芥川賞&直木賞(2022年上半期)候補作が決定 芥川賞は5名全員、直木賞は5名中4名が女性 初ノミネートは合わせて6名
日本文学振興会は6月17日、第167回芥川龍之介賞(2022年上半期)および第167回直木三十五賞(2022年上半期)の候補作品を発表しました。
芥川龍之介賞、直木三十五賞ともに、2022年7月20日に都内で選考委員会が開催され、それぞれ受賞作品が決定します。
第167回芥川賞 候補作について
第167回芥川賞の候補作は以下の5作品です。
【第167回芥川賞 候補作】
◎小砂川チト(こさがわ・ちと)さん「家庭用安心坑夫」(『群像』6月号)
◎鈴木涼美(すずき・すずみ)さん「ギフテッド」(『文學界』6月号)
◎高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)さん「おいしいごはんが食べられますように」(『群像』1月号)
◎年森瑛(としもり・あきら)さん「N/A(エヌエー)」(『文學界』5月号)
◎山下紘加(やました・ひろか)さん「あくてえ」(『文藝』夏季号)
今回、芥川賞は初めて、候補者全員が女性となりました。また、2回めのノミネートとなった高瀬隼子さん以外の4名の方は初ノミネートとなっており、砂川チトさんの「家庭用安心坑夫」は第65回群像新人文学賞、年森瑛さんの「N/A(エヌエー)」は第127回文學界新人賞を受賞したデビュー作でもあります。
第167回直木賞 候補作について
第167回直木賞の候補作は以下の5作品です。
【第167回直木賞 候補作】
◎河﨑秋子(かわさき・あきこ)さん『絞め殺しの樹』(小学館)
◎窪美澄(くぼ・みすみ)さん『夜に星を放つ』(文藝春秋)
◎呉勝浩(ご・かつひろ)さん『爆弾』(講談社)
◎永井紗耶子(ながい・さやこ)さん『女人入眼(にょにんじゅげん)』(中央公論新社)
◎深緑野分(ふかみどり・のわき)さん『スタッフロール』(文藝春秋)
今回、直木賞は候補者5名中4名が女性となりました。初ノミネートは河﨑秋子さん、永井紗耶子さんのお二人。窪美澄さん、呉勝浩さん、深緑野分さんは、ともに3回目のノミネートです。
芥川賞と直木賞について
芥川賞と直木賞は、1935(昭和10)年に制定され、芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られます。
芥川賞は主に無名・新進作家が、直木賞は無名・新進・中堅作家が対象となります。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が授与されます。
家庭用安心坑夫 小砂川 チト (著) 日本橋三越の柱に、幼いころ実家に貼ったシールがあるのを見つけたところから物語は始まる。狂気と現実世界が互いに浸食し合い、新人らしからぬ圧倒的筆致とスピード感で我々を思わぬところへ運んでいく。 |
おいしいごはんが食べられますように 高瀬 隼子 (著) 「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」 職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。 |
N/A 年森 瑛 (著) 選考会で異例の満場一致! 松井まどか、高校2年生。 優しさと気遣いの定型句に苛立ち、肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。 ★★★ ここには誰のおすみつきももらえない、肉体から絞り出した言葉の生々しい手触りがある。――青山七恵 |
あくてえ 山下紘加 (著) あたしの本当の人生はこれから始まる。小説家志望のゆめは90歳の憎たらしいばばあと母親と3人暮らし。 |
絞め殺しの樹 河崎 秋子 (著) あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ 北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。 「なんで、死んだんですか。母は。癌とはこの間、聞きましたが、どこの癌だったんですか」 【編集担当からのおすすめ情報】 |
夜に星を放つ 窪 美澄 (著) かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。 コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。 |
爆弾 呉 勝浩 (著) 東京、炎上。正義は、守れるのか。 些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。 【業界、震撼!】 |
女人入眼 永井 紗耶子 (著) 『商う狼』で新田次郎賞をはじめ数多くの文学賞を受賞。 「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」 |
スタッフロール 深緑 野分 (著) 戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。 特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。その愛と真実の物語。 |
【関連】
▼芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会
▼直木三十五賞|公益財団法人日本文学振興会
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