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「夢中で読み、これは自分の人生に必要な一冊だ、と感じた」一穂ミチさんが激賞! 石田千さん『あめりかむら』が復刊

新直木賞作家・一穂ミチさんが激賞する、石田千さん著『あめりかむら』が新潮文庫より刊行されました。2011年に芥川賞候補となった表題作を含む5編を収録した小説集です。

 

新直木賞作家・一穂ミチさん大推薦でついに文庫化!

誰もが身に覚えのある感情を巧みなストーリーテリングによって描き出した『ツミデミック』(光文社)で直木賞を受賞した一穂ミチさんが「読み返すたびに泣いてしまう」と激賞する『あめりかむら』が、10年以上の時を経て、新潮文庫より発売されました。

 
「あめりかむら」と本書で表記される「アメリカ村」とは、知る人ぞ知る大阪市中央区西心斎橋付近、御津公園を中心としたエリアの通称で、多くの古着屋や衣料店、レコード店などが並ぶ若者の文化が発信される街です。

 
この街が巧みに効いてくる表題作「あめりかむら」では、病を抱えた主人公・道子が、再発の不安を振り切るように関西への旅に出ます。大阪の街で体の異変に襲われ、死が目の前にちらついたとき、彼女はある青年のことを強く思い出すのです。

いやらしいほどに「勝ち組」の人生を歩み、誰からも煙たがられた男。親友などでは断じてなく、わかり合えないとすら思って袂を分かった彼はしかし、自ら命を絶ってしまっていた――。

 
完全ではない体と心を抱えながら生きていく美しさ、曰く言いがたい繊細な感情を柔らかな言葉で掬い上げて小説に昇華させる高い筆力に心が揺さぶられることでしょう。

 

一穂ミチさん「解説―喪いながら生きていく」より

約束された人生なんてなくて、強いて言うなら誰もが
「いつかは死ぬ」
という約束を握りしめて生まれ、最終的にはそこに向かって生きていく。
骨身にひたひたしみてくる死の気配と、自ら命を絶った戸田君への複雑な惜別が絡み合う夜、道子がしぼり出した
『生きていてほしかった』
という願いは、違う旅では辿り着けなかった。
大阪でなくてはならなかった。

 

本書の目次

あめりかむら
クリ
カーネーション
夏の温室
大踏切書店のこと

解説 一穂ミチ

 

著者プロフィール

石田千(いしだ・せん)さんは、1968(昭和43)年生まれ、福島県出身。2001(平成13)年「大踏切書店のこと」で古本小説大賞を受賞。2011年発表の「あめりかむら」が芥川賞候補、同「きなりの雲」が芥川賞候補、野間文芸新人賞候補、2015年発表の「家へ」が芥川賞候補、野間文芸新人賞候補となる。

著書に『月と菓子パン』『あめりかむら』『箸もてば』『窓辺のこと』他多数。

 

あめりかむら (新潮文庫)
石田 千 (著)

一穂ミチ、激賞。
隠れた名作、ここに復刊!

わかり合えないと切り捨てたはずの人の一生が、どうしてこんなにも胸にかなしみを溢れさせるのだろう。

病再発の不安を振り切るように出た旅先の大阪で、体の異変に襲われた道子。その瞬間脳裏に現れたのは、あれほど嫌っていた青年の姿だった。
要領よく、いやらしいほどに「勝ち組」の人生を歩み、周囲の誰からも煙たがられた友。
けれど、自身に迫る死の恐怖のなかで、大阪という旅先で、通りすがりのやさしさに触れて気づかされたのは、慟哭にも似た「生きていてほしかった」という願いだった。

表題作「あめりかむら」ほか下町の古本屋を兼ねた居酒屋での人情ドラマ「大踏切書店のこと」、いじめに遭う幼子と、犬との心の交流を描いた「クリ」など魂を揺さぶる5編の小説集。

 
【関連】
試し読み | 『あめりかむら』石田千 | 新潮社

 


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