ロス・トーマス〈初期未訳長篇〉『狂った宴』が刊行
犯罪小説の巨匠ロス・トーマスの本邦未紹介だった長篇小説『狂った宴』が新潮文庫より刊行されました。本書は、アフリカの小国での選挙戦を舞台にした犯罪エンタテインメント小説です。
今度の舞台はアフリカの小国。選挙戦をめぐって、血で血を洗う悪党たちの化かし合い――。
昨年、1970年発表の『愚者の街』が「ミステリーが読みたい! 2024年版」海外部門で1位に選ばれ、旧作ながら古びない魅力をもつ作家として再注目された、犯罪小説の巨匠ロス・トーマス。
その『愚者の街』をさらに遡った過去作である本作は、政治がらみの騙し合いということで、少々腰の引けてしまうミステリー読者も多いかと思いますが、じつはこの小説、思いもよらぬ選挙戦の狡猾な駆け引きのみならず、殺人事件あり、ダイイング・メッセージあり、残忍な暴力シーンありで、何とも掴みどころなく面白い、唯一無二の犯罪小説に仕上がっています。
しかも、発表されたのは1967年。ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』と同じ年でした。いわば〝ミステリー界のマジック・レアリスム小説〟が同年に誕生していたとも言えます。
【あらすじ
辣腕の選挙コンサルタントとして鳴らしたシャルテルは、大手広告代理店DDT広報部のアップショーとともに、英連邦から独立間近のアフリカの小国アルバーティア初の国家元首選挙に駆り出される。
資源に恵まれながらも腐敗にまみれたこの国で、DDTに有益な人物を当選させるために、二人は汚い手段を駆使してでも選挙キャンペーンを成功させようとする。だが、やがて事態は混乱をきたし、彼らにすら手に負えない様相を呈してくる――。
MWA最優秀新人賞受賞作『冷戦交換ゲーム』に続く第2作にして、アフリカ諸国の政治的カオスを活写し、暴力描写に溢れたクライマックスが印象的な、ロス・トーマスの初期傑作、本邦初訳。
著者プロフィール
■ロス・トーマス
アメリカの作家、脚本家。オクラホマシティ出身。学徒動員から復学し大学卒業後、ジャーナリスト、編集者、政府の新聞担当広報マン等となり、ヨーロッパやアフリカに滞在する。
1966年のデビュー作『冷戦交換ゲーム』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀処女長篇賞を、1984年の『女刑事の死』で同最優秀長篇賞を受賞。サスペンス、スパイ小説の巨匠とされる。『強盗心理学』(1971年)は『セント・アイブス』のタイトルで映画化された。1995年没。
■訳:松本剛史(まつもと・つよし)さん
1959年生まれ、和歌山市出身。東京大学文学部社会学科卒業。ブース『暗闇の蝶』、フリーマントル『クラウド・テロリスト』、クーンツ『ミステリアム』『これほど昏い場所に』、ティンティ『父を撃った12の銃弾』、トーマス『愚者の街』など、訳書多数。
狂った宴 (新潮文庫) ロス・トーマス (著), 松本 剛史 (翻訳) 『愚者の街』の巨匠ロス・トーマス十八番のコンゲーム。 |
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