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【第22回『このミステリーがすごい!』大賞】白川尚史さん「ミイラの仮面と欠けのある心臓」が大賞を受賞 文庫グランプリに遠藤かたるさんと浅瀬明さん

宝島社は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的とする公募新人賞「第22回『このミステリーがすごい!』大賞」の受賞作を発表しました。

 

第22回『このミス』大賞が決定! 大賞受賞者は東大卒の起業家、マネックスグループ取締役

応募総数409作品の中から、1次選考(24作品通過)、2次選考(6作品通過)を経て、第22回『このミステリーがすごい!』大賞は、白川尚史(しらかわ・なおふみ)さんの「ミイラの仮面(マスク)と欠けのある心臓(イヴ)」が受賞しました。

また、文庫グランプリには遠藤かたる(えんどう・かたる)さんの「溺れる星くず」と、浅瀬明(あさせ・あきら)さんの「箱庭の小さき賢人たち」が選ばれました。

 
大賞賞金は1,200万円、文庫グランプリ賞金は200万円(均等に分配)で、同3作品は2024年1月から順次、書籍化される予定です。
※刊行時、タイトルが変わる場合があります

 

大賞受賞作品「ミイラの仮面(マスク)と欠けのある心臓(イヴ)(仮)」<2024年1月刊行予定>

 
【あらすじ】

不可能犯罪か神の御業か!? 仁智を超えた本格ミステリー

紀元前1300年代前半、古代エジプト。死んでミイラにされた神官書記のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができない。欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めるなかで、やがてもうひとつの大きな謎に直面する。棺に納められた先王のミイラが、ピラミッドの玄室から消失し、外の大神殿で発見されたというのだ。この出来事は、唯一神アテン以外の信仰を禁じた先王が葬儀を否定したことを物語るのか?

タイムリミットが刻々と迫るなか、セティはエジプトを救うため、ミイラ消失事件の真相解明に挑む。

【著者コメント】

今回、作品の舞台となる古代エジプトの世界観に触れる過程で、歴史の積み重ねやそれを解き明かす探求の試みの偉大さを思い知りました。

過去の営みそのものはもちろん、史資料、史跡、それを現代まで保ってきた並ならぬ努力、そしてそれらを今なお研究されている方々に敬意を払わずにはいられません。そうした方々のおかげで我々は歴史を知ることができますし、私はこの作品が書けました。すべての方々に、心からの感謝を捧げます。

 
【著者プロフィール】

白川尚史(しらかわ・なおふみ)さんは、1989年生まれ、神奈川県横浜市出身。東京都渋谷区在住。開成中学校・高等学校卒業後、東京大学理科一類に進学し工学部松尾研究室に所属。卒業後、弁理士として働きながら研究室の先輩と株式会社PKSHA Technology を起業し、5年で上場。技術担当の取締役を9年務めたのち任期満了で退任。現在はマネックスグループ取締役兼執行役。趣味はテニス、ボードゲーム。座右の銘は日々精進。

 
【選評】

◎死者が甦る世界でなければ書けない魅惑的な謎に正面から挑んでいる。これだけ野心的な設定を用意して、壮大な物語をきちんと着地させた点は高く評価。このミステリーはたしかにすごい。
(大森望さん/翻訳家・書評家)

◎現世に蘇ったミイラが何の違和感もなく受け入れられるあたり、落語にも似たとぼけた味わいがあり、思わず吹き出しそうになった。奇想天外な謎作りといい友情溢れる人間関係劇といい大賞の価値あり。
(香山二三郎さん/コラムニスト)

◎探偵役がミイラ、タイムリミット有り、不可能犯罪のほか謎が散りばめられ、読ませるポイントが随所に用意されている。古代エジプトに興味をもてない方々もぜひ読んで欲しい。
(瀧井朝世さん/ライター)

 

文庫グランプリ受賞作品「溺れる星くず(仮)」

 
【あらすじ】

〈地下アイドル × シスターフッド × ノワール 〉 のノンストップ・サスペンス

地下アイドルのルイは、大阪で活動する三人組の女性アイドルグループに属していた。尊大な事務所社長、メンバー同士の対立、恋人から暴力を受けるセンター。グループは様々な問題を抱え、危機的状況にあった。ある夜、ルイとメンバーは駆り出された接待の仕事で事務所社長と激しい口論になる。ルイはアイドルを引退しようと考えたが、さらに大きな問題に見舞われる。メンバーの一人が事務所社長を殺してしまったのだ。メンバーの罪を隠すため、ルイは社長の死体を埋めることを決意する。

