本のページ

SINCE 1991

小池真理子さん&川上弘美さんが選んだアンソロジー『精選女性随筆集』(全12冊)文庫化プロジェクトが完結!

文藝春秋が2023年に「文春文庫」の50周年記念事業として開始した、単行本『精選女性随筆集』シリーズ(2012年刊・全12巻)の完全文庫化プロジェクトが、8月刊行の『精選女性随筆集 石井好子 沢村貞子』で完結しました。

 

小池真理子さんと川上弘美さんが選んだアンソロジー『精選女性随筆集』全12冊の文庫刊行がついに完結!

小池真理子さんと川上弘美さんという、日本を代表する二人の女性作家が、近現代女性作家たち18人の随筆を「すべて」読んでセレクトしたエッセイ・アンソロジーの最終作品は『精選女性随筆集 石井好子 沢村貞子』です。

石井好子さん

石井好子さん

沢村貞子さん

沢村貞子さん

 
<『精選女性随筆集 石井好子 沢村貞子』担当編集者 山田陵平さん コメント>

日本のシャンソン界の草分け的存在の石井好子さん、名バイプレイヤーとして日本の映画界を支えた沢村貞子さん。お二人の文章は実直で飾り気がなくとても読みやすいです。それでいて、芸術・芸能という道なき道をわたり歩いてきたからこその華、そしてその陰にある人情がそこかしこで感じられます。お二人が活躍していらしたころ、私は生まれてもいませんが、その時代に思いを馳せ、名文を噛みしめております。

 
『精選女性随筆集』(文春文庫)全リスト

①2023年09月刊行 『精選女性随筆集 幸田文』

②2023年10月刊行 『精選女性随筆集 森茉莉 吉屋信子』

③2023年11月刊行 『精選女性随筆集 向田邦子』

④2023年12月刊行 『精選女性随筆集 有吉佐和子 岡本かの子』

⑤2024年01月刊行 『精選女性随筆集 武田百合子』

⑥2024年02月刊行 『精選女性随筆集 宇野千代 大庭みな子』

⑦2024年03月刊行 『精選女性随筆集 倉橋由美子』

⑧2024年04月刊行 『精選女性随筆集 石井桃子 高峰秀子』

⑨2024年05月刊行 『精選女性随筆集 白洲正子』

⑩2024年06月刊行 『精選女性随筆集 中里恒子 野上彌生子』

⑪2024年07月刊行 『精選女性随筆集 須賀敦子』

⑫2024年08月刊行 『精選女性随筆集 石井好子 沢村貞子』

 

シリーズの装丁を手掛けた大久保明子さん(文藝春秋・デザイン部)コメント

『精選女性随筆集』シリーズ全巻書影

『精選女性随筆集』シリーズ全巻書影

1冊買ってくれた人が、ついシリーズの他の本も買いたくなるようなデザインを目指しました。読んだことのない著者の本も手にとっていただけると嬉しいです。本は冒険であり出会いですから。

このシリーズは全部で12冊あるので、たとえば、武田百合子さんは紫色の花柄、須賀敦子さんは異国情緒のある鮮やかな柄、といったようにその作家からイメージして、全体にバリエーションが出るように、絵や色彩を配置しました。芸艸堂さんの神坂雪佳などの図案集から、明治大正時代の図案を使わせていただいたのですが、レトロな可愛さが表現できたと思います。

シリーズの選者・川上弘美さんと小池真理子さんのシンボルマークが、実はシリーズ通して文庫本の中に忍ばせてあります。猫とチョウチョの絵、探してみてくださいね。

紙の本の良さは、それぞれ一冊一冊本を置くための居場所がある所が素敵だとずっと思っているんです。そして、文庫本は小さくて軽くて、紙も柔らかくてめくりやすい。身体の弱い方、ご高齢の方もふくめて、いろいろな人が手に取りやすいのが嬉しいですよね。

