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【第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞】高野秀行さん『イラク水滸伝』が受賞 桐野夏生さんが選考

東急文化村は9月3日、第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞の受賞作を発表しました。

 

第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞が決定!

第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞は、桐野夏生さんが選考し、次の通り受賞作が決定しました。

 
<第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞 受賞作品>

高野秀行(たかの・ひでゆき)さん
『イラク水滸伝』(文藝春秋)

 
1990年の創設以来、Bunkamuraドゥマゴ文学賞は、毎年かわる「ひとりの選考委員」によって受賞作を決定してきました。第34回となる2024年度の選考を務めたのは小説家の桐野夏生さんです。桐野夏生の選評は、https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/winners/34.html をご覧ください。

高野秀行さんには、正賞として賞状とスイス・ゼニス社製時計が、副賞として100万円が贈られます。

 

受賞作品および受賞者について

 
【受賞作『イラク水滸伝』概要】

世界最古のメソポタミア文明発祥の地の至近にある、ティグリス川とユーフラテス川に囲まれ、2016年にユネスコ世界遺産にも登録されたイラクの巨大湿地帯〈アフワール〉。馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組むその土地は、まさに“現代最後のカオス”だった。

取材・執筆に6年、3回にわたる渡航の中で出会った数多の魅力的な人物と、そこに根付く豊かな暮らし、食、手工芸、宗教、生態……。現地に赴いたからこそ解き明かされる中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録が凝縮された空前絶後のノンフィクション大作。

伝統的な舟タラーデをこぐ山田高司さん(左)と高野秀行さん(中央)

伝統的な舟タラーデをこぐ、同書のイラストを担当した探検家の山田高司さん(左)と高野秀行さん(中央) (c)高野秀行

アザール

謎に包まれたマーシュアラブ布(アザール) (c)高野秀行

アフワール湿地とフセイン水路の地図 画:山田高司

アフワール湿地とフセイン水路の地図 画:山田高司

 
<受賞者・高野秀行さん プロフィール>

ノンフィクション作家。1966年生まれ、東京都出身。ポリシーは「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」。早稲田大学探検部在籍中に書いた『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。

『ワセダ三畳青春記』で酒飲み書店員大賞、『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞等を受賞。2024年、『イラク水滸伝』の旅が高く評価され、同書のイラストを担当した旅の同行者にして探検家の山田高司さんとのコンビで植村直己冒険賞を受賞

他の著書に『辺境メシ』『幻のアフリカ納豆を追え!』『語学の天才まで1億光年』などがある。

 
〔高野秀行さんのコメント〕
自分の著作を文学作品だと思ったことがないので、今回の受賞には驚きました。でも私のポリシーは「誰も書かない本を書く」こと。既成の概念にとらわれない先鋭的な作品を対象としたこの賞をいただけるとは、私がこれまでやってきたことが評価されたようで大変嬉しく思っております。

 

選考委員プロフィール

(c)野田若葉(TRON)

(c)野田若葉(TRON)

桐野夏生(きりの・なつお)さんは、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年『ナニカアル』で読売文学賞、2021年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2023年『燕は戻ってこない』で毎日芸術賞吉川英治賞文学賞を受賞。2024年に日本芸術院賞を受賞。2021年から日本ペンクラブ会長を務める。

 

Bunkamuraドゥマゴ文学賞について

Bunkamuraドゥマゴ文学賞は、パリの「ドゥマゴ文学賞」(1933年創設)のもつ先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘することを目的に、1990年に創設された文学賞です。権威主義に陥らず、既成の概念にとらわれることなく、先進性と独創性のある、新しい文学の可能性を求めています。東急文化村が主催。

前年7月1日から当年7月31日までの13ヶ月間に出版された単行本または雑誌等に発表された日本語の文学作品(小説、評論、戯曲、詩)を対象とし、受賞作は、毎年「ひとりの選考委員」によって選ばれます。選考委員の任期は1年間。

なお、次回、第35回(2025年度)選考委員は最相葉月さんです。

 

イラク水滸伝
高野 秀行 (著)

権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む
謎の巨大湿地帯〈アフワール〉
―――そこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。

中国四大奇書『水滸伝』は、悪政がはびこる宋代に町を追われた豪傑たちが湿地帯に集結し政府軍と戦う物語だが、世界史上には、このようなレジスタンス的な、あるいはアナーキー的な湿地帯がいくつも存在する。
ベトナム戦争時のメコンデルタ、イタリアのベニス、ルーマニアのドナウデルタ……イラクの湿地帯はその中でも最古にして、“現代最後のカオス”だ。

・謎の古代宗教を信奉する“絶対平和主義”のマンダ教徒たち
・フセイン軍に激しく抵抗した「湿地の王」、コミュニストの戦い
・水牛と共に生きる被差別民マアダンの「持続可能な」環境保全の叡智
・妻が二人いる訳とは?衝撃の民族誌的奇習「ゲッサ・ブ・ゲッサ」
・“くさや汁”のようなアフワールのソウルフード「マスムータ」
・イスラム文化を逸脱した自由奔放なマーシュアラブ布をめぐる謎……etc.

想像をはるかに超えた“混沌と迷走”の旅が、今ここに始まる――
中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録が凝縮された圧巻のノンフィクション大作、ついに誕生!

 
【関連】
第34回(2024年度)Bunkamuraドゥマゴ文学賞 受賞作品 | Bunkamura

 


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