にノミネートされた著者・寺地はるなさんによる、サスペンス長篇小説『わたしたちに翼はいらない』が新潮社より刊行されました。
人間のドス黒い部分を描く「黒テラチ」の真骨頂!『わたしたちに翼はいらない』
本書の主人公は、「いじめ」「夫によるモラハラ」「毒母からの圧」「ママ友マウント」などで心に傷を追った三人の男女です。
幼少時の辛い記憶が残っているのに、いまだ生まれ育った地方都市で暮らす彼らの積み重なった心の傷はやがて……。本書はまさに「心の傷が産んだサスペンス」です。
寺地はるなさん自身、「これほど精神的肉体的に消耗する連載は初めてで、悩みまくりながら書いた、わたしにとって大事な作品」と語るほどに全力を注いだ作品です。
「他人を殺す。自分を殺す。どちらにしても、その一歩を踏み出すのは意外とたやすい」と感じさせる本書に、窪美澄さんと前田敦子さんから感動の声が、寄せられています。
◇窪美澄さん(直木賞作家)
読み終えて、大きな赦しをこの物語からもらったような気がした。
◇前田敦子さん(女優)
心に隙間ができた時、人は人に依存しかねない。
でも、この小説は「誰でもそうだよ」と、
安心と救いをくれました。
【あらすじ】
同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。
4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。
朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。
マンション管理会社勤務の独身――園田。
いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。
「寺地さんが本作で一番気付いたこと、そして、タイトルに込めた想いとは」著者コメント
本作には、いじめ、モラハラ、ママ友マウント、親からの圧など、現代日本に根付く様々な問題が描かれています。主人公の3人はそれぞれ過去に受けた傷を癒せないまま大人になり、そこから解放されていません。
いじめられていた、友達がたくさんいたなど理由は様々でも、人生のたった数年間にすぎない学生時代の出来事をひきずっている人が意外に多いと、私自身、ずっと感じていました。けど、人間関係はいつまでも一定の均衡を保つわけではなく、いつか必ず変わります。私は本作を執筆しながらそのことに気付きました。
美辞麗句が溢れポジティブ思考がもてはやされる社会だけれども、「昔のことだよね」「謝ったよね」「私たちには翼があって新しい未来に羽ばたけるよ」というきれいごとで終わらせなくてもいいと、「過ぎたことでも許せないことは許さなくていいし、忘れたくないことは忘れなくていい」と私だけは強く訴えたくて、このタイトルをつけました。
「友達は大事な存在だから、いなきゃいけない」という言葉にストレスを感じる人たちに、「友達は少なくても、いなくてもいいんじゃない」ということを伝えたいです。終盤で、「友達じゃない」という台詞があるのですが、その場面が私は一番好きなんです。色々抱えていた彼らがどうしてそういう台詞を発するに至ったかを、本作を通じて感じていただけるとうれしいです。
著者プロフィール
著者の寺地はるな(てらち・はるな)さんは、1977年生まれ、佐賀県出身。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。
2020年『夜が暗いとはかぎらない』で第33回山本周五郎賞候補。2021年、『水を縫う』が第42回吉川英治文学新人賞候補作にノミネートされ、第9回河合隼雄物語賞を受賞。
『大人は泣かないと思っていた』『今日のハチミツ、あしたの私』『ほたるいしマジカルランド』『声の在りか』『雨夜の星たち』『夜が暗いとはかぎらない』『ガラスの海を渡る舟』『タイムマシンに乗れないぼくたち』『カレーの時間』『白ゆき紅ばら』など著書多数。
わたしたちに翼はいらない 寺地 はるな (著) 他人を殺す。自分を殺す。どちらにしても、その一歩を踏み出すのは、意外とたやすい。 【担当編集者より】 |
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