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第37回三島由紀夫賞・山本周五郎賞の候補作品が決定

新潮文芸振興会は4月19日、第37回三島由紀夫賞および第37回山本周五郎賞の候補作品を発表しました。

 

第37回三島由紀夫賞・山本周五郎賞 候補作品

第37回三島賞および山本賞の候補作品は次の通りです。

 
【第37回三島由紀夫賞 候補作品】

◎久栖博季(くず・ひろき)さん「ウミガメを砕く」(「新潮」2023年6月号掲載)

◎小砂川チト(こさがわ・ちと)さん『猿の戴冠式』(講談社)

◎鈴木涼美(すずき・すずみ)さん『YUKARI』(徳間書店)

◎大田ステファニー歓人((おおた・すてふぁにー・かんと))さん『みどりいせき』(集英社)

◎間宮改衣(まみや・かい)さん『ここはすべての夜明けまえ』(早川書房)

 
【第37回山本周五郎賞 候補作品】

◎小田雅久仁(おだ・まさくに)さん『禍』(新潮社)

◎青崎有吾(あおさき・ゆうご)さん『地雷グリコ』(KADOKAWA)

◎寺地はるな(てらち・はるな)さん『こまどりたちが歌うなら』(集英社)

◎葉真中顕(はまなか・あき)さん『鼓動』(光文社)

 
■選考委員

〔三島賞〕川上未映子さん、高橋源一郎さん、多和田葉子さん、中村文則さん、松家仁之さん

〔山本賞〕伊坂幸太郎さん、江國香織さん、小川哲さん、今野敏さん、三浦しをんさん

 
なお、最終選考会は5月16日(木)に開催されます。

 

三島由紀夫賞および山本周五郎賞について

三島由紀夫賞と山本周五郎賞はともに、新潮社が設立した「一般財団法人 新潮文芸振興会」が主催。

三島由紀夫賞は、作家・三島由紀夫の業績を記念し、1987年に創設。小説、評論、詩歌、戯曲を対象とし、「文学の前途を拓く新鋭の作品」に贈られる文学賞です。

山本周五郎賞は、大衆文学・時代小説の分野で昭和期に活躍した山本周五郎にちなみ、三島由紀夫賞とともに創設。「すぐれて物語性を有する新しい文芸作品」に贈られる文学賞です。一応、対象となるのは「小説」となっていますが、それ以外の分野でも対象となる可能性があります。

両賞とも、前年4月1日より当年3月31日までに発表された作品が選考対象となります。

 

新潮2023年06月号
新潮編集部 (編集)

◆久栖博季「ウミガメを砕く」180枚 新潮新人賞受賞第一作
北海道が全停電した夜、わたしは剥製のウミガメを抱え、まっすぐな迷宮と化した公園を彷徨うーー。孤独な魂を描く気鋭渾身の一作。

猿の戴冠式
小砂川 チト (著)

第170回芥川龍之介賞候補作。

いい子のかんむりは/ヒトにもらうものでなく/自分で/自分に/さずけるもの。

ある事件以降、引きこもっていたしふみはテレビ画面のなかに「おねえちゃん」を見つけ動植物園へ行くことになる。言葉を機械学習させられた過去のある類人猿ボノボ”シネノ”と邂逅し、魂をシンクロさせ交歓していく。
――”わたしたちには、わたしたちだけに通じる最強のおまじないがある”。

”女がいますぐ剥ぎ取りたいと思っているものといえば、それは〈人間の女の皮〉にちがいなかった。女は人間の〈ふり〉をして、ガラスの向こう側にたっている”

”女とシネノは同じだった。シネノのほうはそのふるまいこそ完璧ではあったけれど、それでも猿の〈ふり〉をして、あるいは猿の〈姿をとって〉、こちら側にいる”

ねえ、なにもかもがいやなかんじなんでしょう。ちがう?

YUKARI
鈴木涼美 (著)

『ギフテッド』『トラディション』著者が描く、『源氏物語』を題材とした歌舞伎町文学の新境地。

三浦瑠麗氏推薦「与えたい女、奪う男――「多情」の心の裡がみごとに綴られている。」

【あらすじ】
婚約者との結婚を控え、何の不自由もなく暮らしていた紫。あるダンサーとの過ちを機に、高校時代に惹かれた柿本先生に手紙を出すことに。そこで綴られるのは、幾度となく先生が話してくれた『源氏物語』のことだったーー。

【本文より】
私はどれか一人の女ではない、また私と同じ店で働いてきた四十も五十もいる女たちがそれぞれいずれかの女性像に似ているのではないのです。お客が次々に女を変えて、多様な女たちが彼の夜の生活を彩るわけではない、私たちは一人であるのです。

みどりいせき
大田 ステファニー 歓人 (著)

【第47回すばる文学賞受賞作】
【選考委員激賞!】
私の中にある「小説」のイメージや定義を覆してくれた──金原ひとみさん
この青春小説の主役は、語り手でも登場人物でもなく生成されるバイブスそのもの──川上未映子さん
(選評より)

このままじゃ不登校んなるなぁと思いながら、僕は小学生の時にバッテリーを組んでた一個下の春と再会した。
そしたら一瞬にして、僕は怪しい闇バイトに巻き込まれ始めた……。
でも、見たり聞いたりした世界が全てじゃなくって、その裏には、というか普通の人が合わせるピントの外側にはまったく知らない世界がぼやけて広がってた──。

圧倒的中毒性! 超ド級のデビュー作!
ティーンたちの連帯と、不条理な世の中への抵抗を描く。

ここはすべての夜明けまえ
間宮 改衣 (著)

いやだったこと、いたかったこと、
しあわせだったこと、あいしたこと、
一生わすれたくないとねがったこと

◇老いない身体を手に入れた彼女の家族史

2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに父親から提案されたことだった。

かいていったらなっとくできるかな、わたしは人生をどうしようもなかったって。


小田 雅久仁 (著)

「俺はここにいると言ってるんだ。いないことになんかできねえよ」。恋人の百合子が失踪した。彼女が住むアパートを訪れた私は、〈隣人〉を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技〈耳もぐり〉とは、一体 (「耳もぐり」)。ほか、前作『残月記』で第43回吉川英治文学新人賞受賞&第43回SF大賞受賞を果たした著者による、恐怖と驚愕の到達点を見よ!

地雷グリコ
青崎 有吾 (著)

ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!

射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。

こまどりたちが歌うなら
寺地 はるな (著)

前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う”私たち”が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!

鼓動
葉真中顕 (著)

ホームレスの老女が殺され燃やされた。犯人草鹿秀郎はもう18年も引きこもった生活を送っていた。彼は父親も刺し殺したと自供する。長年引きこもった果てに残酷な方法で二人を殺した男の人生にいったい何があったのか。事件を追う刑事、奥貫綾乃は、殺された老女に自分の未来を重ねる。私もこんなふうに死ぬのかもしれない――。刑事と犯人、二つの孤独な魂が交錯する。困難な時代に生の意味を問う、感動の社会派ミステリー。

 


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