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「蔦重」はいかにして江戸のメディア王にのし上がったか――増田晶文さん『蔦屋重三郎 江戸の反骨メディア王』が刊行

江戸時代の天才編集者の波乱に満ちた人生をたどる、増田晶文さん著『蔦屋重三郎 江戸の反骨メディア王』が新潮選書より刊行されました。

 

大河ドラマ「べらぼう」の主人公はこの男!

『稀代の本屋 蔦屋重三郎』『絵師の魂 渓斎英泉』『楠木正成 河内熱風録』など史実を元にした歴史小説に定評がある作家、増田晶文さんが、遊郭ガイドや狂歌集でベストセラーを連発し、幕府の言論統制に「笑い」で立ち向かった天才編集者の生涯を辿ります。

 
貸本屋から身を起こし江戸の大手版元が軒を連ねる日本橋通油町に進出した「蔦重」こと蔦屋重三郎。江戸後期、田沼意次が幕政を主導した浮かれた時代に吉原の「遊郭ガイド」を販売し、「狂歌集」や「黄表紙」のヒット作を連発した男は、その後、言論統制を強める松平定信の寛政の改革に「笑い」で立ち向かいます。

北斎や歌麿、写楽ら浮世絵師の才能も見出した波瀾万丈の生涯を活写し、なぜ彼の出版物が江戸っ子の心を捉えたか、その秘密に迫ります。

『画本東都遊』の「絵草紙店」。二代目主人が経営する蔦屋。画は北斎。国立国会図書館デジタルコレクション

『画本東都遊』の「絵草紙店」。二代目主人が経営する蔦屋。画は北斎。国立国会図書館デジタルコレクション

 
<「蔦重」が考案した編集術の数々!>

◎本の冒頭に「人気作家の推薦文」を入れる。
◎売れっ子作家に契約料を払って「専属」にする。
◎妓楼と「タイアップ」して吉原ガイド本を作る。
◎お大尽をタニマチにして「出版ファンド」を起こす。
◎作家を囲うために「文化サロン」を立ち上げる。
◎巻末に自社出版物の「刊行目録」を入れる。

 
【本書の内容】
吉原に生まれ貸本屋から身を起こし、新興都市江戸を代表する本屋となった「蔦重」こと蔦屋重三郎。浮世絵、戯作、狂歌に吉原、粋と通に穿ち、幾多の秀でた才能を発見して育てた。江戸に出版文化を花開かせ、さらに幕府の言論弾圧にもくじけない気骨のある出版人の顔も持つ江戸のクリエイターの姿を活写する。

 

専門家も推薦!

「本書は学術的な資料からだけでは解明できない点、すなわち、蔦屋重三郎がどのような思考をめぐらせながら出版物の企画を考え、難題に立ち向かっていたのかということについて、想像を自由にめぐらせながら筆を進めている。しかしそこに突飛さを感じさせないのは、筆者が蔦屋重三郎やその関係者たちに面と向かって取材するかのように歴史資料と向き合い、そこから聞こえてくる「声」を丹念に拾い集めようとしているからだろう。時代小説家とノンフィクション作家という、二つの異なる顔を持つ筆者だからこそまとめ上げることのできた蔦屋重三郎の評伝と言える」
――原宿にある浮世絵専門の博物館「太田記念美術館」の主席学芸員・日野原健司さん

 

本書の構成

第一章 貸本屋から「吉原細見」の独占出版へ

第二章 江戸っ子を熱狂させた「狂歌」ブーム

第三章 エンタメ本「黄表紙」で大ヒット連発

第四章 絶頂の「田沼時代」から受難の「寛政改革」へ

第五章 歌麿の「美人画」で怒濤の反転攻勢

第六章 京伝と馬琴を橋渡し、北斎にも注目

第七章 最後の大勝負・写楽の「役者絵」プロジェクト

第八章 戯家の時代を駆け抜けて

 

著者プロフィール

増田晶文(ますだ・まさふみ)さんは、作家。大阪府東大阪市出身。同志社大学法学部法律学科卒業。1998年に『果てなき渇望』でNumberスポーツノ ンフィクション新人賞を受賞。以降、人間の「果てなき渇望」を通底テーマにさまざまなモチーフの作品を執筆している。

歴史関係の文芸作として『稀代の本屋 蔦屋重三郎』『絵師の魂 渓斎英泉』『楠木正成 河内熱風録』などがある。

 

蔦屋重三郎:江戸の反骨メディア王 (新潮選書)
増田 晶文 (著)

偉そうな「お上」は、おちょくれ!――天才編集者の一代記。
貸本屋から身を起こし日本橋通油町の版元となった「蔦重」こと蔦屋重三郎。江戸後期、田沼意次の浮かれた時代に吉原の「遊郭ガイド」を販売し、「狂歌集」や「黄表紙」のヒット作を連発した男は、言論統制を強める寛政の改革に「笑い」で立ち向かう。北斎や歌麿、写楽ら浮世絵師の才能も見出した波瀾万丈の生涯を活写する。

 
【関連】
試し読み | 『蔦屋重三郎―江戸の反骨メディア王―』増田晶文 | 新潮社

 


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