正しすぎる社会は息苦しい――古市憲寿さん『正義の味方が苦手です』が刊行
古市憲寿さんがこの二年間を見つめながら、「正しさ」では解決できない現実との向き合い方を考えた『正義の味方が苦手です』が新潮社より刊行されました。
「正義」の解釈は人によって違う
本書の執筆時期にあたる二年間には国内外とも大きな出来事がありました。ウクライナ戦争が始まり、元総理が殺され、そしてコロナウイルスはいまだ終息する気配を見せません。このように常識や価値観が揺れ動く社会の中では、色々な意見の衝突や炎上騒ぎが起こります。
そんな問題が出るたびに現れるのが「正義の味方」です。不倫・セクハラ・パワハラ・差別問題などにしばしばみられ、「我こそは」という正義感に駆られた多くの人が渦中の人を大声で糾弾、相乗的に広がっていくという光景はもはや日常茶飯事です。
本書の中では、そんな落ち着きのない世の中に古市さんらしい視点とウィットで切り込みながら、「正義」にひそむ危うさを鋭く指摘します。「正義」を武器に使った人は、最も「正義」からはみ出さないことが求められる、という言葉にはハッとさせられます。
世の中のあり方が変わったこの二年間を見つめながら、古市さんが考えた「正しさ」では解決できない現実との向き合い方とは――社会学者であり作家、コメンテーターとしても活躍する現代の知性と一緒に、この二年間を振り返る気持ちで読んでみてはいかがでしょうか。
【本書の概要】
正しすぎる社会は息苦しい――。失言をくり返す政治家も、ポリコレを掲げて暴走する人も、自分は常識的だと思っている人たちも、誰もが自分の色眼鏡で世界を見ているものだ。それらがすれ違い、時にぶつかり合うのは当然だけども、他人の考え自体を受け入れられず、現実社会の歪みを許容できない「正義の味方」は何だか怖い。自分にも他人にも自由を認め、ままならない世界を柔軟に生きるための思考法。
著者プロフィール
著者の古市憲寿(ふるいち・のりとし)さんは、1985(昭和60)年生まれ、東京都出身。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。
若者の生態を的確に描出した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。他の著書に『誰の味方でもありません』『平成くん、さようなら』『楽観論』等がある。
正義の味方が苦手です (新潮新書) 古市 憲寿 (著) |
◆物語の舞台は心霊スポット!? 恋愛小説なのに不倫だらけ!? 紫式部が書いた異端の書「源氏物語」の謎に迫る『やばい源氏物語』が刊行 | 本のページ
◆不倫はすることより、バレてからが本番――恋愛小説の名手・唯川恵さんが実話を元に贈る〈修羅場の恋愛学〉『男と女 恋愛の落とし前』が刊行 | 本のページ
◆「不倫なんて、人から言われる筋合いないもーん」山田詠美さん『血も涙もある』が文庫化 解説は平松洋子さん | 本のページ
◆【第38回TOPPOINT大賞】ビジネスリーダー1万人が選ぶ2023年上半期のベストビジネス書は斎藤幸平さん『ゼロからの『資本論』』 | 本のページ