【著者コメント】

「文字が多い」と漫画の台詞さえ読み飛ばす子どもでした。社会人になるまで谷崎潤一郎の代表作『細雪』を“ほそゆき”だと思っていました。そんな文学的素養に乏しい自分が受賞できたのは、間違いなく『このミス』大賞の講評のおかげです。HPに掲載されている数百に及ぶ過去の講評は、創作において大きな糧となりました。『このミス』大賞は自分の師といっても過言ではありません。本賞の運営ならびに選考に携わったすべての方々に心から感謝いたします。

 
【著者プロフィール】

遠藤かたる(えんどう・かたる)さんは、1988年生まれ、愛媛県松山市出身。大阪府大阪市在住。愛媛県立松山南高校卒業後、甲南大学法学部へ進学。卒業後、化粧品メーカーに勤務し、現在は営業職として販売と販売員の指導と教育に従事。趣味は映画・ドラマ鑑賞、読書。特技は基礎化粧品の成分知識とマッチングアプリでのクズ男判別。

 
【選評】

◎三人組の地下アイドルたちを襲う危機また危機! 加速っぷりが素晴らしく、あっという間に読み終えた。
(大森望さん/翻訳家・書評家)

◎桐野夏生『OUT』の地下アイドル版。キレのある文章、ハイテンポの展開でくいくい読ませるノワールだ。
( 香山二三郎さん/コラムニスト)

◎殺人を犯してしまったアイドルたちがその隠ぺいに走る過程で読ませるエピソードがたくさんあった。
(瀧井朝世さん/ライター)

 

文庫グランプリ受賞作品「箱庭の小さき賢人たち(仮)」

 
【あらすじ】

学園内通貨をめぐるユニークなアイディア満載のマネーゲーム

ビジネスセンスを備えた人材育成を目的とし、木津庭商科大学でのみ流通する独自通貨「事業ポイント」。サークル活動という名の学内事業によって獲得したポイントは、授業の単位の売買にまで使用でき、生徒たちはポイント稼ぎに日々精を出している。家庭の事情で急遽翌年に卒業しなければならなくなった二年生の降町は、確実にポイントを得るため、不正な手法でポイントを稼ぐ者たちを摘発する「監査ゼミ」への所属を決めた。しかし、最初の調査対象である家庭教師サークル「数理塾」への潜入で、監査ゼミの調査員であることを見抜かれ、逆に取り引きを持ち掛けられる。

 
【著者コメント】

『このミス』大賞・文庫グランプリを受賞できたことを大変光栄に思います。いままで積み上げてきたものが、やっとひとつ実を結んだようで胸の底から喜びが湧き上がってきています。この小説には、自分が面白いと信じるものをとにかくたくさん詰め込みました。緊張感や驚き、そして挑戦することの楽しさを感じていただける物語になっているはずです。より多くの方々に読んでいただけたら幸いです。この度は本当にありがとうございます。

 
【著者プロフィール】

浅瀬明(あさせ・あきら)さんは、1987年生まれ、東京都出身・在住。本郷高校卒業後、日本大学理工学部建築学科へ進学。現在は書店員。趣味はゲームと散歩、ひたすら歩きながら考えごとをすること。

 
【選評】

◎他人からの評価を可視化するアイデアには前例があるが、それをコンゲームのネタに使っているところがうまい。エンターテインメントとしてはたいへんよくできている。
(大森望さん/翻訳家・書評家)

◎軽妙ライトノベルタッチで展開するキャンパス・サスペンスで、キャラも立っているし、呈示されるタイムマシン設定などもユニーク。
(香山二三郎さん/コラムニスト)

◎ユニークな設定、文章力、テンポもよくて一気読み。さまざまな人物が有機的に連なっていく過程も面白かった。
(瀧井朝世さん/ライター)

 

『このミステリーがすごい!』大賞について

『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的に、2002年に創設された新人賞です。

 
これまで、第153回直木賞を受賞した東山彰良さんや、累計1080万部突破の「チーム・バチスタの栄光」シリーズの海堂尊さん、音楽ミステリー『さよならドビュッシー』や社会派ミステリー『護られなかった者たちへ』で知られる中山七里さんなどの作家を輩出してきました。

さらに、受賞には及ばなかったものの、将来性を感じる作品を「隠し玉」として書籍化。累計250万部を突破した岡崎琢磨さんの「珈琲店タレーランの事件簿」シリーズをはじめ、映画化もされた志駕晃さんの「スマホを落としただけなのに」シリーズなど、「隠し玉」からもベストセラー作品が多く生まれています。

 
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『このミステリーがすごい!』大賞

 


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