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芥川賞&直木賞(平成30年下半期)候補作が決定 社会学者・古市憲寿さん初小説が芥川賞ノミネートなど計11作品

日本文学振興会は12月16日、第160回芥川龍之介賞(平成30年下半期)および第160回直木三十五賞(平成30年下半期)の候補作品を発表しました。

芥川龍之介賞、直木三十五賞ともに、平成31年1月16日午後4時より築地・新喜楽で選考委員会が開催され、それぞれ受賞作品が決定します。

 

第160回芥川賞 候補作について

第160回芥川賞の候補作は以下の通りです。〔敬称略〕

 
【候補作】

◎上田岳弘(うえだ・たかひろ)『ニムロッド』(『群像』12月号 掲載)

◎鴻池留衣(こうのいけ・るい)『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』(『新潮』9月号 掲載)

◎砂川文次(すなかわ・ぶんじ)『戦場のレビヤタン』(『文學界』12月号 掲載)

◎高山羽根子(たかやま・はねこ)『居た場所』(『文藝』冬季号 掲載)

◎古市憲寿(ふるいち・のりとし)『平成くん、さようなら』(『文學界』9月号 掲載)

◎町屋良平(まちや・りょうへい)『1R(いちらうんど)1分34秒』(『新潮』11月号 掲載)

 
上田岳弘さんは、1979年生まれ。早稲田大学法学部卒業。2013年「太陽」で新潮新人賞、2015年「私の恋人」で三島由紀夫賞を受賞。2018年『塔と重力』で第68回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。今回、3度目のノミネート。

鴻池留衣さんは、1987年生まれ。慶應義塾大学文学部中退。2016年「二人組み」で新潮新人賞を受賞。

砂川文次さんは、1990年生まれ。神奈川大学卒業。2016年「市街戦」で文學界新人賞を受賞。

高山羽根子さんは、1975年生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。2016年「太陽の側の島」で林芙美子文学賞を受賞。

古市憲寿さんは、1985年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。本作『平成くん、さようなら』が初小説

町屋良平さんは、1983年生まれ。埼玉県立越ヶ谷高校卒業。2016年「青が破れる」で文藝賞を受賞。今回、2度目のノミネート。

 

第160回直木賞 候補作について

第160回直木賞の候補作は以下の通りです。〔敬称略〕

 
【候補作】

◎今村翔吾(いまむら・しょうご)『童(わらべ)の神』(角川春樹事務所)

◎垣根涼介(かきね・りょうすけ)『信長の原理』(KADOKAWA)

◎真藤順丈(しんどう・じゅんじょう)『宝島』(講談社)

◎深緑野分(ふかみどり・のわき)『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)

◎森見登美彦(もりみ・とみひこ)『熱帯』(文藝春秋)

 
今村翔吾さんは、1984年生まれ。2016年「蹴れ、彦五郎」で伊豆文学賞、「狐の城」で九州さが大衆文学賞・笹沢左保賞(大賞)、を受賞。2017年、文庫書下ろし『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。2018年「童神」(のち「童の神」に改題)で角川春樹小説賞、『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。

垣根涼介さんは、1966年生まれ。筑波大学卒業。2000年「午前三時のルースター」でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。2004年『ワイルド・ソウル』で大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を、2005年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。今回、2度目のノミネート。

真藤順丈さんは、1977年生まれ。2008年「地図男」でダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞してデビュー。同年、日本ホラー小説大賞、電撃小説大賞銀賞、ポプラ社小説大賞特別賞をそれぞれ別の作品で受賞。2018年『宝島』で山田風太郎賞を受賞

深緑野分さんは、1983年生まれ。神奈川県立海老名高等学校卒業。2010年短篇「オーブランの少女」でミステリーズ!新人賞の佳作入選。今回、2度目のノミネート。

森見登美彦さんは、1979年生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了。2003年「太陽の塔」で日本ファンタジーノベル大賞、2007年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞、2010年『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞を受賞。今回、3度目のノミネート。

 

芥川賞と直木賞について

芥川賞と直木賞は、1935(昭和10)年に制定され、芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られます。

芥川賞は主に無名・新進作家が、直木賞は無名・新進・中堅作家が対象となります。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が授与されます。

 

平成くん、さようなら
社会学者・古市憲寿、初小説。
安楽死が合法化された現代日本のパラレルワールドを舞台に、平成という時代と、いまを生きることの意味を問い直す、意欲作!

平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。
愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。
なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。
『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』などで若者の視点から現代日本について考えてきた著者が、軽やかに、鋭く「平成」を抉る!

 
童の神
平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥……などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。
一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。
さまざまな出逢いを経て、桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが――。
皆が手をたずさえて生きられる世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩(うた)。

 
信長の原理
何故おれは、裏切られ続けて死にゆくのか。信長の内面を抉る革命的歴史小説

吉法師は母の愛情に恵まれず、いつも独り外で遊んでいた。長じて信長となった彼は、破竹の勢いで織田家の勢力を広げてゆく。だが、信長には幼少期から不思議に思い、苛立っていることがあった―どんなに兵団を鍛え上げても、能力を落とす者が必ず出てくる。そんな中、蟻の行列を見かけた信長は、ある試みを行う。結果、恐れていたことが実証された。神仏などいるはずもないが、確かに“この世を支配する何事かの原理”は存在する。やがて案の定、家臣で働きが鈍る者、織田家を裏切る者までが続出し始める。天下統一を目前にして、信長は改めて気づいた。いま最も良い働きを見せる羽柴秀吉、明智光秀、丹羽長秀、柴田勝家、滝川一益。あの法則によれば、最後にはこの五人からも一人、おれを裏切る者が出るはずだ―。

 
宝島
英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!

 
ベルリンは晴れているか (単行本)
大ヒット『戦場のコックたち』(直木賞、本屋大賞候補作)を超える衝撃!
第二次大戦直後のドイツを舞台にした圧倒的スケールの歴史ミステリ

戦争が終わった。
瓦礫の街で彼女の目に映る空は何色か

ヒトラー亡き後、焦土と化したベルリンでひとりの男が死んだ
孤独な少女の旅路の果てに明かされる真実とは――
読後、きっとこのタイトルに心が震える。

1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり――ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。

 
熱帯
沈黙読書会で見かけた『熱帯』は、なんとも奇妙な本だった!謎の解明に勤しむ「学団」に、神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと、「部屋の中の部屋」…。東京の片隅で始まった冒険は京都を駆け抜け、満州の夜を潜り、数多の語り手の魂を乗り継いで、いざ謎の源流へ―!

 
【関連】
芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会
直木三十五賞|公益財団法人日本文学振興会

 


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