全巻並べると、本当に可愛いです。ぜひマットな紙の手触りも楽しんでみてください。

 

『精選女性随筆集』シリーズ担当編集者代表・加藤はるかさん コメント

明治・大正・昭和時代の女性作家たちの随筆。
恋愛し、結婚し、出産し、離婚し、仕事し、独居し、勉強し、生きぬいて、書き続けた。
どんな時代もラクではないけれど、いつも女性は自由で逞しい。
小池さんと川上さんがこのアンソロジーを編む仕事に伴走し、確信したことです。
中高年の方々に、そしてもちろん若い世代にも、「そうだ、現実は色々と厳しく辛いけれど、わたしたちには『精選女性随筆集』がある」と、ご自分の傍らに置いてほしい12冊です。

 

『精選女性随筆集』全12巻を振り返って

小池真理子さん(右)と川上弘美さん (c)文藝春秋

小池真理子さん(右)と川上弘美さん (c)文藝春秋

■編者・川上弘美さんからのコメント

全12巻、18人の女性の随筆を選ぶときに、その人の書いたものはほぼ全部読む、と小池さんと最初に決めたのですが、あとで泣きました(笑)。未発表のものも含めて、読んだ資料は作家一人につき段ボール数箱分にのぼります。

ともかくこの私たちが選んだ18人、声高な主張はせずとも、自らの思うところにしっかり依って生きている。

やはり小池さんが選んだのは、小池さんの小説の世界だなと思う。私が選んだ方々は、猪突猛進も含め、この人たち、あんがい後先考えていないかもっていう人が多い(笑)。

エッセイは本当のことを書くとされていますが、それはあくまで自分にとっての本当のこと。だからこそ、18人それぞれのエッセイの色が、まったく違うんです。

収録されているエッセイを読むと、どの著者も生身の自分をそのまま書いたりは、絶対にしない。真意の部分をあえて書かないのは、彼女たちに読者への信頼があることのあかしなのかもしれません。

 
■編者・小池真理子さんからのコメント

それぞれ正直に好きな人を選んでいったら、結構うまく川上さんと分担できた感じです。

川上さんは、小説をメインに書いている作家というより、川上弘美さんという作家の持っている本質的なものに呼応する作家を選んでいますね。

読み返してみると、選んだ方々って心身ともに強いですね。老いにしろなんにしろ、不平不満はあまり言っていません。書いてもあんまり面白くない、と彼女たちは全員、思っていたのかも。

私は2020年に夫の藤田宜永を亡くしましたが、この随筆集では愛する者の死について書かれたものがあって、どれも本当に心に響く文章ばかり。それぞれ表現方法は異なりますが、たとえば幸田文の生理感覚の表現の仕方を見ると、今の作家はそこまで書かないかなという気がします。いい意味でリアルです。そして、なにか文学的高貴があるっていうか、品があるのです。

 

精選女性随筆集 石井好子 沢村貞子 (文春文庫)
石井 好子 (著), 沢村 貞子 (著), 川上 弘美 (編集)

パリでシャンソン歌手として花開いた石井好子、共産主義活動に挫折し名バイプレイヤーとしての道を選んだ沢村貞子の波乱万丈な人生。

[目次]

波瀾万丈 川上弘美

石井好子
想い出のサンフランシスコ(抜粋)
舞台裏の女たち
パリで一番のお尻
懐しき人びと
千年生きることができなかったアルベルト・ジャコメッティ(抜粋)
我が家の土鍋
母たることは
グッドラック

沢村貞子
お豆腐の針
浅草娘
パン屋のしろちゃん
長唄のお師匠さん
母の丸髷
ほおずき市
関東大震災のころ
留置場というところ
風流戦法
肉親との距離
あやとりと思い出
神さまの赤い糸
駈け落ちの現実
給料は一つ壺に
役に立った前科
たった一つのウソ
女優の仕事と献立日記

解説(石井好子) 平松洋子
解説(沢村貞子) 川本三郎

略年譜

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です