芥川賞&直木賞(2022年下半期)候補作が決定 芥川賞は4人、直木賞では2人が初ノミネート
日本文学振興会は12月16日、第168回芥川龍之介賞(2022年下半期)および第168回直木三十五賞(2022年下半期)の候補作品を発表しました。
芥川龍之介賞、直木三十五賞ともに、2023年1月19日に都内で選考委員会が開催され、それぞれ受賞作品が決定します。
第168回芥川賞 候補作について
第168回芥川賞の候補作は以下の5作品です。
【第168回芥川賞 候補作】
◎安堂ホセ(あんどう・ほせ)さん「ジャクソンひとり」(『文藝』冬季号)
◎井戸川射子(いどがわ・いこ)さん「この世の喜びよ」(『群像』7月号)
◎グレゴリー・ケズナジャットさん「開墾地」(『群像』11月号)
◎佐藤厚志(さとう・あつし)さん「荒地の家族」(『新潮』12月号)
◎鈴木涼美(すずき・すずみ)さん「グレイスレス」(『文學界』11月号)
今回、安堂ホセさん、井戸川射子さん、グレゴリー・ケズナジャットさん、佐藤厚志さんが初ノミネート。鈴木涼美さんは2回目のノミネートとなりました。また、アメリカ出身の作家(ケズナジャットさん)が候補に入るのは26年ぶりです。なお、安堂ホセさんの候補作「ジャクソンひとり」は第59回文藝賞を受賞したデビュー作でもあります。
第168回直木賞 候補作について
第168回直木賞の候補作は以下の5作品です。
【第168回直木賞 候補作】
◎一穂ミチ(いちほ・みち)さん『光のとこにいてね』(文藝春秋)
◎小川哲(おがわ・さとし)さん『地図と拳』(集英社)
◎雫井脩介(しずくい・しゅうすけ)さん『クロコダイル・ティアーズ』(文藝春秋)
◎千早茜(ちはや・あかね)さん『しろがねの葉』(新潮社)
◎凪良ゆう(なぎら・ゆう)さん『汝、星のごとく』(講談社)
今回、雫井脩介さんと凪良ゆうさんが初ノミネート。』。一穂ミチさんと小川哲さんは2度目、千早茜さんは、3度目のノミネートとなりました。なお、小川哲さんは候補作『地図と拳』で第13回山田風太郎賞を受賞しています。
芥川賞と直木賞について
芥川賞と直木賞は、1935(昭和10)年に制定され、芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られます。
芥川賞は主に無名・新進作家が、直木賞は無名・新進・中堅作家が対象となります。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が授与されます。
ジャクソンひとり 安堂 ホセ (著) 第59回文藝賞受賞 「実際に生きてるってこと。盗用したポルノごっこじゃなくて」 他者を個人として扱えば「はっきり敵とみなす勇気」が持てず、でも集団として見なせば容易に憎め、蔑め、殺すこともできる。 主人公たちの繊細な揺らぎを通して、私個人の記憶や感情を呼び起こされた。 からっと明るい文章の中には浸食するような絶望があって、苦しい気持ちにさせられる。偏見に鋭く切り込んだ内容もさることながら、その描き方も面白い。 凄い小説で、本読みに強くおすすめしたい。「今までこんな話読んだことなかった!」と、「なぜ今までこんな話を読むことができなかったのか(その理由の背景に自分もいるはずじゃないか)」という思いでぐるぐるになる。 読み手のまなざしのありようが鋭く問われる。素晴らしいデビュー作 この小説は確かに独自の景色を見せてくれる。 |
この世の喜びよ 井戸川 射子 (著) 思い出すことは、世界に出会い直すこと。 幼い娘たちとよく一緒に過ごしたショッピングセンター。喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。言葉にならない感情を呼び覚ましていく表題作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。 ほかに、ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦を描く「マイホーム」、父子連れのキャンプに叔父と参加した少年が主人公の「キャンプ」を収録。 二人の目にはきっと、あなたの知らない景色が広がっている。あなたは頷いた。こうして分からなかった言葉があっても、聞き返さないようになっていく。(本書より) |
荒地の家族 佐藤 厚志 (著) あの災厄から十年余り、男はその地を彷徨いつづけた。 |
グレイスレス 鈴木 涼美 (著) デビュー小説『ギフテッド』で芥川賞候補に選ばれた鈴木涼美の第二作。主人公は、アダルトビデオ業界で化粧師(メイク)として働く聖月(みづき)。彼女が祖母と共に暮らすのは、森の中に佇む、意匠を凝らした西洋建築の家である。まさに「聖と俗」と言える対極の世界を舞台に、「性と生」「生と死」のあわいを繊細に描いた新境地。 |
光のとこにいてね 一穂 ミチ (著) 『スモールワールズ』を超える、感動の最高傑作 たった1人の、運命に出会った 古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。 運命に導かれ、運命に引き裂かれる |
地図と拳 小川 哲 (著) 【第13回山田風太郎賞受賞作】 「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」 ひとつの都市が現われ、そして消えた。 |
クロコダイル・ティアーズ 雫井 脩介 (著) この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。 息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての交際相手。被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。犯人の一言で、のこされた家族の間に、疑念が広がってしまう。 「息子を殺したのは、あの子よ」 未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。 「家族というのは、『お互いに助け合って、仲睦まじく』といった一面が取りざたされることも多いですが、そうじゃない部分もあります。ある種の運命共同体であるからこそ、こうしてほしいという願望を押しつけあったり、求めあったりして、生きづらさも生んでしまう。だからこそ、ドラマが生まれる。家族が一枚岩になれないときに生ずる『心の行き違い』は、サスペンスにしかならない」(著者インタビューより) |
しろがねの葉 千早 茜 (著) 男たちは命を賭して穴を穿つ。 戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。 |
汝、星のごとく 凪良 ゆう (著) ――わたしは愛する男のために人生を誤りたい。 風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。 ――まともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。 |
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