【第13回辻静雄食文化賞】岩間一弘さん『中国料理の世界史』と日本調理科学会『全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理』が受賞
辻静雄食文化財団は5月26日、よりよい「食」を目指し、新しい世界を築き上げた作品や個人を顕彰する「第13回辻静雄食文化賞」の受賞作品・受賞者を発表しました。
「第13回辻静雄食文化賞」受賞作・受賞者
第13回辻静雄食文化賞の受賞作品・受賞者は次の通りです。
<第13回辻静雄食文化賞 受賞作品>
◎岩間一弘(いわま・かずひろ)さん
『中国料理の世界史―美食のナショナリズムをこえて』(慶應義塾大学出版会)
<受賞理由>
中国と世界の様々な場所を大きな視点でとらえ、近現代の中国における料理の変化とその世界的広まりを一望した野心的大作で、類書がない。中国語、英語、韓国語の近年の文献にも幅広く目配りしており、今後のこの分野の研究の進展への期待を抱かせる。
<作品について>
近現代の政治、経済、社会のうねりが中国の料理をいかに変化させたか、また国と国や地域の関係とそれに伴う人の移動を通して、中国料理がいかに世界に広まっていったかを総合的に叙述した作品。扱う地域は、シンガポール、マレーシア、ベトナム、韓国、インド、日本などアジア各国から、アメリカ、イギリス、フランスなど欧米各国、ペルー、ブラジルなど南米、オーストラリアまで広範囲に及ぶ。
◎企画・編集:一般社団法人 日本調理科学会
『全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理』全16巻(農山漁村文化協会)
<受賞理由>
このまま誰も記録しなければ失われてしまうものを残そうという、強い使命感に支えられた、大変貴重な仕事である。地方まで画一化が進む今日、食に見られる多様性を読者に訴えかけ、それを大切にしたいと感じさせる力を持つ、質の高い本づくりも評価したい。
<作品について>
「100年先もふるさとの味が残ってほしい」という思いから、2012年以降、日本調理科学会は家庭料理の全国的聞き書き調査を実施してきた。その研究の成果の中から、1960~70年代までに地域に定着していた家庭料理で、次世代にも作ってほしいと思う約1900品を選んだ。それらを「すし」「野菜のおかず」「行事食」など16のテーマに分け、実際に再現可能なレシピの形で収録したのが、カラービジュアル版の本シリーズである。
<第13回辻静雄食文化賞 専門技術者賞>
■リオネル・ベカ(Lionel Beccat)さん
「エスキス」エグゼクティブシェフ
第13回辻静雄食文化賞の選考委員は、石毛直道さん(委員長/国立民族学博物館名誉教授、文化人類学者)、鹿島茂さん(フランス文学者)、湯山玲子さん(著述家、プロデューサー)、福岡伸一さん(青山学院大学教授、分子生物学者)、辻芳樹さん(辻調グループ代表、辻調理師専門学校校長)、八木尚子さん(辻調グループ 辻静雄料理教育研究所副所長)。
なお、第13回辻静雄食文化賞の贈賞式は、7月に開催予定。
辻静雄食文化賞について
辻静雄食文化賞は、食分野の教育と研究に生涯を捧げた辻調グループ創設者・辻静雄さん(1933~1993)の志を受け継ぎ、2010年に創設されました。
同賞は、我が国の食文化の幅広い領域に注目し、よりよい「食」を目指して目覚しい活躍をし、新しい世界を築き上げた作品、もしくは個人・団体の活動を対象に選考し、これに賞を贈るものです。
また特別部門として専門技術者賞を設け、調理や製菓等の現場で活躍する技術者を顕彰しています。
中国料理の世界史:美食のナショナリズムをこえて 岩間 一弘 (著) ラーメン、チャジャン麺、フォー、パッタイ、海南チキンライス、チャプスイ…… ▼世界に広がり、人々に愛され「国民食」へと変貌をとげた「中国料理」。 ▼登場する料理の一部 |
全集 伝え継ぐ 日本の家庭料理 全16巻 日本調理科学会 /企画・編集 (著) ●本全集は日本全国47都道府県、およそ昭和35年から45年までに地域に定着していた家庭料理のなかから、地域の人々が次の世代以降もつくってほしい、食べてほしいと願っている料理を、日本調理科学会の研究者が約1400品選んだものです。実際に現地に伺い、聞き書きによってつくり方の 詳細を明らかにし、その工程やできあがりを撮影し記録しました。 ●対象とした昭和半ばは日本人の食生活が大きく変わった高度経済成長期です。台所は板の間になり、ガスが引き入れられました。農業生産力は大幅に向上し漁業生産が高まり畜産も盛んになってきた時期で食卓はどんどん豊かになっていきました。生活の洋風化も進みましたが、食生活は地域の特徴や、保存や貯蔵の技など自給的な色彩もまだふんだんに残っていました。 ●本全集は地域それぞれにある家庭料理の背景、その土地の気候風土、暦の節目にあたる行事やハレの日を解説し、それらにまつわる思い出とともに紹介しています。 ●神社仏閣などの有形文化財は保存・保護されていきますが、形の残らない 食文化は時間の経過とともに失なわれていきます。地域ごとの歴史や生活習慣にも思いをはせ、 それらと密接に関わっている食文化について共通認識を持つことで地域コミュニティーも受け継がれていきます。親から子へ、そして孫へと家庭料理を残し、伝え継いでいきたい食文化の記録です。 【巻構成】 |
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