先進国最低の出生率、先進国最高の自殺率、民主主義の後退、外交的孤立で未来はあるか? 鈴置高史さん『韓国消滅』が刊行
出生率0.72という「異次元の少子化」に直面する隣国のこれからを見通す、鈴置高史さん著『韓国消滅』が新潮社より刊行されました。
出生率0.72――「異次元の少子化」に直面する隣国のこれから
日本も韓国も毎年、出生率が過去最低を更新し続けているのは変わりませんが、韓国の少子化は「レベチ」です。2023年で見ると、日本の出生率1.20に対し、韓国はなんと0.72。先進国は総じて少子化に転じているとは言え、1を切っているのは韓国だけで、これは世界でも断トツの低さです。
加えて言えば、韓国はOECD加盟国の中で自殺率が最も高い国です。2つを考え合わせると、あたかも韓国人が無意識のうちに「この社会は生きるに値しない」との判断を下したようにすら見えてきます。
韓国は生産年齢人口(16~64歳)のピークも2019年に迎えており、働き手の数はこれから急速に減っていきます。1995年に生産年齢人口のピークを迎えた日本は、その後長いデフレに見舞われることになりましたが、同じようなプロセスの鳥羽口に立ったのが現在の韓国と言えます。
著者によると、韓国の問題は「肥大化した自己イメージに酔うばかりで、自分たちの本当の問題に直面する勇気を持たなかった」ことにあると言います。少子化の問題しかり、大統領が変わるたびに逮捕者や死者が出る民主主義の未成熟しかり、米中二股外交で「いいとこ取り」できると考えた外交姿勢しかり。いろんな意味で行き詰まりを迎え、これまで目を閉ざしてきた自分の真の姿と向き合わなければならない韓国は、これから混迷期に入っていくと著者は見ています。
本書では、朝鮮半島情勢「先読みのプロ」として知られる著者が冷徹な現状分析を展開します。
本書の構成
はじめに――120年前に先祖返り
第1章 世界最悪の人口減少
1 日本より急な少子高齢化
「底」が見えない/信用を失った政府推計/NYTが「韓国は消滅」/人口減少でマイナス成長に/日本に24年遅れ/介護は放棄、若者は脱出/急速に膨らむ政府債務/兵力が減少するから核武装
2 IMF危機が諸悪の根源
激しい競争圧力/危機までは呑気な社会/大統領も「過当競争が原因」/ソウルは「億ション」だらけ/本質は生産年齢人口/韓銀が「先送り」に警告/バブル崩壊が呼ぶ通貨危機/個人負債もアキレス腱に
3 なぜ、危機感に乏しかったのか
「少子化を指摘したら殺されますよ」/人口問題は統一で解決?/世界が羨む韓国という虚像/自画像の歴史的な転換/異様な言論空間
第2章 形だけの民主主義を誇る
1 「先進国」の称号欲しさから民主化
コーヒーが無料になった日/原動力 むしろ人々の怒り/「民主派」が指揮権の禁じ手/大正デモクラシーなぞらえ/日本の下心は何か/見栄で誘致したゼレンスキー演説/恩知らずの韓国/価値観を共有せず
2 半導体を作る李朝
対立党派は根こそぎ起訴/サムスンのオーナーも逮捕/尹錫悦政権も左派に報復/「寛容と忍耐」を輸入/田中角栄逮捕がお手本/党争の大衆化/問題化しない乱訴/法治を壊すムジナたち
3 手つかずの「経済民主化」、革命リスクを培養
株の世界でも中国側に/突然「株価を上げよ」と命令/安易な日本のパクリ/アベノミクスで輝く日本/株価を下げたいオーナーばかり/一般投資家はゴミ扱い/上場しようと「ワシの会社」/企業統治でも中国側/大統領も株価対策/株主総会に力を与えよ/企業統治改革は空振り/「わがままな子供」から「わがままな孫」へ/財閥が韓国リスクに
4 台湾の民主化は進んだのに……
法治と相性の悪い儒教/民主化に生存をかけた台湾人/国論分裂から合意を形成/ミャンマー、リビア並みの韓国/問題化しない「法治の崩壊」/韓国人に民主主義はなじまない?
第3章 米中の間で右往左往
1 李承晩時代は『坂の上の雲』になるか
日清・日露は民族生存の戦い/戦後70年談話も司馬史観/同族が殺し合う韓国の国民小説/親米から反米へ/母親は魔物だった/李承晩の再評価/「北朝鮮正統論」に対抗/ウソを信じて生きてきた/「雄々しい建国物語」を持ちたい/虐殺はウソではない
2 従中を生む「底の浅い民主主義」
「中共」から「中国」へ/江沢民の威を借りた金泳三/「離米従中」の元祖/二股外交の朴槿恵/天安門パレードに参加/「香港扱い」の文在寅/「丙子胡乱」再び/米下院議長から逃げた尹錫悦/「底の浅さ」が生む「従中」
3 中国の台頭に思考停止
韓国車を締め出す中国/Quad参加はお断り/米韓同盟はいずれ消滅/地政学が嫌いな韓国人/ミアシャイマー教授に反発/先を考えても意味がない/覚悟を呼びかけない指導層/感情のまま動く
第4章 日本との関係を悪化させたい
1 日本を見下し「独立」を実感
下から目線の甘え/「卑日」の創始者は李明博/二度と立ち上がれない日本/日本叩きはサーカス/日本には何をしてもいい/日本を仮想敵に据えた盧武鉉/バイデンに見抜かれた言い訳/「反日」と呼ぶな/劣等感由来の反日から卒業を/LINEで墓穴/反日に先祖返り?
2 植民地になったことなどなかった
「日本が勝てば加州知事」/約束破りを見越す/「すでに無効」で玉虫色の解決/「徴用工」は「応募工」/第三者弁済という罠/「賠償判決」下した最高裁長官/「エリゼ」「佐渡」と相次ぐ罠/韓国大使を信じた朝日記者/慰安婦が「日本兵の同志」では困る/『でっちあげの徴用工問題』/「韓国人が納得できる謝罪を」
3 「アメリカの平和」に盾突く覚悟はあるのか
「戦後70年談話」に介入/韓国を小馬鹿に/ハワイ併合に文句?/韓国こそ歴史修正主義/「傷心の朴槿恵」を取り込んだ中国/「Ugly Korean」/「告げ口外交」では勝てない/「西洋の没落」に小躍り/帝国の人間には理解できない
あとがき――もし、IMF危機が起きなかったら
著者プロフィール
鈴置高史(すずおき・たかぶみ)さんは、韓国観察者。1954年生まれ、愛知県出身。早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員、香港特派員、経済解説部長を歴任し2018年に退社。2002年、ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。
著書に『米韓同盟消滅』『韓国民主政治の自壊』などがある。
韓国消滅 (新潮新書) 鈴置 高史 (著) |
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