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【第32回小川未明文学賞】東京都・古都こいとさん「如月さんちの今日のツボ」が大賞を受賞

新潟県上越市と小川未明文学賞委員会が主催し、Gakkenが協賛する第32回小川未明文学賞の受賞作が決定し、3月27日に贈呈式が開催されました。

 

第32回小川未明文学賞が決定! 大賞作品の題材は「鍼灸」

今回は全553編(短編作品309編、長編作品244編)が集まり、その中から、古都こいとさん(東京都)の「如月さんちの今日のツボ」(長編作品)が大賞を、やす ふみえさん(千葉県)の「まよいねこトラと五万五十五歩」(短編作品)が優秀賞を受賞。大賞受賞者には、賞金100万円と記念品の『定本小川未明童話全集』(大空社)が、優秀賞受賞者には賞金20万円がそれぞれ贈られました。さらに、両受賞者に記念品『限定本 眠い町』(DVD付、架空社)が贈られました。

▲贈呈式の様子 写真左より上越市・中川幹太市長、やす ふみえさん、古都こいとさん、株式会社 Gakken・五郎丸社長、小川未明文学賞委員会・宮川健郎会長

▲贈呈式の様子 写真左より上越市・中川幹太市長、やす ふみえさん、古都こいとさん、株式会社 Gakken・五郎丸社長、小川未明文学賞委員会・宮川健郎会長

第32回となる今回の贈呈式は、コロナ禍での限定的な開催を経て、およそ6年ぶりとなる2024年3月27日に学研本社ビルの会場に受賞者や出席者らが集い、開催されました。

式は、小川未明文学賞委員会の菊永副会長のあいさつに始まり、上越市の中川市長と小川未明文学賞委員会の宮川会長、株式会社 Gakkenの五郎丸社長からの祝辞、そして最終選考委員の講評を経て、受賞者お二人への賞状・記念品の贈呈が行われました。

 
大賞に選ばれた「如月さんちの今日のツボ」は中学2年生の男の子・如月青葉(きさらぎ・あおば)が主人公の物語。5年前に交通事故で母親を亡くし、鍼灸師の父親と弟二人と共に暮らしている青葉は、実は自分だけが父親と血のつながりがないことを、ぼんやりと認識しています。そんな青葉の視点から、弟たちとの関わりの中で、少しずつ家族のつながりに思い至る様子があたたかく描かれた作品です。

 
最終選考委員を務める小川未明文学賞委員会の宮川会長は、大賞作品について「明るく軽快で、楽しい物語。登場人物の心がツボの名前を通して、身体のこととして語られている点が作品に深みを与えていた」と評しました。

同じく最終選考委員の作家・中島京子さんは「登場人物の家族それぞれにスポットライトが当たるように描かれており、構成がとてもしっかりしていた。主人公のティーンエイジャーらしい、屈折とまっすぐさを持つキャラクター描写も本作の魅力」と評しました。

▲大賞受賞の喜びを語る古都こいとさん

▲大賞受賞の喜びを語る古都こいとさん

大賞受賞者の古都さんは、「受賞の知らせを受けた場所は、勤務先の鍼灸院だった。主人公と同世代の、10代の患者さんや、そのご家族と向き合う中で生まれたのが今回の作品。いただいた賞を励みに、今後も創作活動を続けていきたい」と、作品が生まれたきっかけや今後の抱負を語りました。

 
また、優秀賞に選ばれた「まよいねこトラと五万五十五歩」はトラねこの「トラ」と「尺取虫」が織りなす、生き物の不思議をテーマにしたユニークな物語。

最終選考委員を務める小川未明文学賞委員会の宮川会長は、優秀作品について「前年以上に短編候補作品に力作が多かったが、意外なキャラクターの組み合わせと緻密な構成、そして鮮やかな結末に魅了された」と作品を評しました。

▲最終選考委員の中島京子さん

▲最終選考委員の中島京子さん

同じく最終選考委員の作家・中島京子さんは「一見、主人公になりにくい存在と思われる尺取虫が、見事に読み手の心をとらえていた。大賞作・優秀作ともに明るく、励まされるような作品。また受賞者お二人とも、自身のキャリアや専門領域を作品の題材にしていることが選考後に分かり、とても面白いと感じた。子ども達は、物語の中に描かれる、真実味や本質を感じさせる部分にも魅力を感じるのではないか」と評しました。

優秀賞受賞者の、やすさんは大学で生物学・生命科学を教えている自身の仕事を踏まえ「私ならではの強みを活かした物語をこれからも作っていきたい」と、受賞の喜びや今後の抱負を語りました。

 
大賞作品は2024年11月ごろ、Gakkenより書籍として刊行される予定です。

 

小川未明文学賞について

小川未明文学賞は、上越市出身の小説家・童話作家で、「日本のアンデルセン」とも呼ばれる小川未明の没後30周年を記念し、「小川未明の文学精神を継承し、新しい時代にふさわしい創作児童文学作品を輩出」する目的で、平成3年に創設された公募の文学賞です。

新潟県上越市と小川未明文学賞委員会が主催し、学研プラスが第9回より協賛しています。文化庁、新潟県、早稲田大学文化推進部、上越教育大学、日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会が後援。

 
【関連】
小川未明文学館 – 上越市ホームページ
小川未明文学賞

 


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