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ジャニーズ、宝塚、女性アイドル……日本人が愛してやまない「未熟さ」の核心を解き明かす!周東美材さん『「未熟さ」の系譜』が刊行

周東美材さん著『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』

周東美材さん著『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』

周東美材さんが「お茶の間の人気者」を通じて日本文化の核心を明らかにする本格論考『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』(新潮選書)を新潮社より刊行しました。

 

なぜ私たちは“未完成なスター”を求めるのか? 日本文化の核心を突く、気鋭の社会学者による本格論考

卓越した歌唱力ではなく“若さや親しみやすさ”で人気を得る「女性アイドル」、ジュニアからのデビューが一大イベントとして注目される「ジャニーズ」、入学試験の様子が毎年報じられ、未婚女性だけでレビューを上演する「宝塚歌劇団」……。

大きな人気を博してきたこれら日本独特のエンターテインメントの鍵は「未熟さ」にある。それは、近代家族と大衆メディアの結びつきが生んだ「お茶の間の願望」の帰結だった――。

 
本書は、日本のポピュラー文化がもつ世界的に見ても稀有な特徴である「未熟さ」という概念がどのようにして生成されたのかを記述する論考です。

 
完成された技芸や官能的な魅力より、成長途上ゆえの可愛らしさやアマチュア性こそが心を打ち、応援され、愛好される――AKB48や坂道シリーズに代表される女性グループアイドル、ジャニーズに代表される男性アイドルなどの芸能人に留まらず、世界から注目される「カワイイ」カルチャー、アニメやゲームなど、日本には「未熟さ」を基調としたメディア文化が幅広く浸透しています。

 
さらに言えば、「黒ネコのタンゴ」「およげ!たいやきくん」「だんご3兄弟」などの童謡や大橋のぞみ、村方乃々佳(ののかちゃん)といった童謡歌手・天才子役が定期的にヒットする現象など、私たちが当たり前のように接している芸能の中にも、“子ども文化”に端を発するものは枚挙に暇がありません。

 
そんな日本ならではの文化は、いかにして成立したのでしょうか?
本書は、丹念なメディア史研究によって、明治以降に誕生した「子どもを中心とする近代家族」が「お茶の間」という独特な消費空間を生成し、「未熟さ」を愛でる文化を育んでいく過程を、鮮やかに描き出していきます。

 
◆日本ではなぜ定期的に「童謡」や「天才子役」がヒットするのか?
→大正時代のレコード業界が仕掛けた一大コンテンツだった!
◆宝塚はなぜ「未婚女性」だけの「歌劇団」なのか?
→鉄道会社が“ファミリー層”を郊外に誘致するための策だった!
◆日本の芸能プロダクションはなぜタレントを「養成」するのか?
→戦後のテレビ業界草創期に生まれた特異なシステムだった!
◆ジャニーズのお家芸「バク転」とK-POPの決定的な違いとは?
→”敗戦国”日本と”兵役あり”韓国の差から生まれていた!
◆日本のロックバンドはなぜ「王子さま」の衣装を着るのか?
→ザ・タイガースの歌詞を童謡雑誌の作詞家が書いていた!
◆アイドルの成長を「推す」文化はどこから生まれてきたのか?
→「スター誕生!」企画者・阿久悠が新人に”未熟さ”を求めた!

そして終章では、なぜ私たちはそのような“未完成なスター”を求めてきたのか? 日本人にとって「子ども」とは何なのか――という問いから、画期的な日本論が展開されています。

「お茶の間の人気者」を通じて〈日本文化の核心〉を解き明かす、他に類のない本格論考です。

 

著者・周東美材さん コメント

レコードの誕生から現在まで約100年にわたり、国内やアジアを中心に“ガラパゴス”的な発展を遂げてきた日本ならではの芸能様式。それは現在、K-POPの世界的な広がりなどメディアのグローバル化に伴い、大きな変化にさらされています。また、日本のメディア文化を支えてきた「お茶の間=家族」の形も多様化するいま、「未熟さ」を基調とする日本のエンタメは今後どのような道を辿っていくのでしょうか――その未来を問うためにも、本書が明らかにした歴史を理解することは有効となるはずです。

 

本書の構成

まえがき

1章 童謡――天才少女が「あどけなく」歌うわけ

2章 宝塚――女生徒たちはなぜ髪を切ったか

3章 渡辺プロダクション――テレビがタレントを供給する仕組み

4章 ジャニーズ――ミュージカル少年がバク転をするまで

5章 グループ・サウンズ――エレキが生んだ「王子さま」

6章 スター誕生!――オーディション番組と虚構の少女たち

終章 「未熟さ」の系譜

あとがき

 

著者プロフィール

著者の周東美材(しゅうとう・よしき)さんは、1980年生まれ。群馬県桐生市出身。早稲田大学第一文学部卒業、東京大学大学院学際情報学府修了、博士(社会情報学)。専攻は社会学、音楽学。東京大学大学院特任助教、日本体育大学准教授を経て大東文化大学社会学部准教授。

著書に『童謡の近代』(岩波現代全書、第46回日本童謡賞・特別賞、第40回日本児童文学学会奨励賞)、『カワイイ文化とテクノロジーの隠れた関係』(共著、東京電機大学出版局、2016年日本感性工学会出版賞)など。

 

「未熟さ」の系譜 (新潮選書)
周東 美材 (著)

ジャニーズ、宝塚、女性アイドル……
なぜ私たちは“未完成なスター”を求めてきたのか?

「お茶の間の人気者」を通じて日本文化の核心を解き明かす、気鋭の社会学者による本格論考

卓越した歌唱力ではなく“若さや親しみやすさ”で人気を得る「女性アイドル」、ジュニアからのデビューが一大イベントとして注目される「ジャニーズ」、入学試験の様子が毎年報じられ、未婚女性だけでレビューを上演する「宝塚歌劇団」……。
完成された技芸や官能的な魅力より、成長途上ゆえの可愛らしさやアマチュア性こそが心を打ち、応援され、愛好される、これら日本独特のエンターテインメントの鍵は「未熟さ」にあった。そしてそれは、近代家族と大衆メディアの結びつきが生んだ「お茶の間の願望」の帰結だった――。
明治以降に誕生した「子どもを中心とする近代家族」が「お茶の間」という独特な消費空間を生成し、「未熟さ」を愛でる文化を育んでいく過程を、丹念なメディア史研究によって鮮やかに描き出す。

 


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