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これが、戦争の新しい形だ!サイバーセキュリティの専門家によるリアルタイムの戦況解説『ウクライナのサイバー戦争』が刊行

サイバーセキュリティの専門家として国際シンポジウムなどでも情報発信を続けている松原実穂子さんが「見えない戦争」の実相を読み解く『ウクライナのサイバー戦争』が新潮新書より刊行されました。

 

受刑者IT人材を活用《ロシア》vs.「サイバー義勇兵」が結集《ウクライナ》

ウクライナはもともと、それほど「サイバー強国」だったわけではありません。2014年、ロシアにクリミアを奪取された時点で、国内で人気のSNSはロシアのサーバーにホストされていたくらいです。ロシアは盗聴も情報窃取もフェイクニュースの拡散もやり放題。そうした下地があった所にサイバー攻撃を仕掛けられたウクライナは、戦わずして領土の一部を失うことになりました。

 
ウクライナはそこから覚醒します。政府データのクラウド化、米軍サイバー部隊との協力、重要インフラの抗堪化などの策を次々に実行。今般の戦闘が開始された後も、就任時28歳だった若きデジタル担当大臣の主導でIT軍を結成し、サイバー義勇兵の力も借りてロシアと互角以上の戦いを展開しています。

 
さらに注目すべきは、ウクライナが自国のサイバー戦争の様子を、積極的に国際社会に発信していることです。そこには、自国への支持を集めるという「ナラティブの戦い」の側面もありますが、同時に「ならず者国家のやり口」に関する情報を積極的に共有して国際社会に貢献したいという国家意志もあります。これは、台湾有事を睨んでの対応を迫られている日本にとっても他人事ではありません。

 
著者はサイバーセキュリティの専門家であり、国際シンポジウムでの登壇経験も数多く、本書では本人が生で聞いたウクライナ当局者の発言なども盛り込まれています。オンライン上で展開される「見えない戦争」の攻防と、背後に潜む人間ドラマをご一読ください。

 
【著者コメント】

「ウクライナは、8年かけて重要インフラの防御能力を高めました。情報共有をはじめとする官民連携の進め方、国際支援を取り付けるための努力など、日本が学べることも多いです。本書が少しでも皆様の参考になれば幸いです」

 
<本書の内容>

国内で人気のSNSがロシアのサーバーでホストされているほど「サイバー意識低い系」だったウクライナ。しかし、2014年にクリミアを奪取され、その後もロシアによるインフラへの攻撃で二度も大規模停電を起こされた現実を前に、徐々に覚醒していった。政府データのクラウド化など防御策と、米軍サイバー部隊との連携やIT軍の創設などの攻撃策を組み合わせ、現在はロシアと互角以上に戦っている。サイバーセキュリティ専門家によるリアルタイムの戦況分析。

 

本書「はじめに」より

ウクライナで続く戦争とサイバー攻撃は、二つの理由から日本にも無関係ではない。第一に、ウクライナを支援している日本に対し、二〇二二年九月、親ロシア派のハ ッカー集団「キルネット」による報復のサイバー攻撃があったことだ。ウクライナを支援する日本は、ロシアにとっては「敵」なのだ。

 
第二に、中国がこのウクライナ情勢から教訓を学んでいると米国 政府関係者が幾度も指摘しているように、今後の台湾有事にその 「学び」が適用される恐れがあることだ。

 

本書の構成

はじめに

第一章 「クリミア併合」から得た教訓

第二章 サイバー戦の予兆:二〇二一年秋~二〇二二年二月

第三章 サイバー戦の始まり:軍事侵攻前日~二〇二二年六月

第四章 重要インフラ企業の戦い

第五章 ロシアは失敗したのか

第六章 発信力で勝ち取った国際支援

第七章 ハッカー集団も続々参戦

第八章 細り続けるロシアのサイバー人材

第九章 台湾有事への影響

おわりに 日本は何をすべきか

謝辞

 

著者プロフィール

著者の松原実穂子(まつばら・みほこ)さんは、NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト。

早稲田大学卒業後、防衛省にて9年間勤務。フルブライト奨学金を得て、米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)に留学し、国際経済及び国際関係の修士号取得。修了後、ハワイのシンクタンク、パシフィック・フォーラムCSISにて研究員として勤務。日本に帰国後、株式会社日立システムズでサイバーセキュリティのアナリスト、インテル株式会社でサイバーセキュリティ政策部長、パロアルトネットワークスのアジア太平洋地域拠点における公共担当の最高セキュリティ責任者兼副社長を歴任。現在はNTTのチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジストとしてサイバーセキュリティに関する情報発信と提言に努める。

 

ウクライナのサイバー戦争 (新潮新書)
松原 実穂子 (著)

ウクライナは、国内で人気のSNSがロシアのサーバーにホストされているほど「サイバー意識低い系」だったが、二〇一四年にクリミアを奪取され、その後もロシアによる攻撃が止まない現実を前に徐々に覚醒していった。政府データのクラウド化など防御策と、米軍サイバー部隊との連携やIT軍の創設などの攻撃策を組み合わせ、ロシアと互角以上に戦っている。サイバー専門家によるリアルタイムの戦況分析。

 
【関連】
試し読み | 松原実穂子 『ウクライナのサイバー戦争』 | 新潮社

 


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