【第34回紫式部文学賞】皆川博子さん『風配図 WIND ROSE』が受賞
宇治市(京都府)は、女性作家の文学作品を対象とする「第34回紫式部文学賞」の受賞作を発表しました。
第34回紫式部文学賞が決定!
第34回紫式部文学賞は、次の通り受賞作が決定しました。
<第34回紫式部文学賞 受賞作品>
皆川博子(みながわ・ひろこ)さん
『風配図 WIND ROSE』(河出書房新社)
受賞作『風配図 WIND ROSE』は、12世紀、「ハンザ」黎明期が舞台。ドイツ商人が北へ進出し、ロシア・ノヴゴロドでは政争が頻発するなど動乱の時代、自らの道を求め交易商人を志した二人の少女の物語を、戯曲形式も交え、瑞々しく繊細に、かつ緻密に厚く描いた傑作長篇です。
受賞者の皆川博子さんは、1930年生まれ。1972年『海と十字架』でデビュー。1973年「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞後、ミステリ、幻想小説、時代小説、歴史小説等、幅広いジャンルで活躍。1985年『壁──旅芝居殺人事件』で日本推理作家協会賞、1986年『恋紅』で直木賞、1990年『薔薇忌』で柴田錬三郎賞、1998年『死の泉』で吉川英治文学賞、2012年『開かせていただき光栄です』で本格ミステリ大賞、同年日本ミステリー文学大賞、2022年『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』で毎日芸術賞『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』で毎日芸術賞を受賞。2015年文化功労者。
季刊文芸誌「文藝」(河出書房新社)で、19世紀ウクライナの詩人・画家の物語と13世紀バルト地方の騎士の物語が交錯する長篇『ジンタルス RED AMBER 風配図II』を現在連載中。今冬には短篇集『昨日の肉は今日の豆』を刊行予定。
皆川博子さんには、賞金100万円が贈られます。
選考委員は、川上弘美さん(作家)、鈴木貞美さん(文芸評論家/国際日本文化研究センター名誉教授)、竹田青嗣さん(文芸評論家/哲学者/大学院大学至善館教授/早稲田大学名誉教授)、平田俊子さん(詩人)、村田喜代子さん(作家)。
作品紹介、講評など詳細は、https://www.city.uji.kyoto.jp/site/bunkakatsudou/7120.html をご覧ください。
皆川博子さんからの受賞コメント
紫式部の名を冠した賞をいただき、たいそう光栄に存じます。十二世紀のバルト海交易、決闘裁判など、二十一世紀の日本の読者におよそ馴染みのないことを書きましたこの作に目をとめていただけたことが、まことに嬉しゅうございます。私が生まれた昭和初期は、男尊女卑が当然とされていました。敗戦のとき、私は十五歳でした。突然、戦勝国から民主主義、男女同権を強制されたのですが、その本質を理解している大人は周囲にほとんどおらず、男性優位は続きました。家長が絶対権力を持つ中で、自力で生きていこうとする十二世紀の少女たちに、時代を超えて、共感していただけたのでしょうか。
バルト海の交易史研究や法文化史研究を専門とされる先生方から多大な学恩を賜わりました。老齢で取材旅行のできない作者に代わり、担当編集の方は現地を訪れ資料や写真を調えてくださいました。受賞の喜びを、協力してくださった多くの方々と分かち合いたいと思います。
紫式部文学賞とは
「紫式部文学賞」は、宇治市と宇治市教育委員会が主催。伝統ある日本女性文学の継承・発展と、市民文化の向上に資することを目的とした文学賞です。
前年に刊行された文学作品を対象とし、女性を作者とするものに限定しています。
一般公募は行わず、全国の作家、文芸評論家、出版社、新聞社、市民推薦人から各々1点に限り推薦を受けることとしています。推薦された作品は、紫式部文学賞推薦委員会で数編に絞り込まれ、その後紫式部文学賞選考委員会で受賞候補作品が選定され、市長が決定します。
受賞者は原則として1名で、正賞(「紫式部」をイメージしたクリスタル像)と副賞(賞金100万円)が贈呈されます。
風配図 WIND ROSE 皆川 博子 (著) 第34回紫式部文学賞受賞 皆川博子 新たな代表作、誕生。 少年の日に夢見た「本物の文学」という幻に、今日、出逢ってしまいました。 記録に決して残らない「が、あったはず!」の歴史的瞬間。 1160年5月、バルト海交易の要衝ゴットランド島。 ドイツ商人が北へ進出し、ロシア・ノヴゴロドでは政争が頻発するなど動乱の時代を生きた人々を詩歌や戯曲形式も交えて紡ぐ、小説の新たな可能性を拓く傑作長篇! |
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