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川端康成・谷崎潤一郎から新潮社前社長への新発見書簡が『波』5月号に一挙掲載 「この年末もまた四拾ほどお願ひ出来ましたら助かります」

『波』5月号

『波』5月号

文豪・川端康成と谷崎潤一郎が佐藤亮一・新潮社前社長に宛てた書簡17通が発見され、新潮社PR誌『波』5月号に一挙掲載されました。解説は日本近代文学館理事長の中島国彦さん。

川端の直筆書簡 (c)新潮社

川端の直筆書簡 (c)新潮社

「この年末もまた四拾(注・四十万円?)ほどお願ひ出来ましたら助かります 週刊の稿料いただいたばかりですが」(川端)、

「此のところ金子の必要を生じましたので勝手ながらあとの稿料いつもの方法にて静岡銀行熱海支店小生口座へお振込み下されば難有 何分お願ひ申します」(谷崎)

…など金策の相談や、未完に終わった川端の『千羽鶴』続篇や谷崎『鴨東綺譚』のことなど、秘話満載の書簡揃いです。

川端康成 (c)新潮社

川端康成 (c)新潮社

とりわけ川端の書簡は、亡くなった堀辰雄の全集を「角川で無く御社にお願ひする傾きらしく、それを角川に伝へる一役振りあてられさうで、心痛です」と悩みを打ち明け、「室生さん(注・室生犀星)の詩碑を見に参りますと分骨を納められる二十分程前でした 正宗さん(注・正宗白鳥)が入院されたとか吉川さん(注・吉川英治)の病ひが思いとか聞くたびにさびしくなります」と友人たちを喪っていく心境を述べるなど、佐藤氏に親しく胸襟を開いている感じが伝わってきます。

谷崎潤一郎 (c)新潮社

谷崎潤一郎 (c)新潮社

文豪と出版人が濃厚に、親密に付き合っていた時代を生々しく証言する書簡です。

 

波 2022年 05 月号

【特集 川端康成没後50年】
中島国彦/〈初公開〉川端康成・谷崎潤一郎、佐藤亮一宛書簡のたたずまい――新潮社社長室のたからもの、ふたたび――
[単行本未収録小説]川端康成/春の目

 


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