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「プーチンの戦争」、野望と誤算の全貌とは? 秦郁彦さん『ウクライナ戦争の軍事分析』が刊行

軍事史研究の第一人者、秦郁彦さん著『ウクライナ戦争の軍事分析』が新潮社より刊行されました。

 

圧倒的な火力で迫るロシア軍と、欧米の軍事支援を受けるウクライナ軍との攻防は一進一退 ロシア軍の野望と誤算を冷徹に分析し、最新の戦局から今後のシナリオを示す

ロシアによるウクライナ侵攻開始から早や1年4カ月。当初わずか数日のうちにウクライナを掌握可能とふんだプーチン大統領の目算は大きく狂い、今や注目は欧米各国の支援を受けるウクライナの「反転攻勢」へと移りつつあります。

 
国内外の報道機関はもちろん、各種メディアやSNSから供給・発信される関連情報は日々刻々あふれるばかりで、まさに情報の時代を感じさせます。

しかし、こうした戦時情報には当然ながら、双方の思惑をはらんで、かのマキャベリが言うように「真実であってもおかしくない嘘」が大量に紛れこむのが特徴です。まして、各種作戦を含めた最高レベルの政策決定については、その内実を知ることはインサイダーでもないかぎり、とてもできるものではありません。

 
著者の秦郁彦さんは、東京大学法学部を卒業後、防衛大学校、プリンストン大学、拓殖大学、千葉大学、日本大学などで歴史学の教鞭をとるとともに、第二次大戦を中心とする日本軍事史を中心に数々の著作を発表してきました。

本書では、開戦から約1年をかけて膨大な情報を収集し選別するとともに、長年の研究経験を生かして緻密な軍事分析を展開。その序文では、次のように述べています。

 
《起承転結が終っても、ウクライナ戦争の全体像が解き明かされるとは限らない。われわれが抱いた疑問の多くは、疑問のままに残る予感さえする。

ウクライナ侵攻がプーチンという怪物の個人的プロジェクトに近いとすれば、彼の正直な『証言』なしには戦争の核心には踏みこめないが、それはほぼ期待できないからである。

それでもヒトラーやスターリンのような先行者がそうだったように、プーチンといえども冷厳な論理が貫徹する軍事作戦の行方を恣意的に操作しきれるものではない。

そこに着目して著者はウクライナ戦争を経過を「何が起きたのか。なぜそうなったのかを過不足なしに叙述する」(ランケ)ことに徹したいと念じている》

 
【本書の概要】

2022年2月、ロシアは空と陸から一斉にウクライナへの侵攻を開始した。双方の軍事力を比べれば短期で決着という予想に反し、ウクライナが猛反攻。泥濘の中、狙い撃ちされる戦車の列、首都にとどまる大統領と前線の高い士気――ミサイルにドローン、圧倒的な火力で迫るロシア軍に対し、欧米の軍事支援を受けるウクライナ軍との攻防は一進一退。長期化の様相を見せるなか、現代史研究の第一人者が鋭く読み解く。

 

本書の構成

第一章 「プーチンの戦争」が始まった
挫折した空挺進攻/「私は首都にふみとどまる」/泥将軍と渋滞の車列/首都正面から退散したロシア軍

第二章 前史――九世紀から二一世紀まで
冷戦終結とソ連解体のサプライズ/クリミア併合の早業/ドンバス戦争の八年/プーチン対バイデン/ロシア軍の組織と敗因/BTGとハイブリッド戦略

第三章 東部・南部ウクライナの争奪
ドンバスへの転進/ドネツ川岸の戦い/南部戦線の攻防/ウ軍反転攻勢の勝利/ロシアの四州併合と追加動員/ヘルソン撤退と「戦略爆撃」

第四章 ウクライナ戦争の諸相
航空戦と空挺/海上戦/「丸見え」の情報戦/兵器と技術(上)――戦車と重砲/兵器と技術(下)――ミサイルと無人機/ウクライナ援助の波/制裁と戦争犯罪と避難民

第五章 最近の戦局と展望
膠着した塹壕戦の春/今後の戦局とシナリオ/平和への道程は

あとがき

 

著者プロフィール

秦郁彦(はた・いくひこ)さんは、1932(昭和7)年生まれ、山口県出身。現代史家。第二次大戦を中心とする日本軍事史が専門。東京大学法学部卒業。防衛大学校、プリンストン大学、拓殖大学、千葉大学、日本大学などで教鞭をとる。

『陰謀史観』『慰安婦と戦場の性』『明と暗のノモンハン戦史』など著書多数。

 

 
【関連】
試し読み | 秦郁彦 『ウクライナ戦争の軍事分析』 | 新潮社

 


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