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【訃報】日本文学研究家・ドナルド・キーンさんが死去

日本文学研究の第一人者で、米コロンビア大名誉教授のドナルド・キーンさんが2月24日、心不全のため東京都内の病院で死去しました。96歳。ニューヨーク出身。葬儀・告別式は親族のみで行い、後日、お別れの会を開きます。喪主は養子のキーン誠己(せいき)さん。

読売文学賞受賞作『百代の過客』

読売文学賞受賞作『百代の過客』


ドナルド・キーンさんは、1922年生まれ。18歳の時に英訳版『源氏物語』に感銘を受け、日本文学に傾倒。第2次世界大戦開戦の翌年(1942年)、アメリカ海軍の日本語学校に入学。1943年より語学士官として従軍し、日本人捕虜の尋問や日本軍の文書の翻訳などを担当。

戦後は京都大大学院に留学するなど、日本文学の研究に従事。作家の谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、安部公房、石川淳、司馬遼太郎らと親交を結びました。兼好法師の「徒然草」、松尾芭蕉の「おくの細道」、近松門左衛門や太宰治、川端、三島など、古典から近現代の作家まで多くの作品を英語に翻訳し、また日本の文化や歴史なども海外に広く発信していきます。

1962年に菊池寛賞、1985年に読売文学賞、1997年に朝日賞、2002年に毎日出版文化賞を受賞するなど受賞歴多数。2008年には外国出身の学術研究家として初めて文化勲章を受章。東日本大震災をきっかけに日本国籍を取得。

著書に、『日本文学を読む』『百代の過客』『作家の日記を読む 日本人の戦争』『日本人の美意識』『ドナルド・キーン著作集(全15巻)』など。

 

百代の過客 日記にみる日本人 (講談社学術文庫)
円仁、貫之、孝標女、定家、宗祇、芭蕉、そして名もなき旅の遊女がつづった日記――
数百年の時をこえて「永遠の旅人」の声が聞こえる
読売文学賞・日本文学大賞 受賞作

日本人にとって日記とはなにか。平安時代の『入唐求法巡礼行記』『土佐日記』から江戸時代の『野ざらし紀行』『笈の小文』『奥の細道』まで、八十編におよぶ日記文学作品の精緻な読解を通し、千年におよぶ日本人像を活写。日本文学の系譜が日記文学にあることを看破し、その独自性と豊かさを探究した、日本文化論・日本文学史研究に屹立する不朽の名著。

そもそも私が日記に心を向けたのは、(中略)今日私が知る日本人と、いささかでも似通った人間を、過去の著作の中に見いだす喜びのためだったのである。最もすぐれた日記は、その作者を最もよく表し、逆に最もつまらぬ日記は、先人の詩歌や日記から学んだ歌枕の伝統を、ただいたずらに繰り返すのみである。日本人はいにしえより今日に至るまで、読書によって知悉する風景を己自身の目で確かめ、所の名物を己も口にすることに、格別の喜びを抱いてきた。――<本書「終わりに」より>

※本書は、1984年に朝日新聞社より刊行された同名の書籍の上下巻を合本にしたものです。

日本人の美意識
枯枝に鳥のとまりけり秋の暮―芭蕉の句の鳥は単数か複数か、その曖昧性にひそむ日本の美学。無個性な日本の肖像画の中で一休像だけがなぜ生きているのか。日清戦争の及ぼした文化的影響など、鋭い分析による独創的日本論。

 


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