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クリープハイプ・尾崎世界観さんの芥川賞候補作『母影』が文庫化

ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギターで、執筆活動も注目される尾崎世界観さんの芥川賞候補作『母影(おもかげ)』が文庫化され、新潮文庫より刊行されました。

デザインは本作の単行本、そしてクリープハイプのEP「だからそれは真実」のジャケットなども手掛けるアートディレクターの寄藤文平さん。文庫を装う新イラストは、なんと「ガチャガチャの眼球」です。

 

文庫新カバーはアートディレクターの寄藤文平さん

小学生の女の子の視点で、マッサージ店で働く母の秘密を見つめた尾崎世界観さんの小説『母影』。

2020年に第164回芥川賞の候補作にもなった話題作の文庫化にあたり、単行本同様、寄藤文平さん(文平銀座)がカバーデザインを担当しました。

 
もともと単行本装画は、尾崎さんが幼い頃に暮らし、物語舞台のモデルにした葛飾区小菅の街をイメージしたイラスト。その一部を“窓”枠で覆うデザインで、カーテン越しに母を見る少女のように、読者も窓から景色を覗き見る形でした。

 
そして今回の文庫装画は、単行本からがらりと変わり、物語に登場するガチャガチャと100円玉、そして少女がモチーフに。

寄藤さん曰く、
「それぞれを立体的に並べたら、ちょうど眼球のようになりました。“見る”というのは『母影』のキーワード。100円玉の黒目とその影の中点として少女を置くことで、物語に通ずる不穏さも漂わせています」

 
【あらすじ】

小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の“探し物”を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。第164回芥川賞候補作。

 

著者プロフィール

著者の尾崎世界観(おざき・せかいかん)さんは、1984(昭和59)年生まれ、東京都出身。2001(平成13)年結成のロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギター。2012年、アルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」でメジャーデビュー。

2016年、初小説『祐介』を上梓し話題となり、2020(令和2)年には「母影」で芥川賞候補となる。エッセイに『苦汁100%』『苦汁200%』『泣きたくなるほど嬉しい日々に』、直木賞作家の千早茜さんとの共作小説に『犬も食わない』、対談集に『身のある話と、歯に詰まるワタシ』、歌詞集に『私語と』などがある。

2023年現在、読売新聞読書委員、NHK Eテレ「NHK短歌」第3・第4週MC。

 

母影
尾崎 世界観 (著)

 


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