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SINCE 1991

「編集部には非業の死を遂げた同僚6人の遺影が飾られていた…。」ノーベル平和賞受賞・ドミトリー・ムラトフさんに密着取材した衝撃のルポルタージュ『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』

福田ますみさん著『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』

福田ますみさん著『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』

ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ(新しい新聞)」の編集長、ドミトリー・ムラノフさんのノーベル平和賞受賞を受け、同紙と、その編集長のドミトリー・ムラノフさんに密着取材したルポルタージュ『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(新潮社)の著者・福田ますみさんがコメントを寄せています。

 

書籍『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』について

ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ(新しい新聞)」は、ロシアで政権の暗部を暴き続ける唯一の独立系新聞です。

ドミトリー・ムラトフさん(59)は1993年の創刊に関わった中心人物で、1995年からほぼ一貫して編集長を務めてきました。今回のノーベル平和賞受賞はプーチン政権がメディア統制を強める中、「言論の自由」のために戦ってきた姿勢が評価されてのものです。

 
<本書の概要>

白昼堂々行われる射殺、ハンマーでの撲殺、そして毒殺。ロシアでジャーナリストの不審死が相次いでいる。彼らはメディアが政権に牛耳られる国の中で、権力批判を繰り広げる急先鋒だった──。
偽りの民主主義国家内部で何が起きているのか?不偏不党の姿勢を貫こうとする新聞社「ノーバヤ・ガゼータ」に密着した衝撃のルポ。

〔目次〕
第1章 悲劇の新聞
第2章 奇妙なチェチェン人
第3章 告発の代償
第4章 殉教者たち
第5章 夢想家たちの新聞経営
第6章 犯罪専門記者の憂鬱
第7章 断末魔のテレビジャーナリズム
第8章 ベスラン学校占拠事件の地獄絵図
第9章 だれが子供たちを殺したか

 

福田ますみさんのコメント

「ノーバヤ・ガゼータ」がノーベル平和賞の有力候補として検討されているようだという話は、数年前にも聞きました。

 
今回、個人として受賞したムラトフ氏は「私に与えられたものではなく、犠牲になった同僚たちに与えられた賞だ」と述べていましたが、仲間たちと文字通り命がけの活動をしてきた同氏にとってそれが偽らざる気持ちなのだと思います。なぜ、個人として賞が送られたのか、と。

 
わたしが彼らを取材したのは10年以上も前のことになりますが、編集部には非業の死を遂げた同僚6人の遺影が飾られ、彼らが見下ろすスペースで編集会議が行われていました。

 
創刊メンバーの一人がわたしに言った言葉をいまも覚えています。「創刊時、ムラトフは、政治の記事は紙面の一番最後でいいと言っていた。彼はロシアの普通の人々の喜びや悲しみを生き生きと伝えるような記事を中心に据えたかった。しかし残念ながらその後のロシアの政情や社会状況が、そうした理想の新聞づくりを許さなかった。でも、ムラトフはいつか、政治のニュースが小さな扱いで済む日が来ることを待ち望んでいる」。

 
ムラトフ氏は現実的な理想家。それは今も変わっていないはずです。

 

著者プロフィール

著者の福田ますみ(ふくだ・ますみ)さんは、1956(昭和31)年生まれ。横浜市出身。立教大学社会学部卒業。専門誌、編集プロダクション勤務を経て、フリーに。犯罪、ロシアなどをテーマに取材、執筆活動を行なっている。

『でっちあげ』で第六回新潮ドキュメント賞を受賞。他の著書に『スターリン家族の肖像』『暗殺国家ロシア』『モンスターマザー』などがある。

 

暗殺国家ロシア―消されたジャーナリストを追う―(新潮文庫)
福田 ますみ (著)

ソ連が崩壊し、ロシアは「開かれた国」になったはずだった。だが、そこに報道の自由は事実上存在しない。大本営発表と化したニュースがあふれる中で孤軍奮闘、「不偏不党」「公正中立」を貫く新聞社がある。「ノーバヤガゼータ(新しい新聞)」。鋭い権力批判の代償として数々の記者を喪うが、屍を乗り越え、権力と対峙し続ける。彼らの目を通して「虚構の民主国家」の実態を描く。

〔出版社からのコメント〕
2000年代に入ってから経済成長を謳歌したロシア。
投資の対象として持て囃され、2013年には国民1人あたりのGDPが先進国並みになると見込まれています。
こう聞くと、あたかも民主主義国家に生まれ変わったかのように思う方が多いかもしれません。
しかし、その実態は……。
絶望的な状況に立ち向かう人々の信念の物語をぜひお読みください!

 


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