「生き残るために。ロックを続けるために。」ロッキング・オン創刊メンバー、松村雄策さんエッセイ集『ハウリングの音が聴こえる』が刊行
雑誌「ロッキング・オン」創刊に関わり、2022年3月に亡くなるまで音楽評論家・文筆家として活躍した、松村雄策さんによる11冊目の著作『ハウリングの音が聴こえる』が河出書房新社より刊行されました。
「小説すばる」での4年にわたる連載エッセイ、44回分を完全収録
本書は、松村雄策さんが文芸誌「小説すばる」2014年4月号から2018年3月号まで、約4年間にわたり連載した同タイトルのエッセイ全44回を一冊にしたものです。初エッセイ集『アビィ・ロードからの裏通り』から数え、著者11作目の著作となります。
松村さんのエッセイは、「ロッキング・オン」読者をはじめ、幅広い人たちからこよなく愛され、評論家の加藤典洋さんは、著書『言語表現法講義』(岩波テキストブックス)の中で松村さんを「隠れた文章家として、僕の中で大きな存在。」と評し、評論家・エッセイストの坪内祐三さんは、連載書評、著作で松村さんの作品を多く取り上げ、「エッセイストになるための文庫本100冊」の一つに二作目のエッセイ集『岩石生活入門』(ちくま文庫)を挙げています。
本書『ハウリングの音が聴こえる』は、折り紙つきの文筆家による名エッセイが存分に堪能できる一冊です。
書き手・松村雄策さんの魅力
《松村雄策という人は、自分で論理を積み重ねながら、対象の核をぐっとつかんで表現するのがとてもうまい書き手です。
この連載でもそれは十二分に発揮され、冒頭からいつものように(?)ゆるゆるっと引き込まれて読み進めるうちにそのミュージシャンの本質が端的に表現されていく後半へと移り、読み終えて唸る――この繰り返しでした。
松村さんはこれまで多くのミュージシャンと作品を扱ってきました。この連載でも、もちろん独特の手グセというか松村雄策的表現というのが散見されますが、媒体が音楽専門誌ではないことを意識してか、一般の読者向けにもわかりやすくミュージシャンを、音楽を、曲を、そして松村さん自身を伝えようと配慮しているように感じられます。》
――「本書について 松村雄策の十一冊目」(米田郷之さん/ストランド・ブックス)
著者と長い間親交があり、本書を編集した米田郷之さん(ストランド・ブックス)は、巻末収録「本書について 松村雄策の十一冊目」で上記のように述べています。
気になる中年の健康管理、減量方法についての述懐に始まり、60年代からスタイルを維持し、現在も過酷なステージングをこなすミック・ジャガーへと話が移る「我らはヘルス・エンジェルス(HEALTH ANGELS)」、2015年末にヤクルト・スワローズの奮闘とリーグ優勝を振り返りながら、ジョン・レノンが凶弾に倒れた1980年12月8日への回顧が始まる「三十五年目の十二月八日(上)」などなど。
野球、大相撲、落語、プロレスといった話題、目にしたニュースや身辺雑記をまくらに、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、エリック・バードン、ドアーズ、ジャックスなど愛好するアーティストたちへの回想へと引き込まれていく妙技、しなやかな展開は本書でも健在。
『ハウリングの音が聴こえる』は、古参の読者はもちろん、初めて松村作品、往時のロックスターたちに触れる方々も、きっと心をつかまれ、魅了される珠玉のエッセイ集です。
大槻ケンヂさんが本書を推薦!
心に沁みました。
世代が違ってもロック好きの通る道はきっとみんな同じなのだろうなぁ、と。
その晩年の一つに、音楽が寄り添って、なんだろう、自分に照らし合わせて読んでしまう。何度も。
――大槻ケンヂさん(ミュージシャン)
本書帯には、作家・文筆家としても活躍するミュージシャン、大槻ケンヂさんによる推薦文が寄せられています。
大槻さんは「本の雑誌」(2023年1月号 No.475)での自身の連載「そして奇妙な読書だけが残った」で、松村さんの前作『僕の樹には誰もいない』を取り上げ、松村さんの書き方をなぞらえながら書評を執筆。松村作品を愛読する、深い理解者の一人です。
本書の目次
I
コージョライズ/不思議な権利者/生き残るために/一九六七年の夏/失いたくない人 /幻の八年/ロックを続けるために/ラジオは生きている/テレビはテレビ/日本のポップスとロックのスタンダード
II
我らはヘルス・エンジェルス(HEALTH ANGELS)/変化と結果/一九七一年に二十歳だった/ふるさとへ廻る六部は……/再生せよと神が言った/還暦過ぎても若者である/一時間半歌うためだけに生きていたんだ/メイキャップの瞬間/転がる石にサソリ固め/もう帰らない、あの夏の日/三十五年目の十二月八日(上)/三十五年目の十二月八日(下)
III
四十四年目に完成した名作/君はひとりじゃない/もののけ姫/空にキッスを/パリに死す(上)/パリに死す(下)/世界はあなたを待っていた/二十六歳だった/あの時僕は高校生だった/ビタースウィートなポップ・ロックとでもいうのかな
IV
とんでもない五か月だったな/疑惑の一番/そして僕等の人生は/時代は茨城か?/名人は死なず/音楽ディレクターという仕事/雪の上の足跡/まんがになって四十年/夜汽車は走るのです/貴乃花、がんばれ
Ⅴ
終わりは近づいている/それでは、皆さん、さようなら
本書について 松村さんの十一冊目 米田郷之
著者プロフィール
松村雄策(まつむら・ゆうさく)さんは、1951年4月12日生まれ、東京都出身。1966年、ビートルズの来日公演を日本武道館で体験。1972年、雑誌「ロッキン グ・オン」創刊に関わり、編集部を経てその後歌手デビュー、『UNFINISHED REMEMBERS』などの作品を残し、文筆家として長く活躍。加藤典洋さん、坪内祐三さんらに高く評価された。2015年、元ジャックスのメンバー・水橋春夫さんらによる水橋春夫グループに参加、一時的ではあったが音楽活動に復帰した。2022年3月12日、病気のため永眠。
書下し小説『苺畑の午前五時』の他、エッセイ集として『アビイ・ロードからの裏通り』『リザード・キングの墓』『それがどうした風が吹く』『ビートルズは眠 らない』他、監修・共著を除く生前の著作は9冊。2022年10月、最後の12年の結晶となるエッセイ集『僕の樹には誰もいない』が刊行。
ハウリングの音が聴こえる 松村 雄策 (著) 「僕の人生の六分の五には、いつだってポールの音楽があったのだ。」――音楽評論家・松村雄策が贈る11冊目のエッセイ集。 編集:米田郷之(ストランド・ブックス) |
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